天為インターネット句会 2008年11月
今回のネット句会の選は、大甘で採っております。(朗人)
<有馬主宰選特選句> (互選)
手のひらに入り日の重さ柿をもぐ 市川康子 7点
手のひらの熟柿に「入日の重さを感じた」という表現が素敵でした。(ゆかり)
柿の色は夕日の色。そして重さもまた。日本人のDNAに刻み込まれた記憶の光景。(内恭子)
柿をもぐ実感を、入り日の重さと比喩したところが巧み。(伊予人)
村の子の猪垣越せば本塁打 中西 宏 6点
古今東西草野球は男の子なら一度はやったことがあるだろう、昨今は女の子でも大会に出ている。ちょっとした空地を見つけてはもう始まっている。北海道に猪はいないが、猪垣で地域性が出ていて、また道路までボールが飛んでいけばホームランとかそれぞれのルールでワイワイやっている景が見え、子供たちの甲高い歓声までが聞こえてくるようだ。(大久子)
イチローの卵ら頑張れ!(隆宏)
日暮の早い谷合の村の子供達の歓声が聞こえてくる。(尚)
今でもありますかねえこんなところが、郷愁です。(清文)
もう搗かぬ木臼に潜みちちろ虫 清水安奈 5点
古民家の納屋の様子が良く見える。(三恵子)
ちちろ虫に相応しい場所となった。(晶)
使わなくなった木臼が捨てられずにしまい込んであるのでしょう。そこに、蟋蟀が鳴いている光景、郷愁感があります。(和男)
「もう搗かぬ」ことになった理由はわかりませんが、作者がお餅を木臼で搗かないようになったことを残念に思っている様子が、ちちろ虫を配したことで秋のものさびしさと相まって伝わってくると思いました。私の実家でも以前はお餅を自宅で搗いていましたが、両親が年老いてしまった今はまさに、臼は物置の片隅で眠っています。身につまされました。(大恭子)
子供の頃、餅つきは年中行事の一つだった。その思い出の主人公は父母。でもこの句を読んで、実家の臼が懐かしくなった。「器物百年にして魂宿る」というが、この木臼に魂の様なものを感じる。実家の臼も虫の宿になっているだろうか。(睦子)
井と寺の鎌倉絵図や鵙の声 武藤スエ子 3点
井と寺が鎌倉らし過ぎる。(朗人)
三方が山、一方のみが海に開く要害の地鎌倉。その地勢の特徴を「井」で表し、歴史の重さを「寺」で表して見事。 絵図の鎌倉は今も変わらず息づいている。鎌倉を知り尽くしている者の皮膚感覚か。(法弘)
古都鎌倉の絵図から本当に鵙の声が聞こえてきそうです。(輿志子)
晩秋や指の先までイエスなり 津久井紀代 3点
一読、とても驚きました。季語がもしかしたら動くかもとは思いましたが、「指の先までイエスなり」と言われてしまっては、もう驚くしかございません。(和弥)
イエス像を見ると、真っ先に顔の表情に目を奪われるが、作者は指に着目した。画家(彫刻家)が魂を込めて創出したその指先の表情は、イエスそのものであったに違いない。寂静とした晩秋のひと時、画家と作者の思いが融けあった瞬間を感じる。(睦子)
綿吹いて今日の画材となりにけり 下條千映子 2点
清々しい気分になりました。(編人)
雪虫や鉄扉はすでに固く閉ぢ 大澤久子 2点
雪虫が舞い始める頃と重たい鉄の扉が季節感を感じさせます。(温子)
八雲さす斐伊源流へ木の実落つ 脇本眞樹 2点
神代の時代から繰り返される営み。悠久の自然を詠む。(たける)
神々の集ふこの時季、命を育む水の源に次の時代を約束する木の実。生命のいとなみに感動。(温子)
まつすぐに雨降りにけり破れ蓮 五十嵐義知 2点
穴まどひそれぞれ違ふものを見て 松村三冬 2点
穴まどひのちょとした見方がおもしろい。(紀代)
下り簗色よき小石忍ばせて 矢上とう子 1点
路地ごとに秋風違ふ谷中かな 満井久子 1点
