天為インターネット句会 2008年6月


  <有馬主宰選特選句>

  巣立ち鳥はや夢殿に来てをりぬ      今井温子   7点

この鳥はどんな鳥なのだろうか?いつまでも気になる。夢殿と巣立ち鳥の組み合わせが一句を大きくしている。(眞樹)

なぜ夢殿が急に出てくるのか不思議な感じだが、そこがいい。(洋子)

初々しい巣立ち鳥と謎に満ちた夢殿の、取り合わせの妙。(睦子)

 巣立ったばかりの小鳥が夢殿で羽を休めている。まだしばらくは現世で遊んでおいで、という穏やかな視線を感じました。(ゆかり)

  七代の笙を受け継ぐ白襲         清水安奈   3点

 あの雅な音色には並々ならぬ歴史も共に受け継がれているのですね。(けい子)

  蠅楽し吊革の輪を又くぐり        福永法弘   3点

蠅の句はつい採ってしまいます。蠅楽し、と言われるとそれだけで嬉しくなります。(尚毅)

蠅は外に出ようと必死なのでしょうが、「楽し」と見たところに作者の心のゆとりが感じられます。旅先の田園風景が外に広がります。(恭子)

どこからか電車内に蠅が入り込んで、吊革につかまっている作者の周りを気ままに飛び回っている。見ていると吊革の輪を上手にくぐっている。そんな蠅をみて「楽し」いんだなと思える作者は、きっと楽しいお出かけの途中なのでしょう。こんなことも俳句になるのですね。(香誉子)

  三代のシャーロキアンなり書を曝す    小川 洋   1点

  暮れかかる生駒嶺蒼し簾巻く       今井温子   1点

雪の香炉峰でなく、生駒の青嶺も美しいでしょうねえ。(游)

 

  <有馬主宰選入選句>

  田の神といふ石ひとつさみだるる     石川由紀子  6点

 「さみだるる」という下五がきっちり収まっている。姿の整った一句。(傳)

  子に秘密われにも秘密ソーダ水            仙田洋子   3点

ソーダ水からの連想?それとも秘密から? でも、何かピッタリ!(游)

  シャガールのポスター濡らす緑雨かな   市川康子   3点

公園に向かう並木路を雨が濡らす。とある塀に張られたお気に入りの画家の一枚のポスターを見やる二つの傘。やがて傘打つ雨音が高まり、「愛と青」を歌うシャンソンが聞こえてくる。(茂喜)

  巣立鳥ひかりの声に呼ばれたる      対馬康子   3点

〈ひかりの声〉と表現した感覚がいい。(洋子)

  ひかりの声とは私たちの心で聞く声でしょうか。きっと希望を膨らませてくれるのでしょうね。(節予)

  あをあをとして落し文届きけり      米田清文   3点

「落とし文」は自然からの可憐な便り。「あをあをとして」に賛嘆と喜びが感じられる。(睦子)

あをあをとして、に惹かれました。(由美子)

「落し文」の色を出したことで、その存在が鮮明に感じられた。(傳)

  鎌倉の夜雨の源氏蛍かな         天野小石   3点

「鎌倉」が動かない。(義紀)

東都鎌倉に武士の政権を立てやがて滅びた源氏。その名を冠した蛍火が水辺の草むらに飛び交う。短命な蛍の点滅は遠き一族への鎮魂か。夜雨のさざめきは一族の憂いの涙か。(茂喜)

「蛍」に「夜の雨」をもってきたところが絶妙。蛍の儚さが「夜の雨」によって浮き出てきます。「夜の雨」の使い方は「下京や雪積む上の夜の雨」を凌駕。(有史)

  三代の煙草屋廃業軒燕          西沢けい子  1点

  愛煙家には身につまされて、、、、これ以上値上がりしたら、もう止めます!(游)

  沖縄は雨に風添ふ復帰の日        岸本尚毅   1点

「沖縄返還」というテーマを正面から詠んだ姿勢を評価したい。中七「雨に風添ふ」は直接的には当日の天候を示すが、沖縄の歴史に思いを寄せた措辞でもあろう。(傳)

