ネット句会報2014年02月

 

天為インターネット句会2014年2月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<有馬主宰選特選句>
飛鳥野のあを匂ひ立つ薺粥  内藤芳生  (6点)

飛鳥野の美しい春がすぐ底に。(編人)

上五飛鳥野ので格調高い薺粥の句になりましたね(麻実)

季語薺粥が良いですね(貞郎)

新年の清々しさが「飛鳥のあを」の表現に良く表されていると思う。(ユリ子)

 

待春の櫓を軋ませて手漕ぎ舟  石川由紀子  (2点)

 

初雀黄鶴楼の重ね屋根  劉海燕  (2点)

 

時祷書の青き花文字春隣  渡部有紀子  (1点)

時祷書とはキリスト教徒の方々の聖務日課等を書き入れられたもの、祈祷文・賛歌・暦などからなる私的なもの。趣向をこらした青い花文字はどなたの持ち物なのでしょう、春を待つ心情を感じました。(温子)

 

初日記全き冨士とまづ記す  内藤芳生

 

<有馬主宰選入選句>
尖塔の凍てし空よりトッカータ  町野敦子  (3点)

 

歌垣の里に畦焼く焔かな  荒川勢津子  (2点)

歌垣の里は古代に男女が海辺や山に集い歌舞飲食し、豊作を願い、祝う行事、自由な性交が許されたと言われている、畦焼く焔が良い。(貞郎)

万葉時代が思われる句です。(董?)

 

置文に温めてとあり鈴菜粥  永井玲子  (2点)

 

雪しまくベニスに籠る鐘の音  鈴木楓  (2点)

 

門神の秦?凛と礼者来る  董?  (1点)

 

餌台のパン食べこぼす春隣  土屋香誉子

 

霜枯の野の明るさや茜雲  染葉三枝子

 

<互選句>
セーターにあごを埋めて反抗期  安西佐和  (9点)

セーターにあごを埋めて、が、懐かしい自分にも有ったかなぁと、実感出来る句だと思いました。(孝子)

真黒なとっくりのセーターで尖がってた頃思い出します。(玲子)

きらきらした目が上目づかいにもの言いたげな子どもの表情がよくわかる句です。(紀美子)

 

マフラーの中のわたしはアンモナイト  澤田和弥  (6点)

なんとなくクラシックロマン?読み手を遊ばせてくれます。達人の余裕の一句。(仁)

アンモナイトは3億5000万年前の光綾なす海の底でやさしい夢をみつづける。(柳絮)

首に巻いたマフラーの渦をアンモナイトの渦と見た発想の転換が素晴らしい(豊)

なんとなく実感、ぐるぐる巻いてその中に顔を埋めている。アンモナイトの発想が面白い!(文)

 

待春や静脈透ける豚の耳  佐藤武代  (6点)

 

寒満月ドンキホーテの槍の先  江原文  (6点)

幻想の中で武勇を発揮するキホーテはランスを高々と掲げて凱旋する。(柳絮)

寒満月と情熱的なドンキホーテの熱の取り合わせが面白い。視点を槍の先に置いたのが良いと思う。(ユリ子)

 

梅ひとつ開きて禰宜の頬ゆるむ  山下閑生  (6点)

神社の梅がいつ咲くのかを毎年みんなが楽しみにしている。ほっとして禰宜の頬がゆるんだという光景を逃さず捉えた所がすばらしいと思います。(真弓)

 

遠野路や小鉢で啜る濁り酒  芳賀赳夫  (5点)

民話、伝説が名物になるところで酒を啜るとはなんという悠然さでしょう。(劉海燕)

 

海峡の汽笛の響き去年今年  嶋田夏江  (5点)

演歌風の句です。ここの海峡はどこでしょうか。中国の台湾海峡だと、郷愁が漂う素敵な句となります。(董?)

 

寒風を来てエスプレッソの香の中に  森山ユリ子  (5点)

 

雪だるま父となりたる子がつくる  永井潤子  (4点)

父になった喜びを体で現す子とそれを見る父(母)と。雪がうれしい!(美代子)

 

トルソーの並びし館冴返る  熊谷佳久子  (4点)

いくつか並んでいるトルソー。冴返るが効いています。(せつ)

胴体だけの大理石像が幾つも並ぶ大きな館。石の冷たさが強調され、冴返るという季語が生きている。(ユリ子)

 

家系図の途中迷路や春の雪  齋藤みつ子  (4点)

家系図に謎あり!たしかなのは人類史の一点として私が只今存在していること・・。あるいは座五「春の雪」、これって時事を捉えたかなり深刻な句?(仁)

家系図を見ていて春の雪のために迷路になったという大胆かつ春らしい(清文)

 

寒そうめん光集めて乾きけり  今井温子  (4点)

極細の素麺が神々しく干されている景を想像します。(閑生)

