ネット句会報2014年6月

 

天為インターネット句会2014年6月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<対馬康子編集顧問選特選句>

ドーナツの輪を抜けて来し白夜光  西脇はま子  (4点)

夜も太陽が沈まない白夜に静かに朝が訪れる。手にしたドーナツの小さな輪を抜けて薄明の光が届く。海外詠を一歩進めた抽象性が面白い。甘いドーナツの穴を覗けば遠くどこかの異空間につながっているかのようだ。(康子)

発想がよく、創造性がある。(芳彦)

 

生れたてのイヴまでの距離風光る  小橋柳絮  (1点)

イヴはアダムの妻として、彼の肋骨から神が創造したとされる。原罪を背負いながら人類の母であるイヴ。輝く春の風の中に我が娘が生まれた。そこに駆け寄る父としての眩しくも不思議な思いが大胆に表されている。(康子)

<対馬康子編集顧問選入選句>

薫風や乳を飲む子の足あそび  満井久子  (10点)

4ケ月を過ぎる頃から赤ちゃんは好奇心が一層旺盛になり…胸乳を吸いながらも、母親の顔に触ったり、これもまるまると太ったあんよで母の脚を蹴ったり…遊びながらおっぱいを飲みます、健やかなご成長ぶりが微笑ましい(かをるこ)

足でリズムを取りながら夢中で乳を飲む子の様子が伝わってきます、足遊びが良いです(貞郎)

「足あそび」に惹かれました(香誉子)

 

雨雲を四肢に掴みてあめんぼう  町野敦子  (9点)

小さい体でしっかりと空を掴むあめんぼうをみる作者。(せつ)

あり得ないことをありうるかのように詠む。これも俳句の魅力。あめんぼうのひらがな表記に魅力。(繁)

あめんぼうの待機の姿勢が四股を踏んでいるように見えます(赳夫)

雲の動き水の動きあめんぼうの動き見事に表現している。(豊)

「四股に掴みて」の中七が新鮮なひびきです。(貞郎)

 

竹皮を脱ぐ静けさをととのへて  明隅礼子  (4点)

竹皮の脱ぎっぷりは野生味があり、大胆で乱雑。そのような先入観念を払拭するのがこの句である。皮が?れる寸前の太い竹幹のものに動じない姿が美しく描かれている。(繁)

 

粽解く壁に屈原問天図  董?  (3点)

汨羅に身を投げた憂国の士の故事をを思う。(柳絮)

粽は有名な『天問』を書あいた愛国詩人屈原を記念するために作られたものだそうです。この句は季語を文化に繋ぎ、とてもいいと思います。(劉海燕)

 

蓮浮葉この世の雨を珠とせり  早川恵美子  (3点)

大変きれいな句ですね。気持ちも浄土。(美代子)

 

分校の蓋開く机さくらの実  渡部有紀子  (3点)

そう言えばこんな机がありました。さくらも実になって学校に慣れてくるころ。(せつ)

 

麦秋や琥珀の小虫透けて見ゆ  竹田正明  (1点)

観察力の細かさに感じ入りました。(強)

 

昨夜の雨ふふみし蛍袋かな  根岸三恵子

<互選句>

天山に南路北路や夏の月  滝澤たける  (8点)

天山山脈の雄大な景に夏の月が生きている。荒涼とした世界が詠まれている。(ユリ子)

美しい画面が目に浮かびます。(劉海燕)

 

夕顔の咲きし胡同迷路かな  董?  (4点)

夕暮れの胡同を想像して頂きました。(せつ)

急速に近代化していく北京の旧市街から消えていく路地胡堂。まだ残る風情ある迷路に夕顔が咲いている。懐かしさと儚さ。(ユリ子)

夕顔ときたら、源氏物語の夕顔の物語が思い出されます。とても哀れな物語。夕顔で縁を結ぶ源氏と夕顔の女は幻の恋に落ち、夕顔の花がよく枯れる未明で死別します。そういうような意匠が胡同迷路と相俟って、句をいっそう儚く感じられると思います。(劉海燕)

 

梅雨兆す写経に下す筆の先  今井温子  (4点)

 

豆飯の豆を数へてゐる患者  熊谷佳久子  (4点)