「秋風違ふ」が面白い。(朗人)
下町の路地のそれぞれにある秋の表情や匂いを運んでくる風。(たける)
無知を知る齢となりし良夜かな 大庭恭子 1点
窓辺に名月を仰ぎ、そばに妻がいる。いたずらに歳月を重ね、知の深みをいまだ知らず、知の高みにいまだのぼり得ず。はや古来稀なる年数えるも。同感の至りです。(茂喜)
朝日射すストンヘイジや小鳥来る 蛭川晶代 1点
片や黙しつ永年を刻み、片や限りある命を歌い継ぐ。共存の生命賛歌のようです。(久丹子)
落款のかすかな掠れ秋惜しむ 満井久子 1点
小牡鹿の跳ねて女神の島日和 石田 游 1点
露けしや小さき書肆の店はじめ 吉田久子 1点
こういう店が少なくなりました。上手くいくといいなって、、露けく感じた作者に同感。(游)
石榴割れ火の山今朝はしずもれり 石田 游
雁渡り堅田明るくなりにけり 朱 月英
女土偶の腹がらんどうそぞろ寒 石川由紀子
ゆれやまぬ汐入川の二日月 立久井昌子
お多福豆煮上るまでの秋思かな 榊 睦子
秋深き汨羅の色や石を蹴る
橋本有史
行く秋のいくりいくりに鵜の一つ 橋本和男
<有馬主宰選入選句>
秋惜しむ古地図のままの城下町 熊谷佳久子 8点
日暮れには、まだ間があるのに見上げる空はどんよりと薄暗い。秋の古い城下町の季節間と併せて中七の洗練された措辞の韻きがよく調和している。(吉久子)
やはり城下町は昔のままの地図が趣があって良いですね。(昭信)
船着場があつて、川燈台があり、そのまま進めば紙問屋が続く古い町並み、昔のままの建物に感激ふと見た博物館での古地図にそのままであつた。(千映子)
行ってみると意外に江戸時代のままの街並が残っている所がある。秋最後の小旅行をしている感じがよく伝わってくる。(尚)
「古地図のまま」というのがいいですね。(蟷螂子)
今や名前も変わるし古地図のままの城下町も珍しくなりました。(けい子)
綿虫の空やはらかき信濃かな 橋本和男 8点
空が固いとか柔らかいとか、よくある。(朗人)
綿虫、ひと言の季語にこの季節の信濃の空間が立ち上がりました。(久丹子)
正統派。季語と「空やはらかき」の調和。地名がとても活きていると思います。(和弥)
信濃の冬空は鋭い寒さを想像しますが、綿虫の空がやわらかいのは判るような気がします。(市康子)
信濃が動かないと思います。(月英)
自分は今住んでいる場所に50年以上住んでいるが、先週末初めて自宅の庭で綿虫を見た。数年前まで「綿虫」を知らなかったので見つけられなかっただけかもしれないが、珍しいものを見つけてうれしかった。綿虫の飛び方、ふるまいは「空やはらかき」にぴったりだと思う。(有史)
日本が端にある地図鳥渡る 土屋香誉子 4点
極東に位置する日本。そして日本国に住む我ら。この句、惹かれました。(和男)
渡り鳥は赤く真ん中に描かれた日本に来るのだと思っていましたが、実はヨーロッパの地図で端にやって来るだけなのかも。(内恭子)
剥落のドーム色無き風抜けて 岸田 晶 3点
炎暑が去り原爆記念日が過ぎて、今、秋の乾いた風が剥落のドームを吹き抜けている。悲しい寂しいと言わずして無常観が漂う。(かをるこ)
類想句はありそうですが、風抜けてが効いている。(伊予人)
信濃へは旧道が良し吊し柿 内村恭子 3点
山国の旧家はこの季節、どこも吊し柿が並んでいます。そんな風情を感じるのがまさに信濃への旅、でしょうか。(市康子)
味のある一句ですね。(蟷螂子)
冬ぬくし診察を待つハムスター 今井温子 3点
