天為インターネット句会 2008年8月


  <有馬主宰選特選句>                  (互選)

  薄明の精舎に百の新豆腐          清水安奈   10点

山深き寺の暁闇。若い僧たちが次々に新豆腐を作っている姿が浮かびます。澄んだ水、厳かな山の霊気も感じることができます。(明)

新豆腐が如何にもすがすがしい感じです。(千映子)

清涼感あふれる一句。(義紀)

真っ白に輝く百の新豆腐が、精進する僧のきびきびとした動きを思い起こさせる。(伊予人)

  犯人まであと七ページ明易し        市川康子   8点

途中でやめたくてもやめられない本のおもしろさが伝わってくる。(紀代)

具体的な七ページがいい。犯人が気になって飛ばし読みをしてみたのかも。(三冬)

 ベットに入って眠りにつくまで、本を読む。特にスリラーものなどは、結末まで読まないと落着かない。作者の着想のユニークさによる一句。巧みであり微笑ましくもある。(久子)

 推理小説にはまって空が白むまで読んでしまった。種明かしまで七ページ。「七」には、数えられないものを示したり、「七生」「七不思議」など、人生の謎を象徴する働きがある。「七」が効いている。(睦子)

  古書店に棚の空きたる涼しさよ       小高久丹子  2点

古書を並べた棚は暑い感じ。その棚ががらんとしたのは、涼しいですね。(編人)

  腰蓑をつけ式部職鵜匠成る         朱 月英   1点

御猟場を守りとれた鮎を献上する。それは式部職である鵜匠の年々の行事である。(千映子)


 

  <有馬主宰選入選句>

  恐竜の卵と記し夜店かな          室  明   8点

うそっ〜と言いつつまじまじと見たりして 夜店ならでは。(久丹子)

恐竜の卵を見てみたい。一つ買ってみたい。でも、孵ったらどうしよう!! (三恵子)

縁日のインチキ臭さは子供にはたまらない不思議空間でした。そんな空気がよく出ていると思います。(ゆかり)

 「恐竜の卵」なんて、もちろんウソ。でも夜店ならOK!「夜店」の楽しさ、あやうさが感じられます。(香誉子)

りんご飴をなめながら恐竜の卵をひやかす 夜店の楽しさ。(温子)

初商で「恐竜の糞の瑪瑙」を売っていた。この卵も瑪瑙に成っているのだろうか?(瑞子)

  籐寝椅子この世に父の忘れ物        瀬戸口靖代  6点

忘れ物という措辞いいですねえ!ましてや籐寝椅子だなんて。(游)

北上の日本現代詩歌文学館の三艸書屋にはあざらしの毛皮の敷いてある籐椅子が一つあります。この句から、その籐椅子は青邨先生のこの世への忘れ物なのだと改めて思いました。(はま子)

亡くなった父上が好んで身を横たえておられた籐寝椅子なのであろう。それが作者の眼前にある。「忘れ物」という措辞が父と籐寝椅子との結びつきの深さをさりげなく読み手に伝えている。(傳)

  合歓咲いてルルドへかよふ女坂       西野編人   4点

ルルドはフランスのピレネー山脈北麓、標高約4百メートルの地にある町。19世紀半ば、この地の羊飼いの少女ベルナデットが聖母マリアを目撃し、奇跡が起ったという泉があり、巡礼地となっているが、合歓が咲いて、ここに行こういうのである。ロマンチックで明るさを感じさせる御句です。(芳彦)

 ゆるやかな坂道を行く巡礼の列、合歓の花がいいですね。(温子)

   「ルルドへかよふ女坂」に生活観と明るさを感じる。やさしさと夢があって好きだ。(伊予人)

  おほかたは村に老いけるさるをがせ     橋本和男   3点

樹に垂れ下がっている不思議な松蘿を、はじめてみた時は驚いた。過疎の村に老いていく人々。季語が効いている。(月英)

子供等は遠くで暮し、村で終ろうとする気負いの老人が里のあらかたとなる。 木に貼り付いて絡まりあい風になびくさるをがせの、心もとなくてなほ健気な風情に通じると思いました。(みちほ)