  五月雨や子供拾ひにバスが来る       橋本有史

  白牡丹散り天鵞絨のやうな闇       立久井昌子

  歯の抜けて笑ひあふ子ら梅雨に入る    宮下惠美子

  夏蝶の老いゆく沢の冥さかな       天野小石

  適塾の簾や浪花古地図みる        今井温子

  魚焼くイスラムの路地薄暑かな      根岸三恵子

  けんかの子なだめていたる芥子の花    土屋香誉子

  粽解く昔話の愚人譚           手銭 誠

  ユーカリの巨木に小花降る夕焼      西村我尼吾

 

  <互選句>

掻き牛の鼻を大きく進みけり        橋本有史   8点

今ではもう見られなくなった風景だが、「鼻を大きく」にリアリティがある。(義紀)

今は見られなくなってしまったが、代掻きには牛が使われたものである。黙々と働いていたが牛にとっても重労働である。上を向いて口をあけて進むような場面も多くなる。そんな所を鼻を大きく進むととらえた。(尚)

頼りにしてることわかってるのです。それを見る飼い主もうれし。共に頑張ろう!(久丹子)

力を込めて掻き進む牛の鼻を捉えたところに説得力がある。(康子)

ガルーダとなるを夢見し羽抜鶏      上川美絵   6点

志を買いました  。(隆宏)

ガルーダとはヒンドウ教の神の名で伝説上の巨鳥である。はかない夢と思いながらも羽抜鶏はガルーダになる夢を見たのでしょう、悲しくも滑稽な句です。ガルーダは今インドネシア航空のマークとなって世界中を飛んでます。(昭信)

ヒンドゥー教の神、巨鳥になる夢を見ている羽抜鳥とは滑稽で面白い。人間の社会を風刺したのですか。(芳彦)

大いなる夢を持ってる羽抜鶏、ガルーダになれる日が来ると愉快です。(温子)

あり得ない夢ではあるが、どうせ夢ならこのくらい大袈裟でユニークなのがいい!(飛)

間抜けな羽抜鶏がインドネシア航空の飛行機になって世界中、飛んだ夢を見たのでしょうか?自嘲の意味を含んだ作者自身の面目が現れて面白く、ユニークな着想による佳句だと思います。(久子)

  文字化けは馬偏ばかり走り梅雨      内村恭子   5点

  いかにもありそうなこと。鬱陶しい梅雨の気配が感じられる中での現代的日常。(宗一郎)

  文字化けした文字が、馬偏ばかりだった。入梅前のぐずついた天気に鬱陶しさが募りす。(義知)

  確かに!と納得できる細かい発見。(飛)

  雲龍の八十畳の昼寝かな         手銭 誠   5点

  のどかな午後、天井画を独り占めしながらの昼寝でしょうか。ギョロリと眼を剥く龍もついうとうと。うらやましい大きな景です。(恭子)

お寺でしょうか。だだっ広い座敷で大の字になって寝てみれば雲竜と空を飛ぶ夢が見られるかも。(康子)

 天井画でしょうか 威厳も形無しとはいえ伸び伸びと気持ち良さそう 大の字いえSの字のSleeping。(久丹子)

跳ねたがる浅草線の祭足袋        松村三冬   4点

これは、愉快ですね。浅草線としたところが佳い。(宗一郎)

 諧謔的で季節の移ろいが感じられます。俳句はまさに生活諷詠詩。淡々とした表現に好感を持った作品です。(久子)

水煙の飛天の天衣(てんね)風薫る         齊藤昭信   4点

薬師寺の東塔の修復工事が予定されております今日 飛天の柔らかい衣が 五月の空に舞いたつさまをかいま見た思いです。(温子)

 天空高く聳え立つ塔の天に舞う天女は衣を柔らかい風に靡かせている清清しい風景。(千映子)

ビニールの光の中の金魚かな        橋本有史   4点

「光の中」という表現で、ビニールというチープな素材の中に幸せな空間を見出したところがおもしろい。捕らえられた金魚の束の間の安らぎが感じられるだけに、切ない。(誠)