患者さんには申し訳ないですが、所在なく豆を数えているところがユーモラスです(香誉子)

 

蔦青葉鉄扉の硬き土蔵かな  安田孝子  (4点)

めったに使わない土蔵でしょう。蔦の生命力も感じます。(赳夫)

 

大漁旗八十八夜の瀬戸の海  土田栄一  (4点)

 

更衣鏡のなかのあねいもと  明隅礼子  (4点)

鏡に映っている姉と妹を見てああ夏になると一昔前の景色いいですね(みつ子)

 

古代魚に太古の紅や青葉潮  内藤繁  (4点)

古代の紅いろに気付かれたおりの感動が伝わって来ました(温子)

 

空の雲遊ばせてゐる代田かな  上川美絵  (4点)

なんと長閑ですがすがしい情景描写だろうか。(豊)

 

牛の曳く大路の分かつ朱夏の古都  渡部有紀子  (4点)

中国か東南アジアの古都の景でしょうか。農業の忙しさが街中にも。(編人)

17文字の詩歌のなかに…単語が多さが語感としては煩く感じたのですが…結局は葵祭の情景に惹かれたのでした、(かをるこ)

 

あぢさゐや切手不足の友の文  佐藤武代  (4点)

お互い気をつけましょう。ハガキは52円、封書は82円ですからね。これでさえ改定は時間の問題。七変化といわれる「あぢさゐ」がなるほどぴったり。(高甫)

大切なお友達の小さな失敗。いいさ、いいさ。でもちょっぴり心配も。(美代子)

大らかな友の頼りにホットします。(強)

 

淋代に出る道細し草いきれ  芳賀赳夫  (3点)

 

白壁に影の生まるる夕桜  安田孝子  (3点)

影に桜優雅ですね (みつ子)

白黒のモノトーンの世界ですね。そして季語夕桜が効いてます。(麻実)

 

神々の山九重に夏兆す  今井温子  (3点)

 

舟虫も砂利取り船も休みなく  安光せつ  (3点)

船虫と砂利取り船の取り合わせが面白い。(豊)

 

蒲の穂を挿して古伊万里白き壺  斉藤輿志子  (3点)

高原の美術館で、素焼きの壺に蒲の穂30-40本が挿してあるのを見て、心動かされたことがある。この句のように白い古伊万里もまた美しいだろう、と思い描いた。(ユリ子)

 

遠浅間空をひろげて鯉幟  森山ユリ子  (3点)

景の大きさで頂きました(麻実)

 

さざ波に白雲ほぐる植田かな  内藤繁  (3点)

苗が白雲をほぐしているのですね。(赳夫)

 

筍(たかむな)や地の底にある黄泉の国  岡崎美代子  (2点)

黄泉の国と言い切ったところが面白いです(夏江)

 

墨を擦る音のみ響く寺薄暑  上川美絵  (2点)

静けさを感じる句ですね(麻実)

 

白亜紀の崖に海鵜の黒地蔵  髙橋紀美子  (2点)

 

東京に高き二搭や昭和の日  松浦泰子  (2点)

発想がよい。(芳彦)

 

地神への礼に始まる田植かな  竹田正明  (2点)

 

村巡るコミュニティバス著莪の花  石川由紀子  (2点)

人里近くどこにでも咲いている著莪の花これまたどこにでもあるコミュニティバスその近さが絶妙です(夏江)

 

石庭の波寄せ返す七変化  原豊  (2点)

必ずしも竜安寺とは限らないが、打ち寄せる波だけでなく返す波を庭の白砂に見たところがよい。まだ雨季前、紫陽花は小ぶりであったかも知れぬ。(高甫)

 

水掛けて尚更青き粽の葉  劉海燕  (2点)

 

若冲の軍鶏の眼光白牡丹  髙橋紀美子  (2点)

若沖の凄味は色彩のコントラスト。日本画の伝統の中で異才を放つ。(柳絮)

軍鶏の鋭い眼、痛いほどの白さなのですね(夏江)

 

若衆の揃いし町のけんか山車  片山孝子  (2点)

 

沙羅の花さらりと散りてなほ咲けり  齋藤みつ子  (2点)

さらりと散り、次から次へと咲けつづけ、いかにも沙羅らしい。(繁)

 

今日ひとつ縫仕事あり緑葉冷  加茂智子  (2点)