  方舟に乗らんと蟾蜍の一歩         福永南草(法弘改め) 3点

蟾蜍の一歩はのっそりしていて、もったいぶった感じです。 「いざ箱舟へ」というところがそのような感じにマッチしています(有史)

どお〜んとしたあの体型の一歩 確固たる意志。(久丹子)

  本箱のやうに夜店を組みにけり       米田清文   3点

たしかに本箱のように組み立てています。簡素な表現だが心引かれます。(和男)

  白川の水音聞こゆる籠枕           和佐育子   2点

いかにも涼しげな。(芳生)

  箱庭に置く陶俑のどれも青         福永南草(法弘改め) 2点

陶俑の青が涼しげでかなしげ。(清文)

  踏切のもう鳴らぬ夜や蚊遣香        明隅礼子   2点

まるで我が家の寝室を覗き見たかのような句だ。踏切の音は夜中1時を過ぎたらやむ。いつもだったらその時刻には、蚊も寝静まっているはずなのに、今夜は蒸して寝苦しい上に、まだ蚊が飛んでいるから、蚊遣を消すこともできない。(法弘改め南草)

  サングラス思ひのほかの明るさよ      土屋香誉子  1点

中七の思ひのほかに納得。(育子)

  軽羅着て凸凹のなき履歴かな        大庭恭子   1点

俳味ある一句。「軽羅着て」が利いている。(義紀)

  蔵町のいよいよ青き宵祭          五十嵐義知  1点

  かくれんぼ置いてきぼりの蝸牛       今井温子   1点

  この句を見た時、遠い昔の忘れ物を見つけたような不思議な気分になった。(蟷螂子)

  叱られし子が買ひに来る金魚かな      明隅礼子   1点

先ほどまで叱られていた子が、前々から欲しかった金魚を買いにくる。叱られたことで、ある種の勇気が湧いてきたのである。なけなしの小遣いを片手にいつも見つめていた金魚を買いに来たのである。意気揚々と金魚片手に帰ったその子は、「なんでまた金魚なんか買ってきたの!」とまた叱られてしまうのである。ノスタルジー溢れる句。(寛)

  口曲げて住吉祭の笛を吹く         竹内宗一郎

  緑さすコローの森の囁きや         岸田 晶


 

  <互選句>

名探偵出てくる辺り紙魚の穴        青柳 飛   9点

紙魚の穴も名探偵の出てくる辺りだと光栄であろう。(紀代)

物語はこれからが佳境、唖然としている作者の表情が目に浮かぶ。(蟷螂子)

作為的なところに共感を感じますよ。(和男)

先づ素材に惹かれて頂いた。余程古い本なのでしょうか?何れにしても、見落とし勝ちなありふれた素材を身辺の中に捉え、さらりと詠まれた中々新鮮で楽しい作品です!(久子)

これはもうシャーロックホームズでしょう。穴から彼が虫眼鏡で反対側から覗き返しているみたい。(うら子)

虹のあと五感やさしく人と逢ふ       笹下蟷螂子  6点

虹をみてやさしく人に逢えたという感性が素敵です。(雪子)

虹って不思議な力がありますね 意味もなくハッピーな気分になる。逢うの字で異性とばれちゃう。(うら子)

虹を見ると柔らかな気持ちになりますね。気持ちが和むと五感もやさしくなります。柔らかなオーラがでていそう。(康子)

女の名つけて傾くヨットかな        河村うら子  5点

当節の男性の句か。共鳴する人多いのでは。(育子)

恋人とか娘の名前をつけているのでしょうか。海の男はロマンチストですね。(ゆかり)

女名のヨットは傾いても絶対沈まないのでは・・・このユーモア。(由美子)

草取りも祈りのすがた広島忌        清水安奈   5点

生活の一挙手一投足が祈り、とした点がよい。(芳生)

黙々と炎天下に草取りをしている人の姿を祈りの姿ととらえたところが良いと思います。(明)

8月6日の朝、かつて祖父が耕したこの田の草取りをしている。8時15分に黙祷する、安かれと。しんだにんげんはかえってこない。また草を取る。――私も西の空に黙祷する。(茂喜)