夜店の金魚掬いで掬った金魚をビニールの袋に入れてもらった。夜店の灯りを透かして金魚が泳いでいるのが見える。金魚をもらってうれしい気分、でもこの金魚がちゃんと育つんだろうかという不安、捕まってしまった金魚がちょっとかわいそうという思い、それらが入り混じって伝わってくる。(香誉子)

縁日で買った金魚をきらきらと思い出す。(康子)

  花蜜柑ほのかに通夜の道標        芥ゆかり   3点

誘うように花蜜柑が香った。静かな悲しみがある。(月英)

 胸にじいんときました。(由美子)

プーアール茶ゆつくり開き水中花     三宮隆宏   3点

プーアール茶をゆったりと飲みながら、水中花の変化を見ているとは人生の余裕を感じます。(芳彦)

水中花にも開くことを待つわずかな時間のたのしみがある。(清文)

小生日中経済協会時代は大量のプーアール茶を飲んでいた。減量に役立つという迷信がある。呑んだ後にそこはかとない甘さが残るのは、5年ものぐらい。中国人の好むのは、少しきつい樟脳のような匂いののこる二十年から三十年もの。一粒ずつに包んであるのは、日常のむ廉価品。ピンからきりまである。美味しいのは、一粒5元は出さないといけない。古い丸い形をしたのは、削りながら呑むが、古いので洗うのがめんどくさい。泉州で入手した三十年ものを飲みつくして美味しいのが手に入らなくなったのでプッツリ呑むのをやめた。掲句は廉価版のプーアール茶が開くさま。おもわず微笑んでしまった。(我尼吾)

  ぐつたりのぐの字に眠る端午の日     木場瑞子   3点

  子供サービスに暮れた端午の日、疲れ果てた寝姿を「ぐ」の字に見立てた面白さ。グーグー眠る鼾まで聞こえてきそうな・・・。(睦子)

  父と子が一日を遊び疲れて同じような形で爆睡している光景が目に浮かびました。(ゆかり)

柿若葉吹奏楽部対ジャズ研        青柳 飛   3点

大学でしょう。年度が替わって新入部員を迎え、お互いに張り切っている様子が目に見える。柿若葉の斡旋も適切。(法弘)

若く健康な賑々しさ。(繪里子)

香水の弾けて自動ドア開く        上川美絵   3点

何ともいえず爽やか。(由美子)

虚無僧の見てゐる三社祭かな       松村三冬   3点

「耶蘇といへば辞儀して去りぬ寒念仏 普羅」と同じくすぐりを感じます。(尚毅)

 人で賑う三社祭を虚無僧が一人見ている。雑踏からは少し距離をおいているに違いない。僧になる前の自分を思い出しているのではなかろうか。(尚)

地動説とく夕暮の夏野かな        市川康子   3点

今まさに暮れようとしている大自然の中で、父親がその息子に宇宙の仕組みを話しているのでしょう。コペル二クス、ガリレオと歴史を思い出させると共に、天文少年だった頃を思い出させてくれた、壮大な句です。(昭信)

地動説と夕暮の夏野の取り合わせに大きな景が浮かびます。(けい子)

夏の夕方、子どもと空の広い野原で沈んでいく太陽をみながら、宇宙の不思議を話してきかせている親の姿がわかる句です。(うら子)

今蟻の後ろ歩いてゐるらしい       上川紗央里  3点

視点を変えれば世の中がまるで違って見える。これは俳句の要諦。(法弘)

子供が「今蟻の後ろを歩いているところなんだ」といったという実体験に基づいた句なのかもしれないが、この句のかもし出す不思議な雰囲気に惹かれた。(飛)

船も田もやませの白き闇のなか      深谷義紀   3点

先日、下北半島(六ヶ所東通)に行きました。風が吹いているのに太平洋岸に雨まじりの白い霧が立ちこめていました。(尚毅)

「白き闇」という表現が良いと思います。広々とした景が眼前に浮かびます。(明)

閻王の視線を避けて蜘蛛の網       吉田久子   2点

蜘蛛も閻魔大王の視線は気になるのでしょうね、と言っても生きるために殺生をしなければなりません、なにか人間社会にも通じるものが有るような気がします。視線を避けて、がこの句を佳句にしたと思います。(昭信)

