天為インターネット句会 2008年10月


     今回のネット句会は、有馬主宰からの一言アドバイスが添えられた作品があります。
     選外句については主宰のコメントのみで、作者無記名といたしました。


  <有馬主宰選特選句>                (互選)

  防人の能古の高きに登りけり       西野編人   5点

  能古は万葉以来の歌枕である。その故は、朝鮮半島に最も近い防衛の最前線であったため、防人が早くから設置されたことによる。『万葉集』には「沖つ鳥鴨とふ船の帰り来ば也良の防人早く告げこそ」や「風吹けば沖つ白波恐みと能許の亭に数多夜ぞ寝る」などと詠まれた。その地に配された防人が、重陽の節句に高い丘に登って無病息災を願ったという句であるが、もちろん、その高い丘から、遥かに遠い生国を望んだのだということが背後に隠されているのである。生国の母を思ってか、あるいは妻や子か、いずれにしても、朗人主宰ばりの、歴史に思いを馳せた堂々たる句である。(法弘)

高きに登る その想いと情景が絵のように浮かび上がりました。(久丹子)

万葉の時代へと誘う、「防人の能古」の地名が効いていると思う。(瑞子)

島の高みでいにしえの防人の望郷の念に思いを馳せているのでしょうか(ゆかり)

  京劇の仮面のにらみそぞろ寒       松崎邦子   1点

にらみとそぞろ寒が近過ぎる。季語を変えてはどうか。(朗人

  代書屋の風呂敷包み鬼城の忌       中西 宏   1点

 鬼城と代書屋はつき過ぎだろう。風呂敷だけでよいのでは。(朗人

着想の意外性は諧謔的、歯切れのいい小気味良さはベテランの味。(久子)

  音もなく跳ぶカンガルー日は永し     岸本尚毅

  朝粥の赤き木の実や小鳥くる       河村うら子

 

  <有馬主宰選入選句>

  プロレス誌煤けて秋刀魚美味き店     小川 洋   7点

炭火焼の秋刀魚の煙が見える。(隆宏)

「確かにあるなぁ」と思わせる素材の配置。秋刀魚を焼く煙、「プロレス誌」が効いている。(宗一郎)

 何だかとても「昭和」の光景ですが、プロレス誌が上手く決まっているように思います。(恭子)

安い大衆食堂の雰囲気が出ています。(清文)

さんまの焼いたのがうまいような飯屋は、こんな感じだよな。(尚)

  サガレンに天葬の民秋高し        福永法弘(南草戻し) 4点

  曼珠沙華維新の闇の弾薬庫        武藤スエ子  3点

新しい時代を切り開いた国家の大改革、その影には多くの人達が活躍しました。鳥羽、伏見の戦いの際には大量の弾薬によって戦況の回復に役立ったとの事です。 省略の利いた佳い作品です。(久子)

曼珠沙華の爆発したような赤と弾薬庫の暗さが際立ちおもしろい。(晶)

維新の闇が夜明け前の最も暗い頃を思わせ、曼珠沙華の赤との対比が鮮やかです。(康子)

  とんばうが待つ棒高跳びの頂点      福永法弘(南草戻し) 3点

 遥かな高みの一点。(繪里子)

青空が見え、時間が止まったような視点が素敵。(雪子)

  子のゐれば秋果あふるる家となり     明隅礼子   3点

 秋果あふるる家という表現に惹かれました。子がいるだけで豊かになれる・・・母の目線でしょうか(ゆかり)

 子や孫が来るときに用意する心使いの秋果が愛情を表している。(晶)

 うれしいねえ。葡萄も梨も柿も、秋の味覚が今年は一番だ。息子が思い切って帰ってきてくれたお陰だよ。あの歩き方、笑い方、どれも亡き夫そっくり。老いの身に力がかえってくる。(茂喜)

  駄菓子屋の間口一間小鳥来る       石川由紀子  3点

この句一見平明な自然発想に見えるが、ふと、樋口一葉の「たけくらべ」が私の頭脳を掠めました。季語の「小鳥来る」と軽く留めて効果を示しています。軽快なリズムが見事に心に伝わってきます!(久子)

