ネット句会報2014年4月

 

天為インターネット句会2014年4月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<有馬主宰選特選句>

桃の花景徳鎮の白磁皿  劉海燕  (2点)

<有馬主宰選入選句>

深々と埴輪の眼孔春の闇  荒木那智子  (5点)

埴輪のくりぬいた丸い目の奥には古代からの深い思いが込められているようです。(紀美子)

埴輪の眼と言う空洞の闇。春の闇とよく呼応していると思います。(ユリ子)

 

早鞆の瀬戸の流れに雛流す  嶋田夏江  (1点)

句意は好きだが、「流れ」が蛇足(伊予人)

 

<互選句>

歯並のよき骸骨や万愚節  西脇はま子  (7点)

さぞや沢山のもっともらしい嘘を、歯並びの良い口元から吐いた人の骸骨なのでしょうね。あるいは、理科室にある骸骨の標本と解釈すると、私たちもそうなのかしら・・・?という疑念がわいてもっと面白い鑑賞が出来そうです。(有紀子)

、、、、、、確かに虫歯の骸骨は、、、、、(美代子)

現代人はやわらかい食事を好み、またよく噛まないので色々な病気になり易いそうです。この骸骨は健康な昔の人の骸骨でしょう。 (紀美子)

 

ドーナツの穴まで食うて春愁ひ  上脇立哉  (6点)

「穴まで食う」これぞ俳句の「俳」! (繁)

春の鬱とうしさに、ついあるはずの無いドーナツの穴まで食べてしまうとは、凄い発想力ですね。(豊)

猫の足音、女のひげ、、、、ドーナッツの穴。アリスの世界?(美代子)

中七の穴まで食うでいただきました。(麻実)

 

告白は桜湯の花開く間に  中川手鞠  (6点)

しおらしい娘さんにお会いしたい  (繁)

きっとすてきなプロポーズができたのでしょう。「開く間に」が効いています。(真弓)

急いては事を仕損じることもありますよ。でも私は好きです(豊)

 

春の蝶追うて湖北の観音路  佐藤博子  (6点)

春の蝶が他の語彙・措辞と佳く響き合っております。春の柔和な輝きや開放感と共に歓喜が伝わって参ります。清新な一句です。(仁)

まるで春の蝶に導かれて琵琶湖の観音参りをしている様子が目に浮かびます。(真弓)

湖北は素晴らしいところです季語春の蝶が効いています(貞郎)

 

嬉しさのこぼれぬように春の道  加茂智子  (5点)

合格か婚約ですか。(編人)

 「春の道」がキーワードできれいな句。(強)

こぼれぬようにが佳い(伊予人)

春は何となく嬉しくなりますね (みつ子)

こぼれぬようにがいいですね、嬉しさをおすそ分けしてもらいました。(夏江)

 

鳥雲に沖まで残る津波跡  關根文彦  (5点)

ああ! 忘れまじ大津波です(奈緒)

 

利休忌の竹筒に挿す藪椿  小橋柳絮  (5点)

茶室の竹筒に挿す薮椿。我が家は陶器の壺です。(編人)

利休忌に着かず離れずの「藪椿」で頂きました。(麻実)

 

犬吠崎の海丸くして鳥帰る  芳賀赳夫  (4点)

海は、丸いということを改めて、認識させてくれました(^_-)-☆(奈緒)

 

残る雪静かに解き枝撥ねる  滝澤たける  (4点)

雪国の春の訪れ、静かな昼下がりの風景ですね(赳夫)

 

女波寄すあとに紅透く桜貝  永伊予人  (4点)

女波と桜貝との取り合わせがよいと思います(貞郎)

光に満ち溢れている穏やかな春の海に静かな女波が打ち寄せ薄紅の桜貝が漂っている。早朝の海岸の散歩でこのような景色に出会え素晴らしい一日だったことでしょう。(紀美子)

 

日の匂ひ水の匂ひの菜飯かな  須田真弓  (4点)

美味しそうですね(貞郎)

 

オフィーリアの髪の流れや水草生ふ  髙橋紀美子  (3点)

髪と水草はつき過ぎ(朗人先生)

悲しみのうちに川で亡くなるオフェーリアですが、季語によって川の水の冷たさが緩和され万物の芽生えに癒しも感じられてきます。ミレイの絵が頭をよぎりました。(博子)

ハムレットの悲劇のヒロイン「オフィーリア」の霊魂の再生を祈願して描かれたジョン・エバレット・ミレイの絵画からの発想か。(柳絮)

テートギャラリーにターナーを観に通い詰めたとき、恍惚の表情の絵に逢いました。遠い昔想いだしました。(小夜子)

 

海原は月の鏡よ蛍烏賊  原豊  (3点)

 

春雷の光射抜くや島一つ  原豊  (3点)

大景が中七でより鮮明に描き切れている。(閑生)

 

単線は海へミモザの花揺らす  石川由紀子  (3点)

海沿いを走る単線列車。窓から見える海と、ミモザの鮮やかな黄色に旅情を誘われる。(ユリ子)

 

仏飯を少し片寄せ蓬餅  今井温子  (3点)

ご主人でしょうか、春が来たよと語りかけているようです(赳夫)

 

約束の片栗の花咲きたれど  荒川勢津子  (3点)

どんな約束をしたのでしょうか。切なさが押し寄せてくる句です。(真弓)

カタクリは、桜の後にこうべを垂れて・・・・何か約束が果たせなかったのでしょうか?(奈緒)

どのような約束をなさったのでしょうか? そしてその方は今?(小夜子)

 

あと一日一日と惜しむ雛納  満井久子  (2点)