年収200万円以下で暮らす、いわゆる貧困層が、わが国には1000万人もいるという。カップ麺だけの食事、ネットカフェでの寝泊まりのフリーター暮らしの挙句、ジョブレス、ホームレスとなって転落してゆく人は増えるばかり。この冬も、山谷や釜が崎では、日雇労働者が凍死しないように越冬支援が行われるのだろうか。その一方で、富者はますます富み、彼らの愛玩するペットには、ペット病院、ペットホテル、ペット美容院まであるという。この幸せなハムスターめ! なにか間違ってはいないか。平成はまるで、綱吉のお犬様の世ではないか! 優しげに見えて、実は鋭い社会批評の一句。(法弘)
獣医の待合室。ハムスターどうしたのかな?と少し心配、が、冬ぬくしで救われる。物語を感じさせてくれる上手なシーンの切り取り方と思いました。(宗一郎)
診察を待つのが犬や猫であったら平凡だが「ハムスター」が面白い。ペットブームもついにここまで、ネズミも大切にされ病院に行く時代になった。(有史)
鍋提げて芋煮の列の過ぎにけり 五十嵐義知 2点
鶴翔ちぬ夜は星座となるために 笹下蟷螂子 2点
ロマン。(洋)
鶴座があるんですね。白く明るく輝くのはそれゆえか。メルヘンチックです。(月英)
行く秋や島の小路の丸ポスト 深谷義紀 2点
秋すだれ瀬戸の港のビストロに 天野小石 2点
「瀬戸内の港町のビストロ」に興味あります。秋すだれからちょっと寂れた町だけど地元で愛されている小さなお店って感じでしょうか(ゆかり)
子牛はや野太き声に牧閉づる 深谷義紀 2点
牧を閉じるために行った放牧地で久しぶりにあった子牛は、身体は小さくてももう声はしっかりしていて、安堵した気持ちがよくわかります。(香誉子)
芋の露吸うてより星あふれけり 天野小石 2点
17の文字が美しく輝いている。(洋)
コスモスの四万十川に透け空に透け 西沢けい子 2点
秋の澄みきった四国の清冽な水と山々。それを大きく抱いている空と海。コスモスがこの上もなくやさしく咲いて・・揺れて水に映り、見上げる青空を占めている様を思いました。(みちほ)
コスモスが四万十川にも空にも透けていると見た作者は自然の雄大さを感じ取ったところ発想が面白い。(芳彦)
水底を覗く一人は秋遍路 矢上とう子 2点
「水底を覗きて去りぬ秋遍路」では?(朗人)
底が見える水の清清しさとお遍路さんの爽やかさとはよくマッチしている。(興智)
弟に父の鼻筋今年酒 松崎邦子 2点
秋の夜兄弟で新酒を酌む。弟に多分亡き父の面影を見ている。しかし、ご本人も同じ鼻筋をしているのではないかと想像をかきたてられる。(保一)
「弟」ということはこの作者は「兄」か「姉」の立場の方ですね。この句だけではどちらともとれますが、私は作者は「姉」なのではないかと思いました。それも長女。父のことが大好きだった娘が、父に似てきた弟の顔を見ながら、お酒の好きだった父を偲んでいる。ついでに言うなら、姉はかねがね弟を頼りなく思っていたけれど、父に似てきた弟に、かつては感じなかった頼もしさを感じつつあり、それが自分でも意外でもあり、また反面内心は嬉しくも思っている。しかし姉のプライドとして弟にはそんな本音は絶対言わない。 ・・・そんな光景を思い浮かべました。(大恭子)
いちやうに土偶丸顔富有柿 石川由紀子 1点
「いちやうに」が説明的過ぎ。(朗人)
土偶の丸顔と古代より日本人と共にある柿の取り合わせからほのぼのと温かいものが感じられます。(明)
時雨傘業平橋にすれ違ふ 今井温子 1点
「すれ違ふ」が業平橋につき過ぎかも。(朗人)
すれ違う傘はお互いに業平がさしそうな粋な傘。(たける)
小鳥来る泣く子に祖母のカンロ飴 瀬戸口靖代 1点
無題てふ絵画の前に風邪心地 芥ゆかり 1点
歯車止まる晩秋のオルゴール 室 明 1点
バラスト水落とし埠頭の秋夕焼 内村恭子 1点