最近では滅多に見られなくなった駄菓子屋。それも間口が一間しかないとあれば子供が2〜3人も来たら店の中がいっぱいになってしまいそうな駄菓子屋。そこに小鳥も来ている・・・、とても懐かしく、ほっとさせられる風景ですね。つい数日前の新聞に、そんな昔ながらの駄菓子屋が見直されつつあるという記事が載っていました。今の子供には、親でも先生でもない、「ナナメの関係」から見守ってくれる存在が必要だとか・・・。(恭子)

 間口一間が良いですね、いつも来る子供達が学校で、閑散としている駄菓子屋の軒先に小鳥が来てる、そんな感じの句だと思います、奥で主人のお婆ちゃんがコックリ、コックリと居眠りしているのかな。(昭信)

  秋の虹運河は海と出会ひけり       河村うら子  2点

出会ひけりの使い方が上手い。(真弓)

  稲架組むや連山いつか暮れてゐし     内藤芳生   2点

山国の田園風景。近景と遠景のコントラストが鮮やか。(義紀)

  枝豆の夜な夜な立ちて歩くらし      大山由美子  1点

 ちょっと面白いが、では玉蜀黍ではだめだろうか? 枝豆の必然性があるかどうか。(朗人

未熟な大豆が枝豆なのだと知ったのは、かなり大人になってからだった。はずかしながら。確かに歩きだしそうな姿である。それもアメリカの怪奇映画の主人公のような。(尚)

  秋の蚊にしばらく見つめられてをり    明隅礼子   1点

  ゆつくりと雲流れ行く下り鮎       荒木那智子  1点

紛うことなき秋の景。稔りの秋の豊穣をも感じます。(義紀)

  鏡花忌や九谷の皿に菊膾         榊 睦子   1点

 九谷と鏡花はつき過ぎか。(朗人

  阿里山に稲妻走る甕の酒         河村うら子  1点

阿里山は台湾の霊峰で、日の出・夕霞・雲海・鉄道・神木の五大奇観を特に愛ずるが、敢えてそれらを外して稲妻を持ってきたところに俳味がある。また同様に、阿里山はその霧が育む茶が名高いが、甕に育む薬酒へと視点をずらしたところにも得も言われぬ趣があって面白い。神仙も微笑むに違いない佳句。(法弘)

  文具店パン屋となりぬ獺祭忌       日原 傳   1点

文具店とパン屋の対比がおもしろく季語が効いている。(真弓)

   煙なき南蛮きせる向島               斉藤輿志子

  石炭を運ぶ無蓋車今日の月        日原 傳

  鶏頭花抽ん出てゐる子規の墓       根岸三恵子

  我に濃き江戸つ子気質黍嵐        松山芳彦

  月を待つ中洲に葦の高かりし       荒木那智子

  三山の月夜や出羽の所酒         天野小石

 

  <互選句>

  赤とんぼ空の迷路を抜けられず      笹下蟷螂子  8点

  ほんとに! あの飛びようを空の迷路とは。(游)

  赤とんぼの飛び様と迷路、おもしろいと思いました。(義知)

  蜻蛉の水平飛行を、迷路に迷っているとみたところが面白い。(瑞子)

空は限りなく広いにも拘らず一定の空間をあっちへこっちへと飛び回る赤とんぼを見かけることがあります。それを迷路があると想像したことが面白いです。(明)

確かにそんな風に見えます。(洋)

とんぼは、空中で一瞬止まった後、くるっと向きを変えてもと来た方へ飛ぶことがよくありますが、それが丁度迷路の行き止まりに入ってしまったようだ、ということでしょう。納得してしまいました。(香誉子)

自在に飛んでいるように思える赤とんぼも、視点を変えて見てみると確かにこういう事に。中七が好きでした。(昌子)

  記紀の神いでよ花野にあそばれよ     橋本和男   7点

  神は、はやばやと花野で美酒を酌んでいるかも。(編人)

  八百万の神をお呼びしたくなるような花野。(たける)

風に揺れる美しい花野に出会ったのでしょう。神話の神々を誘い出したくなるような(ゆかり)

  重さうな子規の後頭秋澄めり       滝澤たける  7点

 なぜ秋澄めりなのか?(朗人

良く観察していますね。そしてそれを表現した。ちょと顎の突き出た子規、そして後ろに突き出た頭。一度出会ったら忘れられない景である。(紀代)

