ネット句会報2014年8月

 

天為インターネット句会2014年8月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

<対馬康子編集顧問選特選句>

よろこびのあり噴水に来たりけり  荒木那智子 (2点)

人生の大きい歓びがあった。そのうれしさを噛み締めるために、噴水にやって来た。天に伸び、そして勢いよく落ちる噴水の水を見てよろこびは一層大きくなる。水の動きと心の動きの共振が面白い。(康子)

噴水の上の青空まで見えてくるような明るさを感じます。(明)

噴水が高く勢いよく揚がるような踊るような大きな喜びだったのでしょうね。若さが溢れています。(小夜子)

 

橋挟み競うてをりぬ盆踊り  柴﨑万里子  (2点)

橋を渡れば違う町や村なのであろう。賑やかさを競っているかのように盆踊りが行われている。川を挟んで伝わる音やひかり。人々に根付いた盆踊りの一場面の、やや切ないさがよい。(康子)

<対馬康子編集顧問選入選句>

諦めのつきたる胡瓜から曲がる  和田仁  (8点)

気づいたら真直ぐな胡瓜しか店頭に並ばなくなった。人の言葉に素直になれない胡瓜もいるのですね 。(繁)

あはは~です。よくぞまぁ、胡瓜の気持ちを!(美代子)

そうかもしれない。諦めないようにします。(せつ)

なるほどと思いました。私のことを指摘された思いです。(赳夫)

 

戦争が顔を出したる豆の飯  芳賀赳夫  (5点)

八月は戦争を想う月、枝豆を剥いて緑の美しい豆ご飯をいただくとき、何かしら戦争に思いをはせてしまいます。戦争のない世界平和を願わずにはいられません。(紀美子)

 

楊貴妃の紫玉の笛や星涼し  董?  (4点)

 

青空をがぶりと西瓜食らひけり  内藤芳生  (3点)

おいしそうですね(チヅ子)

「がぶりと」が青空と西瓜の両方にかかって、気持ちの良い句になっていると思います。(明)

 

十薬の風入る部屋の真昼かな  片山孝子  (2点)

かつての社宅を懐かしく思い出しました(チヅ子)

真昼に冷房無しの部屋で生活できる贅沢。羨ましいです。(小夜子)

 

月影といふ名の実梅太りけり  明隅礼子  (1点)

 

清張の張り込み斯くや西日濃く  上脇立哉  (1点)

 

俳人の長き影置く大夕焼け  上川美絵  (1点)

素晴らしい句が出来そうな気がします。影置くが良い (赳夫)

 

韓の使の泊のあとや木槿咲く  西野編人

 

清水涌く四神憤怒の形なせる  小野恭子

 

白南風の吹き抜けてゆく真夜の家  土屋尚

 

縄文の水焔火焔夏闌ける  石川由紀子

<互選句>

長城の西へ西へと蟻の列  早川恵美子  (7点)

蟻の列はさて何を運んでいるのか。いろいろ想像。(編人)

西へ西へと、中七が響く。(董?)

季語蟻の列が効いています。(貞郎)

 

土間涼し匁秤のらふそく屋  安光せつ  (7点)

昔こんなお店ありましたね。(豊)

郷愁を感じる風景です(夏江)

 

かき回す手にやわらかき日向水  武藤スエ子  (6点)

これからプール遊びが始まるのでしょうか 楽しそうなお子様の声が聞こえてきます。(温子)

やわらかきに日向水の感じがよくでていると思います(夏江)

水のぬるさまで伝わってくるようで、迷わず取らせていただきました。電気がなかった時代、日中温めた水で、洗濯や行水をしたとこのこと。気付けば、日中もクーラー、電灯、テレビと電気尽くしの生活に、傲然となってしまいます。もう少し、この自然のエネルギーを利用できないかなと思っています。(智子)

 

色深き古代ガラスや流れ星  竹田正明  (6点)

古代ガラスの神秘的な色合いにここまで来た旅を思いますね、シルクロードから来たのでしょうか?流れ星、の季語がぴったりと思いました。(美代子)

 

杉戸絵の鯉の跳ねゐる炎暑かな  内藤繁  (5点)

秋田は今、竿燈祭真っ盛り。お天気も人間も灼熱そのもの。威勢のいい鯉の清涼感をもって大若も小若もパワー全開。(仁)

 

ハンモックアランドロンのままで寝る  小野恭子  (4点)

アランドロンもそのファンも既に老体。気障も疲れます。しかし生涯、伊達もまた佳し。(仁)

夢の中で「ジュテーム」と囁いている?(博子)

 

炎昼や砂踏めば砂声あぐる  今井温子  (4点)

炎天下に鳴き砂浜を歩けばこんな感じか(閑生)

 

星月夜妻は私でよかつたの  佐藤武代  (4点)

ご安心を!男はいつも口下手ですよ。もし「もちろんだとも君の他に誰もいないさ!」など言ったらご用心。(繁)

内の女房もこんなこと言って呉れないかな!(芳彦)

思わず笑ってしまいました。他の皆さまは、どのように感じられたのでしょうか。(智子)

 

西瓜割る心の奥の罪と罰  佐藤武代  (4点)

 

夏足袋の足の形を恥ぢてをり  岡崎美代子  (3点)

外反母趾かしびれでしょうか?(チヅ子)

夏足袋の白はすっきりと凛としていますが、疲れて帰り、足袋を脱ぐと形が崩れだらしないように見えたのでしょうか。ご自分の気持ちをしゃっきりさせようとしていらっしゃるようです。(紀美子)

 

銀やんま曲がり曲がりてもとの空  土屋香誉子  (3点)

 

青葉風子規の題字の創刊号  髙橋紀美子  (3点)

 

虹立てば風蒼茫と五丈原  齊藤昭信  (3点)

漢語の蒼茫が五丈原にぴったり。(董?)