確かに蜘蛛の網は部屋の隅、閻王の眼の届かぬところ。その光景をユーモアをもって掬い取りました。(宗一郎)

  走り茶やはかなく舌にとける菓子     木場瑞子   2点

  繊細で美しいお菓子を口に入れた途端溶けてなくなった。新茶に相応しく美味しそう。(月英)

  火の入れ方にもよるが、新茶は生の葉の香がする。香が良いことから珍重されるが、あまり陽にあたらないうちに刈ってしまうので案外味が薄い。「はかなく舌にとける」という中七が新茶の柔らかな味を思い起こさせる。(香誉子)

野茨や砂のこぼるる磨崖仏        大山由美子  2点

ゆるやかな崩壊。(繪里子)

  大地とはメタセコイアの木下闇      瀬戸口靖代  2点

木下闇がいいです。太古の大地の鼓動、生命感を感じます。(ゆかり)

山遥か湖水は初夏の色となり       神山敦子   2点

麦秋や濡れて消えゆく料理メモ      河村うら子  2点

買物に行く途中メモした紙が雨に濡れ、字が滲んでしまったか。それともメモを見ながら料理をしていて濡れた手が触れてしまったか。いずれにしても新家庭ながら充実した生活が季語からみて取れます。(節予)

 愛媛で単身赴任している頃レシピを料理中濡らして、同じような経験をした。嗚呼懐かしい。(我尼吾)

  濃芍薬幾島殿の大音声          三雲繪里子  2点

篤姫を叱咤する幾島の大音声。毅然とした幾島の姿が芍薬に重なります。(三冬)

象潟の島を残せる植田かな        五十嵐義知  2点

水を湛えた植田の頃が象潟の隆起する以前の景色を彷彿とさせるように思えました。(節予)

まだ吊らぬ風鈴に火のうつりたる     明隅礼子   2点

  羽抜鶏園児に草を与えられ        岸田 晶   2点

園児は与えることに気をとられています。羽抜鶏の姿が眼に入っていないのではないかと気になりました。それがかえって面白く感じられました。(清文)

羽が抜けてる? そんなの関係ないもんねと双方より。(久丹子)

駅前の鰻屋の桶居るわ居るわ       竹内宗一郎  2点

狭い桶の中でうごめいている鰻、駅前という場面、「居るわ」の繰り返しにより、街の雑多な気分を表現した。(誠)

   藻ばかりの水槽泌尿器科薄暑       福永法弘   2点

  水槽の魚が死んだのに放置していたため、藻だけ茂っている水槽。時々魚を探して空しい思いをします。薄暑の季節には藻もよく茂ります。泌尿器科がまた面白い。(有史)

  藻の靡く様に心遊ばせ只管に待つのみの空しさ。(千映子)

   いつも身を見透かされゐて金魚の子    吉田久子   2点

美食家の紙魚ならむ源氏絵巻食む     室  明   2点

ルノワールの女座れよ藤の花             仙田洋子   2点

和と洋の組み合わせの一句であろう。六尺藤の藤波に座るルノワールを想像するだけで幸せになれそうです。絵になります。(眞樹)

   麦の秋白夜の国の国境          満井久子   2点

 北極点に近い北欧の国か。沈まぬ太陽の薄明に広大な麦畑の穂並みがゆれる。その国に季語はなかろうが、「麦の秋」をキーにして、まだ見ぬ異国への旅情がかきたてられる。(茂喜)

  ふらここ漕ぐ明日の空の見えるまで    西沢けい子  2点

「鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし 三橋鷹女」の句をあげるまでもなく、何となく「ふらここ」の俳句は、一種の暗さを伴う場合が多い。そのふらここは、夜のふらここなのだ。でも、本来ふらここは、春の躍動感溢れた季語のはずだ。だから当たり前といえば、当たり前のはずなのだが、むしろその明るさが、新鮮な感じがする(寛)

アイリスの紫紺に夜の透けてをり     青柳 飛   2点

暗紫色のアイリスによって夜の闇も薄らいで透けてみえる。幻想的。(月英)

一本の滝を据ゑたる山河かな       山田節予   2点

風景画を見ているような句である。大きな景色の中に、落差大きい滝が見えるようである。(寛)