お馴染の横顔の写真を思う。過去に子規のこの写真を詠んだ句には何度か出会った、蟻のやうであるとか・・・。「重さう」とはまたズバリ、「秋澄めり」も適切。(宗一郎)

子規の写真が浮かんでくる楽しい句。(雪子)

人のよささうな冬瓜ばかりなり      津久井紀代  6点

確かに。冬瓜は確実にいい人ですね。(和弥)

言われてみれば、冬瓜は確かに「害意がなさそう」「平和主義」という形状をしていますよね。そこに目をつけた発見がお手柄。(義紀)

 つるんとした皮で少々いびつな形は、確かに。でも実は、かぼちゃなんかより料理の腕が必要、という裏あり?(恭子)

冬瓜のあの形、あの重さ、なにがあってものんびり転がるしかないかな、と思わせます。(香誉子)

田の神とないしょ話の案山子かな     上川美絵   6点

この水田には、変な農薬は使っていないとか。ないしょ話に引かれました。(編人)

近郊の案山子まつりを見に行きました。こういう状況の案山子がありました。(和男)

案山子とないしょ話をしているのが田の神であったユーモア溢れる句で楽しくなりました。(輿志子)

月夜の晩に田の神と案山子は何を話すのでしょう。民話のような句ですね。(康子)

調律の音叉に秋の光かな         松崎邦子   5点

澄みきった秋の音と光を完璧に併せ詠む。(たける)

秋の光を音叉に反射させたところが上手い。ギターのチューニング用の音叉の銀メッキが鮮やかに想像される。(宗一郎)

 音叉の銀色と秋光の美しさ、また余分な物の何もない美しさが余韻を残していると思います。とても心惹かれる句でした。(昌子)

  秋の夜の真暗がりから鍵の音       市川康子   4点

静かな光りのない空間から音が聞こえる。秋の夜ですが、月や星の明るさではなく暗がりとしたところをいただきました。(義知)

現実にあるようなそうでないような不思議な怖い世界。(真弓)

物語性があって興味深い。冷気をともなう秋の夜、鍵の音が冷たく響いた感じがします。 (明)

  全天を余さず島の星月夜         満井久子   4点

 さもありなん。もう一歩突っ込んで写生を。(朗人

全島を覆いつくす星月夜、満天の星の煌めきは神秘的な大いなるもの存在を感じさせくれます。景の大きいところが素敵です。(かをるこ)

小さな島は夜が別世界 いつまでも見飽きぬ美しさ。(久丹子)

挨拶句でしょうか、こんなところへ行ってみたい。(清文)

有りの実や地球は水の多き星              橋本和男   4点

 「水の多き星」はその通りで平凡。(朗人

水の惑星と梨、面白い!(游)

水分の豊富な梨の実と地球。水の惑星だからこそ、梨が実るという発見。(義知)

梨を有りの実と言ったことでみずみずしさが伝わってきます。でも、地球温暖化でそれも心配!(けい子)

みずみずしい梨と青く美しい地球の取り合わせに惹かれた。(月英)

馬肥ゆる岬のはるかに瑠璃の潮      西野編人   4点

隠岐の島岬の放牧の馬が浮かびました。秋雲の広がりに瑠璃の海原、岬に点々と見える牛馬は、思いのままに草を食み寝まり沖を見ているなど・・澄んだ四囲の香りと風を感じました。(みちほ)

 九州都井の岬に野生の馬がおります、そこでの句かと思います。そこから見る南の海は確かに瑠璃色です。のびのびとした句で、馬肥ゆる、としたところが心を豊かにしてくれます。(昭信)

立待の闇にすとんと子が寝落つ      清水安奈   4点

すとんと寝る子がかわいいね。(和男)

幼子が眠る折は場所も時間も関係なくちょっと静かになったかと思うともう眠っている、すとんと子が寝落と表現されたのがゆるぎない愛情そのものですね。私も心豊かな気持ちになりました。(温子)

立って待っているうちに出てくるという立待月。そのさして長くない時間も待てないほど簡単に寝てしまった子。健やかで安らかな寝息が聞こえてくるようだ。(睦子)

風となる前のかぜ抱き芒原        瀬戸口靖代  4点

芒原自体が風をはらんでいて吹く時機を待ち構えている。一斉に芒が靡く前の緊迫感を思った。(月英)