荷揚げを終えた大型船がバランスを保っていた水を落して、全ての仕事を終えた時、いつの間に空は朱色の夕焼けだった。何かほっとした清清しさを感じさせる句です。(昭信)
瓦斯台を只管磨く文化の日 大庭恭子 1点
佳いが類句がありそう。(朗人)
家事も文化の中。しかも敢えて昔の言い方(漢字)が使われたので、古い文化、伝統文化の継承も大切だと改めて考えさせられました。(興智)
エフェソスの野外劇場秋の風 根岸三恵子 1点
秋の風では平凡になる。よりよいものを。(朗人)
シーズンの終わった劇場の静かな空間を感じます。(市康子)
応仁以後闇五百年地虫鳴く 福永法弘 1点
俳人は色々考えるものと感心していただいた。(紀代)
薬屋の象さんに差す秋日かな 宮下惠美子 1点
地方の都市に行くとまだたまに見かける象さん。少しうらぶれた感じの商店街と秋日がよく合う。(洋)
編み棒に母の膩や石蕗の花 金村眞吾 1点
菊匂ふ螺鈿あえかや腰刀 吉田久子
慎ましや病む身の願ひ流れ星 熊谷かをるこ
秋日和貫之の歌書きてをり 窪田治美
銀河の岸に清盛と朗人師と 金村眞吾
悪人二人とは! (朗人)
カルサンの母の起居や暮の秋 滝澤たける
カルサンとは珍しい。(朗人)
すみのえのかみの落葉を絵筆の子 竹内宗一郎
どうして「住吉の神」と書かないのか。(朗人)
露明かりほのと紅濃き竹とんぼ 永伊予人
金色を鈍く爽籟のサキソフォン 橋本有史
茶を摘んで暮らす男の囲炉裏かな 日原 傳
須佐之男の山の際に立つ秋の雲 脇本眞樹
秋の雲はやや平凡か。もっと須佐之男らしきものを。(朗人)
赤のまま子の靴ひとつ落ちてをり 朱 月英
合掌の股をくぐりぬ秋の蛇 金村眞吾
本当か?(朗人)
ハロウイーン砂糖楓に隠れつつ 小高久丹子
切り売りの更地に降りて寒雀 日原 傳
菩提樹の実のチョーカーの乙女かな 朱 月英
金輪際泣かぬ女や曼殊沙華 立久井昌子
芋嵐ぐうちょきぱあと遊びけり 大山由美子
雁渡し馬臭の抜けぬ切通し 武藤スエ子
沼に沿ふマラソンコース秋桜 根岸三恵子
神代より踊るは女見る男 福永法弘
旅先より新米送る子の下宿 須田真弓
親心は分かるが、やや平凡か。(朗人)
斉藤茂吉に阿片乞ふ文月冴ゆる 津久井紀代
須佐之男の山の紅葉や栗の酒 脇本眞樹
健やかやシクラメン売る農高生 西野編人
<互選句>
柿すだれ夜が水平に降りてくる 小川 洋 9点
水平に降りるとは? 垂直だと平凡だが。(朗人)
農家の軒先、よくある長閑な景ではなく中七下五の措辞に詩的臨場感を感じました。でも、更に「黒い旗のやうに」と続けたくなってしまう。(宗一郎)
緞帳が下りるようにすとんと釣瓶落しの夜がやってくる。すだれの縦と水平の横、絵的にも面白い句です(ゆかり)
水平に降りてくる夜。懐かしい晩秋の夕暮れが見えてきます。(三冬)
不思議なイメージのある句ですが、納得する句です。(輿志子)
まるで正確に測って吊ったかに見える柿すだれ。徐々に暮れていく里のようすが中七でうまく表現されていると思います。(明)
柿すだれを通しての夕景、水平としたところが旨いですね。(けい子)
成程、夜は水平に降りてきて闇になるのかと納得してしまった。柿すだれの斡旋が素晴しい。(月英)
マスクして戦略会議末席に 芥ゆかり 5点
「マスクして」では負け戦。(朗人)
戦略会議!? 大袈裟だけど、会議とはそんなもの?かな。マスク、末席、怪しい雰囲気もあり、想像が広がります。(游)
「マスク」に男の含羞を感じる。共感させられる一句。(義紀)
単に風邪でマスクしてひとを避けて末席に座ったのか、「戦略」があって意図的に風邪を装いマスクして末席についたのか。(清文)
抱きしめてうれしき栗鼠の胡桃かな 小高久丹子 4点