 

鳥雲に入る玄海の蒼さかな  西野編人  (4点)

 

初場所や髷も結わぬが押しだせり  加茂智子  (4点)

あっぱれ!初場所に適う一番でした。(繪里子)

 

着膨れてひとり夕餉の母の背  熊谷秀章  (4点)

独り住まいの母の姿が淋しく目に見えるようです。(赳夫)

家族のために毎日家事をしているおかあさん。待ちくたびれて夕飯を食べている様子が、「着膨れて」という季語によって生かされています。(真弓)

 

見得を切る冬将軍や写楽の手  小橋柳絮  (3点

写楽の浮世絵が浮かびます(みつ子)

写楽の手で頂きました。(麻実)

 

玄海の荒ぶを知らぬ海鼠かな  佐藤博子  (3点)

 

石蕗咲くや人も陽の差す方へ向き  岡崎美代子  (3点)

季語が効いている(貞郎)

 

春を待つ絵本の中のショベルカー  染葉三枝子  (3点)

子供の絵本の中のショベルカーとしたところが面白い。子供の気持をショベルカーで表現したところがよい。(芳彦)

 

天帝の意のままに凧揚がりけり  上川美絵  (3点)

連凧が一湾に舞う姿を見て私もこのように感じました。(編人)

青く澄み渡った大空に舞う凧はまことに天の手中にあり 意のままと云う表現が良いと思いました  (温子)

 

無愛想に海鼠そのまま売られけり  上脇立哉  (3点)

いかにも無愛想な(愛想のいい海鼠って?)海鼠と、売り手も無愛想な漁師でしょうか。想像させてくれますね。(美代子)

海鼠が無愛想に売られていると言ったところが面白い。(芳彦)

 

春聯も遊子の帰郷待ちにけり  劉海燕  (2点)

わが国の風俗ですね。助詞の「も」がいいですね。遊子を待つのは春聯だけでなく、両親やうちの一切なども含まれます。でも、作者の着眼点は春聯です。春聯は門や戸などに貼られて、その源は桃符だと思われます。桃の木は中国の伝統文化では、邪気を祓ふ神木だと信仰されます。この桃符は一家の幸福安全を守り、鬼や邪気、ケガレなどを祓えると信じられます。源が桃符の春聯は世の邪気を祓いますが、遊子を待ちます。なんと、暖かい気分でしょう。そして、その色は赤です。赤は中国の色だと思われてます。その色を見ると、母国やふるさとの実家に戻るかなあという気分が溢れてくるのでしょう。さらに、春聯にはお祝いの良き言葉がいっぱい書かれています。春聯の源、効き、色、内容様々な面から、下五の「待ちにけり」と呼応して、中国ならではの暖かい気分を伝えてきました。(董?)

 

つつましく満開といふ冬桜  嶋田夏江  (2点)

静かに咲いている冬桜の姿の表現に引かれました、(編人)

散ることを忘れているかの様な冬桜が心を打ちました  (温子)

 

どこまでもひかるみづうみ初電車  明隅礼子  (2点)

ずっと遠くまで光る湖が新春らしい。(せつ)

正月の明るい日ざしがふさわしい(清文)

 

一の糸締めて師を待つ寒牡丹  早川恵美子  (2点)

事前の準備を整え師を待つ心境が伝わってくる(豊)

 

予定表四角に畳む春隣  澤田和弥  (2点)

春隣が効いています。元気よく今日の予定をこなせる気迫が伝わってきます。四角に畳むのも気合が入っている感じです。(赳夫)

 

古民家の土間の匂へり冬の蜘蛛  阿部旭  (2点)

 

紅白梅谷戸の裾より水の音  原豊  (2点)

 

黒靴をまつすぐ揃へ初稽古  渡部有紀子  (2点)

黒靴を履いて初稽古とはお子さんのピアノとかバイオリンの稽古かと(清文)

 

古民家の梁間五間や土間冷ゆる  阿部旭  (2点)

寒々しい古民家の情景描写梁間五間で伺える(豊)

 

職を得て村を出てゆく雪女郎  熊谷佳久子  (2点)

オフィースは暖房効き過ぎです。行かないで。(玲子)

もうここには帰らないかもしれない、雪が消えたら帰れない、複雑な気持ちが伝わります。(美代子)

 

神官の浄衣眩しき寒詣  根岸三恵子  (2点)

 

積まれ行く白菜遥か筑波山  永井玲子  (2点)

 

注連飾るタブの巨木や無人島  根岸三恵子  (2点)

 

寧日をひとり蔵町だるま市  今村奈緒  (2点)

蔵町を、穏やかな気持ちでだるま市を散策している作者の気持ちも、情景も見えてホットする。(文)

 

年賀状去年の返事も添へてあり  熊谷秀章  (2点)