詩を感じました。(昌子)

放下僧一衣一鉢こぼれ萩         石川由紀子  3点

こんな軸をかきたい。(隆宏)

 秋の日の「放下僧」の姿が伝わって記す来ます。そこはかとなく哀愁を感じます。(芳彦)

  生身魂本意と本音つかひわけ       津久井紀代  3点

 本意と本音を使い分ける確りした生身魂には感心させられます。それを見分けられた作者の感性は素晴らしい。(芳彦)

 つかいわけが出来るとは御立派。まだまだ長生きされそうです。(三冬)

  礼状の切手あれこれ星月夜        熊谷かをるこ 3点

手紙を送る時、切手を選ぶのは楽しいものです。星月夜に心のこもった礼状を書かれたのでしょう。美しい切手を広げ思案している姿がみえてきます。(月英)

礼状を送る人それぞれに相応しい切手を貼るのであろう。少し手間のかかる作業だが、そこに作者の感謝の気持ちと優しさがある。(蟷螂子)

  新米の香りゆたかにお食ひ初め      室  明   3点

今50男の長男のくれし至福の一日。(隆宏)

痩せ案山子なれど大役はたしけり     橋本和男   3点

 それはそうだろう。(朗人

案山子への労わりの気持ちがよく汲み取れます。(三恵子)

一家の親父さんのイメージとだぶり、俳味を感じます。(けい子)

案山子に対する感謝の心が出ています。(清文)

風向きにさからはずして秋の蝶      五十嵐義知  3点

秋の蝶の、静けさと哀れさが、よく表現されていると思う。(瑞子)

 風に吹かれるままの秋の蝶。秋蝶の「あはれ」が、風という視点から把えられている。(睦子)

背後より石榴ぶつけてみたき奴      小川 洋   3点

あらゆる人がこの句の対象となり、読み手の想像を膨らませる句。(蟷螂子)

月の嬰夢の中まで乳吸うて        瀬戸口靖代  2点

月光を浴びながら赤ちゃんを庭であやしている若いおかあさん。ぐっすり寝入った嬰を静かに見守っている穏やかな景が見えてきます。(明)

育みし朱鷺解き放つ日和かな       土屋 尚   2点

時事俳句ではあるが、いったんは絶滅した朱鷺に是非にも再生してほしいとの願いや切なる佳品。「朱鷺」と「解き」の「トキ」音の重なりが効果的で、日和に対し諸手を広げ、再び神の審判に委ね得る喜びの感じられる句だ。(法弘)

天平の水煙掠め流れ星          内藤芳生   2点

時空の悠久を詠む。スケールの大きさ。(たける)

  葛の雨まして不器男の國なれば      笹下蟷螂子  2点

 『不器男』との取り合わせがよいと思う。(洋)

不器男の生まれ故郷をおとずれたら夜雨がふったとは。しかも葛の頃運のいい俳人がいるのね。できすぎてるね、にくい。(うら子)  

隙間なく晴れて友逝く秋の空       市川康子   2点

秋の水分けてカヤック滑り出す      芥ゆかり   2点

秋の水へすべり出そうとするカヤックの一瞬の清清しさ。(晶)

   銀山へ籾殻山の火を吹ける        岸田 晶   2点

  丸善にまだ青き柚子置いてくる      宮下惠美子  2点

 梶井のレモンの二番煎じ。(朗人

この句は当然、梶井基次郎の「檸檬」が下敷きになっているのでしょうね。そうだとしても、この句の作者は何故そのような行動をとったのか、大変興味があります。この場合やっぱり、「紀伊国屋書店」に「蜜柑」を置いてきたのではだめなんでしょうね。(恭子)

梶井にハマっていた頃を思い出した。青春性を感じる。(洋)

先生がぼそぼそ訛る夜学かな       澤田和弥   2点

流星といふ字余りの如きもの       笹下蟷螂子  2点

 感覚的、言語的な句ですが、妙に納得。そのうえとってもかっこいい句であります。(和弥)

この雲に物語あり秋遍路         矢上とう子  2点

四国八十八箇所の霊場を巡礼する人達の人生のドラマをこの雲にたとえたというところが良い句だと思います。(輿志子)

澄み渡る空にいろいろな形の雲、空想は限りなく広がる。歩んでゆく遍路たちの、それぞれの来し方のストーリーもみえてくるみたい。(うら子)