それはそうでしょう。「うれしき」は不用か。(朗人)
擬人法のように思えるが、そうではない。栗鼠はほんとうに嬉しいのだ。すぐに齧るのではあるまい。冬に備えて蓄えておくのだろう。「抱きしめて」が実に麗しい写生だ。(法弘)
大きな胡桃に抱きついた様なほほえましいリスのポーズ、実は一生懸命胡桃を齧る愛らしい姿です。(千映子)
胡桃を大事に抱えている栗鼠の愛くるしい姿が目に浮かぶ。作者のやさしい眼差しも。(睦子)
先生が魔女連れてくるハロウィーン 市川康子 4点
ハロウィーンはそのようなもの。(朗人)
先生と魔女の取り合わせの面白さ目に浮かぶようです。(千映子)
赤い羽根プラネタリウムの受付に 米田清文 3点
「プラネタリウムの受付に」「赤い羽根」という意外性と同時に「さもありなん」と思わせる説得力。勉強になりました。(和弥)
悠久の宇宙やギリシャ神話の世界に浸ろうと行ったプラネタリウムの受付にあった赤い羽根、意外なところに赤い羽根があったという驚きと、一瞬現実に引き戻された気持ちが伝わります。(香誉子)
暗闇では分からなかったが、照明が点り、赤い羽根を発見したのでしょうか。ほほえましい感じがしました。また、赤い色と星座というと蠍座のアンタレス、そして蠍座からは、ともに星座になったとされるオリオン座、と思いが巡りました。(義知)
売れ残る天金の書や文化の日 日原 傳 3点
古書市で古く立派な天金の書が残っている。もっと安直な作りで安い本の方が売れるのは当然だ。昔は書物というと見かけも内容も重厚であった。文化も変っていくのだ。(尚)
源氏物語も漫画で読む時代、文化も変っていくのです。(香誉子)
秋の天鰯も鯖も泳がせて 齊藤昭信 3点
鰯雲、鯖雲があるので分かり過ぎ。(朗人)
たしかに。(晶)
奥の細道の多くの名句は実景を詠ったのではなく人の心象風景を表現した一種のフィクションだと云う説がありますが、さてこの句、爽やかな空に鰯や鯖をおよがせる描写に捨て難い味があり、これこそ、まさに俳諧の妙味ではないでしょうか。(吉久子)
牛蒡掘る肺の奥まで土埃 深谷義紀 3点
白線の明日の空待つ運動会 西沢けい子 3点
それはそう。(朗人)
好天を待つ思いが白線にこもる。(編人)
人気も消えた校庭の主役はきっぱりとした正しい白線 確かに運動会を待っていました。(久丹子)
用意万端で、明日の運動会が待ち遠しくなる句ですね。間違いなく明日は秋の天ですよ。(昭信)
秋冷や竪穴いまも炊き湿り 清水安奈 3点
たしかに、縄文住居跡等を見に行くと昨日までそこで煮炊きしていたように黒ずんで湿った穴がある。なんとなく見ていたが言われてみればその通り。(有史)
作り方が即物でよいと思いました。(清文)
ひらがなになりきつてをる枯薄 橋本和男 2点
晩秋の薄がなよなよと風に揺れている様を平仮名に喩えたところが面白いです。(明)
木洩れ日はスポットライト茸生ふ 須田真弓 2点
スポットライト、それはそう。(朗人)
情景がよく伝ってきます。(蟷螂子)
たがために彫りし羅漢や秋の寺 大山由美子 2点
秋めいた寺の境内の静寂に坐す羅漢。悟りの境地に至った個々の表情は異なり、人の世の喜怒哀楽が石大工によって彫り込まれた。知らぬ間に時は経ち、過去からの贈り物に感謝。(茂喜)
赤すぎる鬼門に吊す唐辛子 市川康子 2点
赤すぎるという鬼門への気遣いがおもしろい。(伊予人)
鬼の子のゆらゆら引けぬ大博打 立久井昌子 2点
視覚的に鬼と大博打で、スワッ大事!と構えるが、よく読んでみると主人公は鬼の子、かわいらしい蓑虫が引くに 引けず何に勝負をかけているのか、大げさに言っているところがほほえましい。(大久子)