五月田へ入日の残す水明り        三雲繪里子  2点

なかなか暮れない夏の夕方。夕暮れの懐かしい匂いがしてきそうです。(康子)

そら豆のすがたかたちに微笑あり     五十嵐義知  2点

 なるほどそら豆ってかわいいですね。そら豆が笑っているようなくすぐったさがあります。(康子)

梅雨前線容疑者のよく喋る        芥ゆかり   2点

テレビで時々見かける光景。梅雨前線が微妙。(晶)

  大夏野白き風力発電所          根岸三恵子  以下1点

広い夏の野原に、風力発電の白い風車が立つ。夏という感じです。(義知)

   組紐は白一色に五月光          清水安奈   

  作者の清純さが滲み出でいます。明瞭で率直な句です。(芳彦)

   曝書せし古きサインの俵万智       満井久子   

俵万智さんのサインにも歳月を感じてしまうのでしょうか?(温子)

鮎鮓や大歩危小歩危は後回し        朱 月英   

気持ちわかるよ!(隆宏)

延縄の基地は蔵町朝曇          松崎邦子   

蔵は延縄漁で財をなしたせいでしょうか、あるいは多くの魚網の倉庫でしょうかいずれにしても暑くなりそうな日の漁港の町の感じ。(清文)

  あめんぼうさかさになれば空青し     池永 寛   

  視点をちょっと変えるとすばらしい詩が生まれるのですね。感心しました。(紀代)

  遠き橋いつしか虹となりにけり      明隅礼子   

   古火鉢覗けばめだかの学校が       石田 游   

  捨てられている古火鉢に目が行き届くなんて凄い。(紀代)

  だるまさんがころんだTシャツは揺れて  小川 洋   

ちょっと大きめの白いTシャツと汗、笑い声とこっそり走るあの感じ、目に浮かびました。(紗央里)

   鼠捕らぬ猫の寝そべる青葉闇       金村眞吾   

  言われてみると昔は良く鼠をとっていた。人間のことをも言ってるみたいでおもしろい。(紀代)

  形代やそつと横たふオフェーリア     福永法弘   

  竹皮を脱いで力の漲れり         土屋香誉子  

花樗海は曇つてゐたりけり        合原実世   

樗は栴檀の別名。傘状に枝を広げ樹形は美しい。五、六月に花が咲くが遠くから見ると樹全体が白い雲になったようである。南国の海辺に多い。(尚)

鴨の子の追憶の橋くぐり浮く       西村我尼吾  

  ルドゥーテの薔薇の香りにをり立てる   窪田治美   

ルドウーテはボタニカルアートの薔薇の画家として有名ですがナポレオンの皇后ジョセフイーヌの薔薇園の薔薇をを描き「薔薇図譜」」を作成したそうです。下五の「をり立てる」は海外の何処かの駅前広場でしょうか?仄かに薔薇の香りが私にまで匂ってきそう!(久子)

  夕薄暑読みかけの本散らばりて      岸田 晶
   

  瑠璃の綾涼しき献上博多かな       天野小石   

きっぱりとした博多帯の涼しげな感じが伝わります。()

無言劇果てて熱帯夜の街に        深谷義紀   

どこかアジアの街なのだろうか。無言劇が終わり気がついたら熱い熱い夜の街だった。そのまとわりつくような暑さと、物語を感じる句である。(寛)

美しき影区画なす夕立あと        西村我尼吾  

走り梅雨歯型をのこすつげの櫛      河村うら子  

時代劇それも鶴谷南北の世界を想像させる句。(瑞子)

足のある幽霊ラムネ飲み頃に       立久井昌子  

蝸牛角だすまでは死んでゐる       津久井紀代  

切りたての光川面に立夏かな       内村恭子   

川面の光を「切りたて」とみたところに、立夏のすがすがしさが出ていると思います。()

水鳥の足跡を追ふ初夏の岸        土屋 尚   

桐の花咲きてまっすぐ歌うたう      神山敦子   

 まっすぐ歌うのって難しいんです。まっすぐ咲くのも難しいんです、きっと。でも何か力をくれる俳句だなぁと思いました。(紗央里)