秋の風むらさきの花みな散りぬ      明隅礼子   2点

山羊座けふ恋運のなし温め酒       清水安奈   以下1点

今日は自分に恋運のない事を知りながらも、告白をせずにいられなかった作者。告白をしてしまったあと、諦めきれない人の肌の温もりほどに酒を温めて飲んでいる作者。(蟷螂子)

  須佐之男命の足下に伏せる穴惑      吉野巨楓   

冬眠の穴を探していたら、あの神の足下に。組み合わせが面白いですね。(編人)

秋の雨ほぼ空つぽのポプリ容れ      窪田治美   

「空つぽのポプリ容れ」秋らしい寂しさを感じます。「秋の雨」と「空つぽのポプリ容れ」とは良く決まっています。(芳彦)

 うすうすは囮と知りつ会ひにゆく     小高久丹子  

人間が囮か? それではつまらない。鳥が囮と知りながらも会いに行く、それでは平凡か。(朗人

  マリーナの明るさに照る椿の実      森田みちほ  

つやつやした椿の実を持ってきたことで、白いヨットに陽のあたっているマリーナが一層明るく感じられます。(香誉子)

花の絵のドロップ缶に種子収む      朱 月英   

大切に育てた種を大切にしまう感じが好ましい。(由美子)

露草や打ち寄せられしもの静か      芥ゆかり   

 朝の湖畔に、波に運ばれて生命を失った木屑や落ち葉のはかなさが感じられます。(恭子)

  目を伏せて牧師夜長の翳を濃く      立久井昌子  

 「牧師」「翳」という言葉がとても活きていると思います。神の御前の静謐を巧みに表現なさっていると思いました。(和弥)

跳ぶ先の定まりきらぬばつたかな     五十嵐義知  

乾漆の皿のかろさや衣被         室  明   

秋の金魚飼つて学童保育室          西脇はま子  

ざわざわして賑やかな保育室、金魚も嬉しかろ・・・(由美子)

  台風や父になじまぬ処世術        澤田和弥   

明治の父のような・・・。(雪子)

  子沢山の父母でありしに吾亦紅      木場瑞子   

  慎ましくまっとうに生きた人のたたずまい 吾亦紅と重なります。(久丹子)

   人の口静かにさせる曼珠紗華       高橋雪子   

分水嶺越えて着きたる鬼胡桃       和佐育子   

  秋耕の大地送電線の空          日原 傳   

  気持ちの良い句です。(尚)

  手から手へ木の実や愛を移すごと     熊谷佳久子  

手から手へ移す木の実,吟行などでよくある景である。愛移すごとと捉えた点上手いと思う。(紀代)

  獺祭忌一日ごろごろ寝てくらす      津久井紀代  

  言い得て妙。(和男)

  道端に襤褸切れ広げ石榴売        和佐育子   

この句は中国西安かと思います。石榴のルーツはシルクロードを経て中国そして日本に伝わった果物です。襤褸切れを道路に直に広げて売る風景、西安で見た懐かしい思い出ある風景の句です。大きな石榴を売る素朴な感じが良く出ています。(昭信)

   蛇穴に鞘に収めるごと入りぬ       中西 宏   

   診療所閉鎖の噂山に雪                       深谷義紀   

山が白くなり始め厳しい冬が来ようというのに診療所閉鎖の噂。地方の医師不足は深刻です。雪のように静かに不安が募ります。(康子)

決着は間近椀子の走り蕎麦        竹内宗一郎  

勇ましい語り口なのに軽妙。俳諧味あり。(由美子)

うづくまる携帯電話(ケイタイ)少女星月夜      須田真弓   

最近の少女はうづくまる。そして携帯電話、そして月夜。最近の世相が詠まれている。寒々しい感じ。(紀代)

学ぶ灯の一つ明るき月の窓        吉田久子   

希望の輝き。(繪里子)

春寒の木の途中なるコアラかな      岸本尚毅   

   深吉野の霧がなでゆく摩崖仏       今井温子   

霧の中見え隠れする摩崖仏が見えてくる。深吉野が効いている。 (芳生)