大きな勝負に出た男、その視線の先には蓑虫が風に揺れている。まるで勝負の行方を象徴するかのように・・・・ 映画のワンシーンのように、二物衝撃が鮮やか。(義紀)
朝刊の厚く届いて文化の日 芥ゆかり 2点
類句が多い。(朗人)
確かにそうです、色んな特集が挟まって分厚い朝刊。経験しているはずなのに改めて言葉で掬い取ったことのなかった文化の日の確かな景。(宗一郎)
広告も含めてどっさり厚い朝刊が届くと幸せな気分になります。ましてや文化の日です。(内恭子)
UHOを見むと鬼の子顔を出す 今井温子 2点
本当か? うそ見え見え。(朗人)
秋光や金糸銀糸の琴袋 土屋香誉子 2点
秋草の枯れたる風の形かな 内村恭子 2点
秋草や薄が風の形という見方は類句が多い。(朗人)
秋草の枯れた形は風の仕業であった。と解釈しました、写生の良くきいた句だと思います。(輿志子)
童謡は老いて忘れず白秋忌 和佐育子 2点
日当たりの縁側で風呂でいつか口ずさむのは童謡である。某有名人が日本で本当にいい歌は軍歌と童謡だと云ったそうだが、軍歌は要らぬが私の葬送曲は童謡でと思っている。(宏)
水掛不動涙とみえし水のあと 大山由美子 2点
水掛不動に涙の跡があったという作者はそう見た。世の中は不動でも救えないことがあるのだと感じ取ったという気持が出ている。(芳彦)
法善寺横町と云へば織田作之助の「夫婦善哉」や「水掛不動さん」!その昔蝋燭とお線香を上げ苔むした不動さんに「恋の成就」をお祈りした頃が懐かしく、あの、せせこましい路地をほっつき歩いたものです。中七の「なみだにみえし」は作者自身の想い入れなのでしょうか?(吉久子)
陵王の仮面外せば秋の人 西脇はま子 2点
仮面を外したら若い女だったとか、多い。(朗人)
秋晴れや乗り合い電車に異邦人 西田修造 以下1点
この頃よくある光景。平凡。(朗人)
そう詠われると異邦人も大変嬉しいでしょう。(興智)
自然生二癖あるは売れ残る 和佐育子
「売れ残る」は平凡であたりまえ。(朗人)
自然薯ですから一癖くらいは、ま、でも二癖ともなると除けるかな?おもしろい!(游)
一炊の夢ふるさとの花野かな 松村三冬
「ふるさと」と「一炊の夢」はつき過ぎ。(朗人)
短い夢が枯野ではなく、花野であったとは嬉しいことです。しかしやはり夢だった。(保一)
人集る株屋のボード夜叉時雨 福永法弘
今の時勢がよく表現されていると思います。夜叉時雨が妙。(けい子)
見回して穴の前にて尚惑ふ 西沢けい子
本当?(朗人)
穴惑いの季語を展開した。(紀代)
街の子を怖がらせんと通草開く 土屋 尚
どうして怖がるのか。(朗人)
通草が開くのは街の子供を怖がらせるためだった。大きく開いた通草を木の枝を見上げた瞬間に見つけたら、驚きますね。(義知)
果てしなき十一月の道ありぬ 明隅礼子
何故十一月?(朗人)
秋の紅葉の時期が過ぎ、冬の雪景色になる間の十一月。荒涼とした景色が想像されました。(義知)
逝く秋の奈落に君とすれ違ふ 熊谷かをるこ
「奈落」が上手い。(義紀)
紫苑ゆれダム湖の底の白骨樹 大澤久子
黄落や赤子のやうに楽器負ひ 瀬戸口靖代
上野の森の風景を思い出しました。芸術の秋にびったし。(編人)
妹の拗ねて動かぬ七五三 松崎邦子
よくありそうであり、平凡か。(朗人)
盛装の姿も可愛くまた凛々しい七五三 孫というものを持たない私も眼を愉しませて貰っています。被布を着た妹姫が拗ねてしゃがみ込んでいる姿が目前に彷彿とします。(かをるこ)
藷を買ふ若き僧侶の下駄高し 竹内宗一郎
その志高し。(隆宏)
しめ鯖にどの酒合はそ白ワイン 高橋雪子
鯖が好物で食通のあなた、気が向けば自ら三枚におろして塩で締め、ザルにあげ、やがて水を流して、酢で締める。しかもワイン通のあなた、乾杯。私は作らず、食べるのが専門。(茂喜)