 

薫風に曝してゐたる喉仏  和田仁  (2点)

 

夏手套ルーペの先に腑分けの図  町野敦子  (2点)

 

クウィックとスローで躍る熱帯魚  早川恵美子  (2点)

熱帯魚の動きを社交ダンスに例えて詠まれたのが、トテモユニークだと思いました。ダンスをされる方なのですね。(孝子)

 

老鶯に声かけられる瀬戸の島  小高久丹子  (1点)

先日賢島へ行った時夏の鶯が背後で鳴きつずけていて去りがたい思いでした。瀬戸の島で鳴く鶯は素晴らしいでしょうね、是非1度行ってみたいです。(貞郎)

陽の小言聞く耳もたず笹子立つ  原豊  (1点)

 

揚羽蝶紋の衣装や夏芝居  荒木那智子  (1点)

 

幽霊の髪梳く闇夜仏法僧  鈴木楓  (1点)

幽玄な美しさです。(和弥)

 

木苺やパンケーキ焼く夫と焼く  あさだ麻実  (1点)

「焼く」のリフレインが心地良いです。「夫と焼く」というのも微笑ましい。(和弥)

 

万の薔薇咲き満つあした鳩死せり  鈴木楓  (1点)

まるで不条理劇のような一コマです。(和弥)

 

文豪の小さき洋館樟若葉  石川由紀子  (1点)

 

品川の祭提灯点されて  斉藤輿志子  (1点)

 

紐解けば粽の香り団欒日  劉海燕  (1点)

 

湯煙の因幡の渓や河鹿鳴く  西野編人  (1点)

趣あり(芳彦)

 

草を刈る朝の空気を吸いながら  齊藤昭信  (1点)

「気持ちの良い朝に草を刈る」そのことが光る句と思いました。(強)

 

青林檎双掌につつみ見送りぬ  妹尾茂喜  (1点)

何を見送ったのか、物語を感じます。(美代子)

 

青葉風頬に付きたる飯の粒  安藤小夜子  (1点)

 

青葉闇三囲神社の木歩句碑  滝澤たける  (1点)

 

青き踏む風の種山ケ原かな  芳賀赳夫  (1点)

 

新緑や道ゆるやかにカーブして  土屋香誉子  (1点)

 

狩人のサバンナ駈ける裸足かな  阿部旭  (1点)

アフリカに今も裸足で狩りをする原住民。いいところに目をつけられましたね。(編人)

 

若葉風入り来る朝のレストラン  土屋尚  (1点)

 

護摩修す法鼓ここまで明易し  柴﨑万里子  (1点)

 

五十年ぶりの秘仏や竹の秋  安光せつ  (1点)

いま見ておかないと、まず次はないかも。「御開帳」だと季重なりになってしまうので、お寺をイメージさせる「竹の秋」はきわめて賢明な斡旋。(高甫)

 

銀皿に酸いうす陰り花柘榴  關根文彦  (1点)

 

玉詰んで窓を開ければ麦の秋  伊藤高甫  (1点)

 

海べりの灯蛾乱舞の無人駅  齊藤昭信  (1点)

そうでした…3.11の大津波で流されてしまった、三陸沿岸を走る大船渡線の夏の夜の情景も…まさにこの句の通りでした(かをるこ)

 

花嫁のドレスを捲る大南風  熊谷かをるこ  (1点)

 

夏足袋や護摩木捧げて回廊を  柴﨑万里子  (1点)

梅雨の晴れ間に適塾を訪ねた日を思い起こしました(温子)

 

ペーロン漕ぐ皆故郷へ帰りたく  武藤スエ子  (1点)

 

デュフィの風のさざめきヨットの帆  小橋柳絮  (1点)

 

ザビエルの上陸地とふ聖五月  嶋田夏江  (1点)

薩摩半島坊津に上陸したザビエルはこの美しい国を聖母マリアに捧げた。(柳絮)

 

ケーキ買ふ三日遅れの母の日を  岡崎美代子  (1点)

 

くわばらと祖母と唱えし大夕立  安藤小夜子  (1点)

 

ガジュマルに羽衣ふわり花海桐  佐藤博子  (1点)

沖縄の景か。中七に引かれました。(編人)

以上

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