葛の花こぼれ売地のまだ売れず      西沢けい子  

ぎこちなく鳴くこほろぎのゐたりけり   和佐尚子   

虫の世界にも、「不器用」なタイプがいるのですね。でも、その「不器用さ」は、青邨先生の「こほろぎのこの一徹の貌を見よ」のこおろぎと通じるものがあるような気もします。「けり」で切っているのは、そのこおろぎに誰か人間を投影して、その人を懐かしく思い出しているのでしょうか?(恭子)

  公園の中に御神酒所秋まつり       根岸三恵子  

 御神酒所と秋まつりはつき過ぎ。(朗人

北斎の白波かくや雁渡し         松村三冬   

抱き上げて届かせたるは棗の実      矢上とう子  

童の手に卵形の濃い赤紫色の実を触れさせる。ひとつ取ってふくませる。甘酸っぱい液が口をうるおす。この子は、初めての棗の味と木陰で抱かれた祖母の腕のやさしさを忘れない。(茂喜)

威し銃待ち伏せゐたり畦の径       内藤芳生   

 のんびりと畦道を歩いていたら突然、威し銃の音が・・・一瞬、狙い撃ちされたか、と。そんな経験私にもあります。(睦子)

病む兄に長々と剥く梨の皮        三宮隆宏   

蘭亭帖色変へぬ松の如く在り       吉野巨楓   

格調高きもの同士、どっしりとした存在感。(游)

毒茸を展示してあり茸汁         土屋香誉子  

草の露踏みキャンパスに紛れけり     武藤スエ子  

大学の正門に立っている私。歩き出した自分を見送る。友人が来て教室に向かい、やがて人の間に消える。草の露がキラリと光る。いつもの風景を掬いあげてみせる若き詩才もキラリ。(茂喜)

爽やかやゴール切つても駆け続け     芥ゆかり   

手加減とかほどほどとかの日々、かけっこでゴールのずっと先までかけ続ける姿に忘れかけたひたむきさがふとよみがえった。さわやかな感動の句。(うら子)

十字路の灯の輪に入りぬ宵の秋      三雲繪里子  

風神と雷神のゐて曼珠沙華        米田清文   

そう言えばなんとなく曼珠沙華にはそんな雰囲気があります。(けい子)

風の盆男踊りに指の反り         西沢けい子  

手を拡げとほせんばうの案山子かな    齊藤昭信   

田舎ではこのような案山子を見ることができます。諧謔味がある。(芳生)

月高し化石読み解く虫眼鏡         榊 睦子   

塾弁の梨で祝せり誕生日         大庭恭子   

蘭の香や楽屋裏とは面白き        朱 月英   

楽屋裏に届けられるそれぞれの花、その中に、ひときわ香りの高い蘭がある、忙しく役者等の会話が飛び交う様子を面白き、とまとめられたところが良かったです。(輿志子)

 

  <選外句>

   海原へまことに大き秋入日        

  よく類句があります。(朗人

  虫の声望郷と云ふ文字二つ        

虫と望郷はつき過ぎ。(朗人

  退屈な眼科待合秋の午          

  秋が動く。(朗人

  頭にも肩にも雀案山子翁          

 よくある句柄。(朗人

晩秋や国語の女王苦戦せり        

 なぜ晩秋か。国語の女王とは?(朗人

方丈の三千世界獺祭忌          

 何を言いたいのか、どうして放丈が三千世界か?(朗人

  秋風鈴十あり風の競ひあふ        

  よくある句。(朗人

   車座に青年団の秋祭り          

  車座はよく使われる。(朗人

   命惜しとつくつく法師時雨けり      

 「命惜しと」が平凡。(朗人

杉大樹数百年や秋彼岸          

 「数百年」が平凡。(朗人

  秋蝶もまた韃靼海(たたるみ)を渡るもの       

 安西冬衛の「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った」を越えていない。(朗人

秋天のどっと広がるビル解体       

 それはそう。(朗人

草は実に青邨句碑の文字深く       

 碑の文字が、深い、浅い、白い等、大変多い。(朗人

ニュートンの林檎色づく臼田町      

 臼田町がなぜ面白いか? (朗人

健啖の子規に肖る新豆腐         

 健啖の子規は、類想が極めて多い。(朗人

秋冷に衣類重ねて夕餉かな        

 冷えれば当然のことだろう。(朗人

 

 

 

                    (2008/10/14 ネット句会管理担当 天野小石)