邪宗徒の祷りし洞や昼の虫 吉田久子
かつてキリスト教がまだ弾圧の対象とされていた頃、その信者たちが密かに集まって祈りを捧げていた洞窟。今は誰も近寄りもせず、ただ虫が鳴いているのみ。秋の虫の鳴く声は夜のほうが際立つと思いますが、それを「昼の虫」としたことで、却って乾いた哀れさが増し、往時のキリスト教徒の受けた理不尽な迫害をしのばせると思いました。(大恭子)
秋しぐれ別れ路の鳥はばたきぬ 明隅礼子
天高し少し伸びゆく山羊の紐 熊谷佳久子
稲雀群れ飛び立ちて又戻り 下條千映子
それが群雀。(朗人)
曠原をかくも平らに流れ星 橋本有史
アルゼンチンパンパを夜走ったことがあります。もし流れ星が見えたら、この句のようだっただろうと思います。(保一)
摩周湖の湖底に月光届くかや 中西 宏
毛氈に黄瀬戸半筒菊日和 滝澤たける
赤き橋ふたつ渡りて菊師ゆく 明隅礼子
木蓮の風や露風の銀の詩碑 永伊予人
秋の蠅日あたりながら遊びけり 米田清文
悪くないがもう一息。(朗人)
亀聴くや桜紅葉の散りぬるを 滝澤たける
秋では、いくら待っても亀は鳴きません。(朗人)
亀鳴くでなくて聴くとし、散るりぬるをと言ってのけたところ素晴らしい。(晶)
澄む秋の水音に似て鳥のこゑ 三雲繪里子
閃きや吾も素粒子秋の風 胡 興智
素粒子にしては大き過ぎ。(朗人)
木犀の金ふりやまず深大寺 瀬戸口靖代
地より湧く光つよかれ石蕗の花 矢上とう子
石蕗はフキに似て厚くて光沢がある。この光沢が地より湧く光と捉えたところ、発想の非凡さを感ずる。(芳彦)
天高し馬面にして伊達男 小川 洋
「天高し馬」まで言って肩すかしを食わされた感じで楽しい句。伊達男でも美男とは限らない。馬面ではね……。(大久子)
神の鹿主宰の袋食べにけり 岸田 晶
よく観察してましたね。もう一息。(朗人)
宮島の天為同人会での作でしょう。思わず微笑んでしまいました。ユーモア溢れる句です。参加者のみなさんご苦労さまでした。(和男)
ビル谷間朝日貪るまゆみの実 蛭川晶代
小なりと言えど命燃え立つ様を買う。(隆宏)
氷河期のひだにゆれゐる秋の草 大澤久子
<選外句>
真実でなきが真実穴まどひ
どういう意味か不明。(朗人)
肩を組み校歌斉唱晩翠忌
「肩を組む」は古い。(朗人)
コロシアムに似たるや鹿の角伐場
それはそう。(朗人)
自らの棺おけリスト秋高し
リスト、何故? 「おけ」はなぜ仮名か。(朗人)
晩秋や西郷像は薩摩向く
それはそうでしょう。(朗人)
夜半には木犀の金散り別る
「散り別る」とは何が分かれたのか?(朗人)
読書の秋電車誰かが本開き
読書の秋と「本開き」がつき過ぎ。(朗人)
竜田姫夜啼き地蔵に壬生の鉦
神仏の体言が多すぎる。竜田姫を取り替えたら?(朗人)
宇宙人が林檎かじつてゐる夕べ
本当? (朗人)
秋風やキャンパスに干す剣道着
キャンパスはあたりまえ。(朗人)
冬眠をするなら黄瀬戸深筒に
大袈裟な。深筒に入れるか。(朗人)
刈田跡水あれば灯の映りをり
それはそう。(朗人)
月の夜や恋に三段腹要らず
腹が要らないとは?(朗人)
柿干すや宇宙の始め混沌より
それはそうであろう。(朗人)
弱きものその名は男をみなへし
観念的。(朗人)
ことさらに植えぬ野菊の咲きにけり
野菊はことさらに植えぬもの。(朗人)
太り過ぎてランタンとなるかぼちやかな
言い過ぎ、ねらい過ぎ。(朗人)
明治座の千秋楽の夜長かな
悪くないが、もう一歩突っ込んで。(朗人)
綿あめのよふなる虹よ冬の滝
「やうなる」。(朗人)
薄墨を掃いて一面秋の雨
「秋の雨」は惜しい。他の季語を。(朗人)