つい先日、広島の平和記念資料館、原爆ドーム等を見学してきたところです。広島・長崎への原爆投下については勿論、これまでもさまざまな媒体を通して見聞きしてきたつもりですが、資料館での展示を見、また広島の町並みをこの目で見ると、この街がよくここまでに復興というよりは甦ったものだなあ!と、その地の人々の頑張りと力強さを感じないわけにはいきませんでした。と同時に、なんの罪もないのにその犠牲となった多くの方たちの無念さも・・・。そして、どんな状況だったにせよ、為政者の責任は重いと改めて痛感しました。もう二度とあのようなことは起こりませんようにと、広島の地に草が生い茂るようになった平和がこの先も続くことを祈らずにはいられません。(恭子)

重いものを感じました。(洋)

  山国の闇がそよぎて桃熟れる        金村眞吾   4点

 山国は甲斐の国のことでしょう。 ここは寒暖の差が激しいので多くの甘い果物が取れるのです、桃はその代表的な果物の一つです。闇がそよぎて、が上手です。桃が熟する様子が良く出ております。(昭信)

山国の桃が熟れていく佇まいを活写。静かな抒情が佳い。(義紀)

炎帝の柱のごとき象の足          津久井紀代  4点

蟻になって、蟻の目線で見たのである。視点を変えれば風景は変わる。(法弘改め南草)

頼もしいそしてやさしい柱。(晶)

韓の甕異国の月を映したる         内村恭子   3点

異国の月は韓の月、道理だが、そこに詩を感じさせる。確かな構成力。(宗一郎)

この道は山猫軒へ蝉時雨          深谷義紀   3点

「山猫軒へ」といったところが、奥へ続く、先のわからない道のイメージをよく出しています。そういえば、西表島のタクシーは「山猫タクシー」と表示されていますが、乗る気にはなれません(有史)

洒落てますねえ。蝉も注文が多いのでしょうか?(游)

  日焼子の舟に飛び乗る速さかな       明隅礼子   3点

   朝から晩まで泳いだり舟で遊んだりしている子は、舟に乗るのもお手のもの。「飛び乗る速さ」に、学校より自然の方が好きな子が見える。(香誉子)

元気な海の子の夏休み 子供はこうでなくては!(温子)

しらびその森の奥より秋の声        天野小石   3点

すべての言葉が秋の声にかかって美しい。秋は其処まで来ているのですね。(由美子)

いちばんに稚児の形代瀬をつかむ      木場瑞子   3点

形代を水に流すという行為は、何とも不安な感じがする。子どもであるとなおさらだと思う。稚児が流した形代が岸にそっとひっかかった。その様子を「瀬をつかむ」と表現することで、より不安な感じを醸し出しているのである。しかも稚児の形代が「いちばん」であり、他の形代もつぎつぎと瀬をつかんでいるのである。(寛)

  俳号のボトルキープや熱帯魚        中西 宏   3点

とても愉快。熱帯魚がマッチしている。(晶)

如何にもありそうなこと。面白い。季語が店の照明具合まで連想させてくれる。(宗一郎)

きつちりと井戸の石蓋敗戦日         石川由紀子  3点

戦争にもきっちりと蓋を!(游)

出撃の鵜や炯炯とみどりの眸        朱 月英   3点

鵜飼のまさに始まらんとする一瞬を鵜の眸にとらえたところが良いと思います。(明)

哀れにも勇ましい。(由美子)

   私良き妻と思ふよ冷奴           大山由美子  3点

こんなことをサラッと言えてしまう「妻」は、どういう女性なんだろう?と思って、この句をいただきました。この自信、羨ましい限りです。でも、夫婦に限らず、自分が自分にくだす評価って、相手のそれと意外に違っていることが多かったりしますよね。よく職場での自己評価は、自分自身の評価の8掛けにしたくらいでちょうどいいと聞きますし・・・。このご夫婦は、妻と夫の評価が一致していますように・・・。そしてお幸せに。(恭子)