  児に開く白き胸乳や新樹の香        石川由紀子  

母と乳子はいつの世でも聖母子であるが、この句の母子は光り輝く西洋の聖母子では無い。新樹の柔らかさが東洋の聖母子と思わせる。(瑞子)

はんざきの卵ふわりと鬼無里谷      蛭川晶代   

不気味な巨体を想像する。ふわりが正にその通りという感じ。(晶)

  曼荼羅の砂絵となりし春の塵       池永 寛   

   
(フラット)(シャープ)に河鹿競ひ鳴き        西沢けい子  

青嵐こころの声の海泳ぐ         和佐尚子   

 一瞬自分の句かと思った。(我尼吾)

  蜘蛛の囲を壊す美しき理も        市川康子   

  「蜘蛛の囲を壊す」という何気ない動作が、実は「美しき理」をも破壊していると作者は考えた。人間が本質的に持っている自然そのものに対する畏怖を表現した句である(誠)

  白薔薇や信じられない年となり      大山由美子  

   海猫鳴けば褪せゆくBARの灯なりけり  小高久丹子  

留萌あたりの露人バー。(眞吾)

師の筆致涼しや青き大理石        松崎邦子   

さぞや美しい事だろう。行ってみたい。(晶)

息の玉青く水中眼鏡より         金村眞吾   

水中という異次元の感覚が詩的に描かれている。(康子)

和三盆ほろりと白き辰雄の忌       清水安奈   

口中で甘くはかなく溶けてしまう和三盆と堀辰雄の文章の透明感の取り合わせの妙を感じました。(恭子)

アマリリス透明な風吹き抜けて      岸田 晶   

風五月ブルータイルの続く街       満井久子   

さわやかな五月の景が浮かび歩いてみたくなりました。(けい子)

白シャツの少女の背負ふ防具かな     竹内宗一郎  

剣道の練習に行く女子高生の姿がよく見えます。白シャツの夏らしさがよく出たすがすがしい一句。練習帰りではありません(帰りは汗臭い)。(有史)

代返のコツ聞いてゐる若葉かな      小川 洋   

桜の咲くころ入学して緊張して毎日授業に通っていたが、花も葉になるころになるとさぼることを覚えて、よく頼んだり頼まれたり、みんなやりましたよね。(うら子)

風死すや揺らぎそめたる幽霊画      榊 睦子   

幽霊画に怨霊が存在した時代を想像しているのでしょう。怨霊を神に祭り慰撫した中世では無い。幽霊を娯楽に持ち込んだ江戸時代の画を、作者も楽しんでいる気がする。(瑞子)

簪の隠れ十字や琵琶熟るる        河村うら子  

三界に家なし甘藍真つ二つ        立久井昌子  

「等分のキャベツに今日と明日が出来  いのうえかつこ」が明るい家庭の一シーンを詠み上げたのに対し、掲句は家庭内の修羅を採り上げた。印象に残る一句。(義紀)

豆腐屋のラッパ遠のく昼寝覚       土屋 尚   

ぼんやりと豆腐屋のラツパを耳にしながら心地よい眠り。(千映子)

遅刻魔で愛嬌者のサングラス       朱 月英   

サングラスでかっこつけても実は遅刻魔で愛嬌者、隠しても隠しきれないものがあるから人間はおもしろいのかなぁと思いました。(紗央里)

胎の子に薄き爪生ゆ杏の実        対馬康子   

どうして胎児に爪が生えていることがわかったのだろう。超音波診断でも見えないだろうに。まさに母性の不思議ということか。(法弘)

爆撃で出来たる池やあめんぼう      岸本尚毅   

池にあめんぼうがいるのは当たり前の景であるが、この句は爆撃で出来た池にいるあめんぼうが泳いでいる。あめんぼうがあたかも平和の使者であるかのようである。濁音が一句のリズムを整えている。(眞樹)

夏蜜柑ひつそりと道続きけり       日原 傳   

うすき字の手紙読みけり夏の月      明隅礼子   

なぜかわからないが、〈うすき字〉と〈夏の月〉がよく合っている。(洋子)

 

                         (6/20 天為ネット句会管理担当 天野小石)