 

しろがねの羽州連山鳥帰る  和田仁  (2点)

羽州は出羽の国、斎藤茂吉の生家から出羽三山の高峰月山も望まれます。真白な山々を越える鳥の群れ、幻想的です(赳夫)

 

春暁の上海港の銅鑼の音  森山ユリ子  (2点)

春の上海の気分ですね。(劉海燕)

良き時代の上海の雰囲気を感じさせる佳句。(閑生)

 

闇あはき奈良まちに泛く春の月  山下閑生  (2点)

春の月は奈良をやわらかくしたでしょうか、とても美しい夜です。(劉海燕)

 

下萌えや埴輪の家の透かし穴  荒木那智子  (2点)

透かし穴は焼成効率のためとか。私は冥界への通路だと思っている。冥界からの春兆す。(柳絮)

 

花を待つ心ふくらむ日曜日  石川由紀子  (2点)

サンデーな毎日が日曜日を送る小生でも日曜日は格別です。(強)

桜ほど待たれる花他にありませんよね。(小夜子)

 

鍬の柄の見へ隠れする花菜畑  阿部旭  (2点)

面白い。(芳彦)

 

終わったよ声すがすがし大試験  熊谷秀章  (2点)

お疲れ様と言いたいです(みつ子)

家族の就職試験や入学試験が続いたので、心情が良くわかります。なにはともあれ、お疲れ様でした。(智子)

 

さうですねさくらばかりをみてました  澤田和弥  (2点)

 「そうですね」と徹底した口語俳句はどうでしょうか? (繁)

すべて平仮名で話し言葉のまま五七五。私もこの様に作句してみたいです。(麻実)

 

春の燈や妖怪多き西遊記  董?  (2点)

正に妖怪跋扈の物語。春の妖しさに相応しい(美代子)

 

天平の営み眠る春の野辺  竹田正明  (2点)

眠るが佳い(伊予人)

 

鳥帰る栄転といふ新任地  土田栄一  (2点)

 

草餅や見合話のふたつほど  佐藤武代  (2点)

当世見合いは昭和の良き日を彷彿させますが、結婚後はよい永く絆が強くなるかもしれません。(強)

 

長城は砂漠に埋もれ黄沙舞ふ  内藤繁  (2点)

長城の西の果ては沙漠の中。すごい黄砂でしょうね。(編人)

 

天災も人災もなし弥生尽  佐藤武代  (2点)

 

東京は桜田門の春の雪  内藤芳生  (2点)

東京観光名所桜田門外に春の雪が降り積もる。真っ白い雪に井伊直弼の鮮血がイメージされる。(柳絮)

 

抱かれゐてなほ春月を見る子かな  明隅礼子  (2点)

実に、さり気ない一句。しかし、情感はしっかり担保されております。風情(テースト)のまさった好感句です。(仁)

 

笙の音に散る城あとの桜かな  西野編人  (2点)

 

屋根の上の人と話せり春の昼  明隅礼子  (1点)

寡黙にして存在感あり。これだけで一句をなすとは・・・。これをものにした作者の過不足の無い生活振りが伝わって参ります。(仁)

 

牡丹や奇岩奇石の唐の苑  内藤繁  (1点)

 

街中も薺採るらし匂ひけり  岡崎美代子  (1点)

街中の春を感ずる。(芳彦)

 

恐るべき乳房四対猫の親  渡部有紀子  (1点)

三鬼の本歌取りですね。面白いと思います。(和弥)

 

胸像の宮城道雄や花の雨  西脇はま子  (1点)

 

春の河モーゼル母のセレナーデ  菅野強  (1点)

優しさが感ぜられてよい。(芳彦)

 

蛇出づる星空低き岩砂漠  町野敦子  (1点)

行ったことはないが、何となくオーストラリアの砂漠を連想させる。無機質な大空間と蛇という柔軟な生き物の取り合わせが面白い。(閑生)

 

春キャベツ串カツ食べに行かへんか  佐藤博子  (1点)

いいですね。大らかな句ですね。それとも、照れながらデートのお誘いでしょうか。その後の顛末を伺いたいです。(智子)

 

春寒の上海路地に五香玉子  森山ユリ子  (1点)

 

春光や水くぐる水切りの石  中田秀平  (1点)

水切り石に春光がきらめく。石を投げる少年の姿が、生き生きと目に浮かぶ。(ユリ子)

 

信濃路の春の深雪野風まろし  滝澤たける  (1点)

 

桜の芽ほのと紅さす退職日  山下閑生  (1点)

夢の膨らむ退職日これから花満開の日々が着ます。(豊)

 

如月や淡き緑の安芸小富士  永伊予人  (1点)

 

白梅や遠つ淡海の迷い道  あさだ麻実  (1点)

 

父逝きて娘生まれし桜かな  妹尾茂喜   (1点)

 

蓬餅エプロン母のかをり満つ  菅野強  (1点)

 

野面積む石の隙間のはこべかな  嶋田夏江  (1点)

 

楼閣はふんわりティッシュ春の風邪  小高久丹子  (1点)

一連の流れがユニークです。(和弥)

 

帋雛の無我を語れる立ち姿  松山芳彦  (1点)

 

朧月杜牧の酔ふし杏花村  董?  (1点)

「酔ふし」ではなく「酔ひし」(朗人先生)

 

諍へど愛しきは妻春の雪  熊谷秀章  (1点)

こんな風に言ってもらえたら、妻として、これ以上嬉しいことはありません。夫が帰ってきたら、この句を見せようと思います。(智子)

 

春光や土器の欠片も石ころも  今井温子  (1点)

以上

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