海猫(ごめ)楽し囮デコイに恋をして         福永南草(法弘改め) 2点

「楽し」シリーズでは一番好きかも。(洋)

江戸つ子の弾ける気風鳳仙花        石川由紀子  2点

昔の江戸っ子には鳳仙花が弾けるような気質があった。今は如何であろうか。作者がこのように詠んで居られるので、今も健在あることは喜ばしい。ところで、江戸っ子の気質に鳳仙花を例えたところが、マトを得ていて面白い。(芳彦)

鳳仙花は庶民の花。弾ける種を、江戸っ子の気性と表現したところに共感がもてる。(瑞子)

   向日葵の辻を曲がれば海の風        三雲繪里子  2点

  この句は夏らしさを前面に現した句です、向日葵の花の黄色と海の青さが目に焼きつきます、そして海からの風、爽やかですね。(昭信)

   蜻蛉の翅に透けたる松林          西脇はま子  2点

山羊の乳回し飲みしてキャンプの火     瀬戸口靖代  2点

キャンプファイヤーの火がみんなの顔を照らす。農家からいただいた山羊の乳を回し飲みしている顔はみんな愉快そうだ。キャンプ仲間の連帯感も感じられます。(香誉子)

 山羊の乳はさっぱりしているというが、キャンプできるようなところでないとなかなか飲む機会はない。(清文)

花束のごと枝豆を抱へ来る         松村三冬   2点

枝豆とは、ビールのつまみとして茹で上がり塩がついた状態で出てくるものしか、最近では見ていない。だが、この句では枝豆を「花束」のように抱えてやってくるのである。これは、収穫の風景に違いない。年を召された女性が、早朝の畑から抱え込むようにして枝豆を運んでいるのである。「花束のように」と表現することで、その労働の尊さが強調されるようである。(寛)

見事な視覚的把握。適切な省略からは、物語性と滑稽味も生れる。(宗一郎)

エコロジー青き地球の蟻地獄        上川美絵   2点

地球のエコロジーはどうしても考えなくてはならない問題。ところが地球の砂漠化、温暖化が進んでいるという。作者はこれを蟻地獄と言って退けた。当に蟻地獄のように蟻がかけ上がれないような状態になっているのかも知れない。的を得て面白い。しかし、皆で何とかしなくては!(芳彦)

今はもう夏の青空怖くない         和佐尚子   2点

お多福の差す手引く手の日焼けして     榊 睦子   2点

夏旅の夜の宴会。お多福麺の芸達者の手は日焼け。思わず笑みが。(編人)

幾年を錆びて炎暑の捨て錨         橋本和男   2点

漁港の隅で見る風景。捨て錨という言葉に引かれました。(編人)

都会的で乾いた感覚の句と思う。(瑞子)

可か不可か冷房ぬるき職員室        土屋香誉子  2点

この作者は、どういう立場の方なのでしょう。学校の教職員、管理職、教育委員会(今何かと話題の!)、はたまた、保護者、児童・生徒・・・?それによって、この句の提示する疑問への回答は違ってきますね。ちなみに私の子供の通う区立小学校は、校長室・職員室・一部の特別教室には冷房がありますが、普通教室には設置されていません。区の方針として、文科省の推進するエコスクール化を区立学校に努力させるため、区立学校の普通教室には冷房は設置しないと区が決定したためです。が、東京都では昨年度、全都立高校の全普通教室に50億円をかけて冷房を設置しました。小中学校と高校とではその規模が違いますから単純には比較できませんが、同じ文科省の指導下にある公立学校で、この施策の違いはどう受け止めるべきなのか、ちょっと考えてしまいます。(恭子)

モディリアニの女の首の汗疹かな      和佐育子   2点

  祖母さまのゆるりと軽き浴衣かな      小高久丹子  2点

   ゆるりと軽きがゆったりした涼しそうな雰囲気を出していて、祖母を思い出しました。(雪子)

  和服って着こなしの差が歴然とでてしまいますね。祖母さまの浴衣、楽そうで涼しげでいかにも粋な様子です。(康子)