年を取るとともに疎遠になり、年賀状だけの付き合いになるもの、実感です。(赳夫)

 

買初は雪国へゆく切符かな   明隅礼子  (2点)

 

父の座の夫の座となる掘炬燵  土屋香誉子  (2点)

 

里山の一朶の梅に濁りなし  原豊  (2点)

 

流氷に長き影あり摩天楼  中川手鞠  (2点)

自然と人間の造形物の対比。子細に見れば影は微塵に砕けて軋んでいる。(柳絮)

流氷の影と摩天楼の組み合わせがよい。(芳彦)

 

うつすらと樽の香残る冬菜漬  石川由紀子  (1点)

 

オルフェウスの竪琴に似し春の波  上川美絵  (1点)

 

すずしろの白きお粥の炊き上がり  片山孝子  (1点)

七草粥は私も作りました (みつ子)

 

たたなはる立山連峰寒の月  浅井貞郎  (1点)

 

待春の大和三山古き道  竹田正明  (1点)

古都藤原京を囲む古い道も古都も春を待つような印象でした。歴史的な「古」の雰囲気と春の「新」のイメージを巧みに融合したと思います。 (劉海燕)

 

ヒュッテの窓一面の霜の花  嶋村耕平  (1点)

たいへん美しい句です。(和弥)

 

回廊をめぐりて美術館までの梅  ?米田清文  (1点)

凛とした空気が伝わってきます。(繪里子)

 

芥子雛の精緻きはめし髪飾  西脇はま子  (1点)

 

割烹着研究室に去年今年  小高久丹子  (1点)

 

マフラーの少年にして影尖る  江原文  (1点)

 

寒北斗北辰掬ふ構へして  髙橋紀美子  (1点)

 

一すぢの光の帯や芹生るる  須田真弓  (1点)

 

教会に通ふ手漕ぎ舟(てこぎ)や初日影  松山芳彦  (1点)

 

玉ことば一つおぼゆる初句会  あさだ麻実  (1点)

 

読初に黄なる表紙の処女句集  満井久子  (1点)

新しい年へのいましめ、初心に帰る。(文)

 

元日や分厚き辞書を「あ」の字から  妹尾茂喜  (1点)

 

初春や紅梅殿の能の舞  斉藤輿志子  (1点)

結構日本風の感じがする俳句と思います。とても好きです。(劉海燕)

 

初夢の無何有の郷に遊びけり  妹尾茂喜  (1点)

 

狐火や灯台閉鎖したといふ  芳賀赳夫  (1点)

不思議な句です。惹きつけられる句です。私はこの句を愛します。(和弥)

 

車窓より賢治の里の雪景色  竹田正明  (1点)

 

手を添えて隠すお歯黒雪女  小橋柳絮  (1点)

雪女におんなの色香を感じました。(麻実)

 

春めくやふらりと出たり夫散歩  齋藤みつ子  (1点)

「ふらりと」が、句を引き締めています。(強)

 

寒昴厳父のごとく瞬けり  和田仁  (1点)

厳父は死語に近くなりましたが、厳しく透徹な光が目に浮かびます。(閑生)

 

春を待つ白鳳仏の薄き笑み  内藤繁  (1点)

 

除夜の鐘星輝きし崋山かな  董?  (1点)

 

足裏をあはせ給へる男雛かな  西脇はま子  (1点)

 

卒業日傷痕の机暫し見ゆ  菅野強  (1点)

どんな学校生活を送った生徒でも卒業は感慨深いものがあります。自分で作った傷、友達から作られた傷、全部受け止めて未来へ羽ばたくことを願います。(真弓)

 

大門の梁の墨壷春を曳く  町野敦子  (1点)

 

丁寧に巻癖戻し初暦  柴﨑万里子  (1点)

 

潮の香の微かにしたる寝酒かな  土屋尚  (1点)

ひそやかな物語のありそうな一句。(繪里子)

 

天海の雲波越えて鶴帰る  西野編人  (1点)

想像句かとも思えますが、雄大な一幅の日本画のようです。(閑生)

 

土偶みなをみなの姿竜の玉  満井久子  (1点)

 

冬麗や筆談するも声を出し  和田仁  (1点)

 

白鵬のお尻輝く冬の場所  加茂智子  (1点)

白鵬のお尻から「初日の出」を連想するなんて。お見事。でも基本に忠実な真面目な句ですよね。(仁)

 

病院のドア開くたびに春の雪  熊谷かをるこ  (1点)

 

未来はわるくないよと唄ふ去年今年  三雲繪里子  (1点)

俳句的冒険と明るさと救いがあります。(和弥)

 

幼児のおしゃべり止まぬ春の野辺  中川手鞠  (1点)

「止まらぬ」が楽しさを十分に表現しています。(強)

 

嘶きや遠きに雪崩始まりぬ  須田真弓  (1点)

以上

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