  日影なきところを歩く原爆忌         藤木 優   2点

日影がないのではない。原爆の犠牲者に対して、片蔭など歩いては申し訳ないという気持ちが生じたのだ。理由を何も語らないことによって、上手に深読みを誘っている。(法弘改め南草)

喜雨の後山一段と隆起せり         矢上とう子  2点

続く炎暑に野山も人も疲れの溜まった息づかいが、雨の音と涼しさで一挙に生き返る。そのさまを「山の隆起」と表現された妙を感じました。(みちほ)

何もかも忘れて神輿揉みにけり       室  明   2点

荒神輿の佳境に入ったさまが髣髴とする作。(傳)

我が影を蒼しと思ふ今朝の秋        今井温子   2点

ギラつく太陽の日差しが少しだけ和らいだ微妙な季節感が、「蒼」の一文字によく出ている。(蟷螂子)

夜のヨット星飛び込んで来たりけり     芥ゆかり   2点

満天の星とヨットの揺れまで分かる。(芳生)

ヨットが少し傾いたと思ったら流れ星が、飛び込んできた。満天の星を見てみたいと思った。(月英)

涼しさは土踏まずなき寝釈迦かな      大庭恭子   2点

  行つてきますの声張り上げて暑気払ひ       上川紗央里    2点

十便図一便は鮎釣りあげて         河村うら子  2点

山居が夢です。九便に思いが巡ります。(育子)

からすうり星雲のごと咲きにけり      土屋 尚   2点

からすうりの花は確かに美しい。言われてみれば確かに「星雲」あるいは「超新星爆発」のような感じです(有史)

老鶯の山裾長く伸ばしをり         西沢けい子  以下1点

「斜陽」読む直後に梅雨の明けにけり    米田清文   

谷音に重なりかなかな響きけり       神山敦子   

一服の清涼剤になるような句。(修造)

星涼し組み上げられて芝居小屋       榊 睦子   

花ざくろ握りしめたる赤子かな       日原 傳   

日当たれば空ひかげれば海曼珠沙華     笹下蟷螂子  

なるほど!(洋)

  サルビアの高きに燃ゆる孫文廟       西野編人   

苦しい時期の多くを彼は亡命先の日本で過した。孫文と日本のつながりは深い。此の句は広州の越秀公園の碑でしょうか?私は神戸の六甲山麓で見た記憶があります。季語の燃ゆるような(サルビア)が一句を抱擁している佳句。(久子)

星涼し今日の碇を下ろしけり        芥ゆかり   

一日の仕事を終えた安堵感が、碇を下ろす行為に象徴的に示された。背景としての「星涼し」という季語も働いている。(傳)

朝凪の清盛の海月沈む            永伊予人   

県境の川夏草におほはるる         土屋 尚   

短命の縄文人や大暑来る          滝澤たける  

縄文の遺跡を訪ねた。暑い日であった。知らされた縄文人の寿命は驚くほどの短さだった。彼らにこの暑さはさぞこたえただろう。(尚)

整然と城門指して蟻の列          内藤芳生   

蓮の花その彩いつも嬰のいろ         森田みちほ  

  アングロサクソン頬骨高き晩夏かな      橋本有史   

あくまでも真紅の薔薇を黒と云う      今井温子   

 真紅の薔薇の中でも特に色濃いものを黒薔薇と呼んで愛でているのであろう。黒は様々なイメージを生む神秘的な色である。「黒薔薇」と言うだけで、妖しい花のように思えてくる。(睦子)

食パンと水とラジオと晩夏光        小川 洋   

庭石の虎の子渡し男梅雨          木場瑞子   

京都の竜安寺の石庭が目に浮かびます(修造)

  青蜜柑島に小さき影を成し         合原実世   

道をしへ方向音痴もゐるだらう       上川美絵   

人間以外にも方向音痴はいるのだろうか。方向音痴といえば身につまされる。(月英)

地下の河流れゆく音熱帯夜         深谷義紀   

地下の自然の河が流れる音が寝ぐるしい夜には聞こえてくるようだと解釈してもよいが、むしろ都会の下水道の音が実際に聞こえたとするほうが切実である。先日のいたましい事故を予言しているようですらある。(尚)

蜘蛛の囲の破れて地表走りけり       五十嵐義知  

 あまり見たことのない光景に感動。(晶)

監視台より地震知らす夏の浜        根岸三恵子  

海水浴客に地震があったと知らせる監視人。さて津波情報は?。リアルな句です。(和男)

   風鈴や格子に結ぶ赤き紐          池永 寛   

  蚯蚓乾涸びてゐるラジオ体操        上川紗央里  

青林檎十字の墓の並ぶ丘          青柳 飛   

   初ぼたる水に生まれて水に消ゆ        藤木 優   

 澄んだ水に蛍が生まれ短い生涯を閉じる(修造)

   涼しさや洋菓子並ぶ硝子棚         三雲繪里子  

 都会的な涼しさ、美しさ。(清文)

   光ある限りは飛べり夏燕          土屋 尚   

執念の青田波打つビル谷間         古池茶凡   

背に負うてかつ抱つこして合歓の花          妹尾茂喜   

 こんなお母さんに出会うと、かつての自分の姿を重ねてしまう。あの頃、大変さの中にも、言い知れない、静かな歓びがあった。「合歓の花」が動かない。(睦子)

ちつぽけな石かも知れず夏の星       大庭恭子  

真夏の夜空に輝くあの星は本当は小さな石が宙に浮いて、それが輝いているのですね、 だって小石くらいの星でなければ、この空にこれだけ多くの星を置けないですよね。 星をちつぽけな石かも知れず、としたところがポエムがあって楽しい句です。(昭信)

百物語蝋燭のいま燃えつきぬ        松村三冬   

一人酌む七夕の夜のセレナーデ       石田 游   

金ぶんの玄関前に落ちにけり        西田修造   

 金ぶんて方向感覚があるの?というような落ち方 それも思い切りぶつかって 不思議。(久丹子)

山百合や大豆畑に父の畝          神山敦子   

大豆畑に一畝だけ百合がさかんに咲いている。遊び心のある父であったなあ。(尚)

せせらぎのひかり寄するや心太       宮下惠美子  

地球より億土はなれて昼寝せり       金村眞吾   

すごい昼寝ですね(笑)。はればれとした開放感を感じて気持ちいい句です。(ゆかり)

癇症は団扇の使ひ方に出て         中西 宏   

思わず同感!(雪子)

縁側の夏やすみ場所指相撲         石川由紀子  

夕食後、花火も遊んだし、西瓜も食べた。さあ始めよう、いつもの指相撲。いま横綱は父さん、母さんは技能賞で大関へ。僕、小結。姉さんは…。家族に思い通わす楽しさがいっぱい。(茂喜)

雛僧の抱へて戻る大西瓜          上川美絵   

近辺の人達からいつも見つめられ愛されている雛僧に大きな西瓜のお供物が捧げられた。やさしい人達の愛情です。(千映子)

縄文の生活の丈の涼しさよ         滝澤たける  

現代人の生活は無駄なものが多すぎて暑苦しいことこの上ない。かくいう自分もその生活にどっぷりとつかっております。涼しさよ、がとてもいいと思います。(康子)

キーツの紺朝顔の紺厳しき紺        津久井紀代  

炎帝の制す一村鉢の底           市川康子   

きりっとまとめて、俳句の醍醐味。<炎帝様、盛夏なれども炎熱差配は御容赦を。何とぞ再度、鉢の底をひっくり返して、星流る高原に復元の程願い上げます>一村村長並びに村民一同(茂喜)

ハンモック揺れてマエストロの別荘     熊谷佳久子  

マエストロの別荘であるから特別な一句となった。(紀代)

ぬれ縁に情死のごとき火取虫               立久井昌子  

地震のこと言はずみちのく夏深し      須田真弓   

みちのくの人々は昔から我慢強い。短い夏をだまって天災を克服している。(うら子)

石州の銀に打つたる花慈姑(はなくわゐ)         池永 寛   

石州の清音の響きが銀の輝きを感じさせる。(伊予人)

トンネルは万緑の口車呑む         西沢けい子  

 



                              (8/20 ネット句会管理担当 天野小石)