三国志を彷彿とさせる美しい句だと思いました。(博子)

 

巴里祭や赤いブーツに雨合羽  染葉三枝子  (3点)

前にこんな衣装でパリ祭の時歌っている歌手がいたと思いました (みつ子)

巴里祭に赤いブーツと恐らく赤い雨合羽だと思うがそう連想させるところがよい。(芳彦)

 

良き記憶あまたありけり盂蘭盆会  安藤小夜子  (3点)

身内には愛憎交々。それでも思い返せばいい記憶ばかりが甦る、盂蘭盆会です。(美代子)

 

どぜう鍋 浮沈幾たびこの生涯  熊谷かをるこ  (2点)

泥鰌鍋には人生を考えさせる何かがあるのかも(閑生)

 

とりとめもなき夢ばかり明易き  芳賀赳夫  (2点)

 

はまおもと島中に網干されけり  明隅礼子  (2点)

温暖な気候の穏やかな漁村の風景が目に浮かびます。(小夜子)

 

磯蟹の出ては隠れて日は暮るる  土田栄一  (2点)

 

炎天や吾を睨みし木乃伊仏  上川美絵  (2点)

あまり暑いので当たり処がなく木乃伊仏に睨らまれて仕舞った。というところが面白い。(芳彦)

 

はたた神0対8を逆転す  妹尾茂喜  (2点)

雷雨で中断している間に流れが変わり、再開してみれば逆転勝利、良くあることです、人生も。(貞郎)

 

夏掛の膨らみクレオパトラかも  永井玲子  (2点)

君はもしやシーザー?鼻だけが高かったのではないのですね。(繁)

 

丸まりて浅き夢見し三尺寝  ?中川手鞠  (2点)

中七と上五と下五との取り合わせの諧謔が楽しいです。(明)

韻の良さで頂きました。(麻実)

 

帰省子のたくましくなり声変り  齋藤みつ子  (2点)

唐代の詩人・賀知章に『回郷偶書』という詩がある。「少小家を離れ老大にして回る、鄕音改まる無く鬢毛摧る。兒童相い見て相い識らず,笑ひて問う 客何れの處從り來る」とある。ちょうど最近唐木順三氏『鳥と名と』いう文章を読んだ。町名地番の名の変更と数字化が故郷喪失をもたらすという。現代人の心の故郷は何処にあるのだろうと、この句から私の思考はいろいろの方向へ気ままに飛んだ。郷愁があふれる句だと思う。(董?)

我が家の長男もそうでした、かわいい子には旅させろ、ですね。(貞郎)

 

祇園会の神楽の大蛇見得を切り  佐藤博子  (2点)

 

空襲を逃れし山の百合の花  荒川勢津子  (2点)

 

山滴る高原駅に足湯かな  根岸三恵子  (2点)

緑の滴る高原の駅その上足湯とは。至福ですねえ。 (せつ)

 

樹木医の耳傾けて酷暑聞く  町野敦子  (2点)

自然教室で、樹木医の方のお話を聞く機会がありました。長く、林業経営に携わり、南アルプスの森林についての知識は、この方の右に出る人はいないとのことでしたが、温厚で辛抱強く、優しい方でした。この句に詠まれた方も、きっとそのような方なのだろうと思いました。(智子)

樹木医が樹肌に耳をつけて木の様子を計っているのは「こんなに暑いけれど大丈夫か」と話しかけているようですね。話の出来ない木の様子を案じている様子が伝わってきます。(紀美子)

 

宵山のタペストリーの大き星  永井玲子  (2点)

世界中の専門家が探し求めていた幻のタペストリーが,京都の山鉾に使われていたとは!(手鞠)

 

火酒芳しスウィングいまだ熱帯夜  澤田和弥  (2点)

暑苦しい熱帯夜の過ごし方、中七にやりきれなさが重なる(閑生)

 

風葬の風に戦ぎし吾亦紅  鈴木楓  (2点)

 

墨絵より松風の音梅雨明くる  荒木那智子  (2点)

 

しろじろと灼くる甍や飛鳥寺  山下閑生  (1点)

 

スイレンの頑なに閉づ夕べかな  窪田治美  (1点)

 

ひまわりをはがきはみ出し描き送る  齋藤みつ子  (1点)

 

烏瓜の花の咲きそむ大暑の夜  土屋尚  (1点)

 

餓鬼大将息止め掴む毛虫かな  齊藤昭信  (1点)

意外性が強調されている描写で面白い。(豊)

 

解釈の広義狭義や道をしへ  あさだ麻実  (1点)

 

狭庭にも蝉穴三つ一列に  土田栄一  (1点)

 

向日葵の迷路の波に子等の声  武井悦子  (1点)

 

荒梅雨の河童の淵は瀬のごとく  上脇立哉  (1点)

 

香水壜ラリックの鳥曇りがち  渡部有紀子  (1点)

 

三伏の麻の葉紋の江戸切子  滝澤たける  (1点)

 

若楓学舎の階段薄暗し  渡部有紀子  (1点)

久しぶりの母校でしょうか。若楓の光との対比が効果的です。(和弥)

 

春本を食らふや紙魚の懺悔文字  松山芳彦  (1点)

こうあってほしいと願う作者の観察願望がみえるおもしろい句です。(豊)

 

乗鞍の主峰を仰ぎ夏惜しむ  根岸三恵子  (1点)

 

制服を脱ぎ散らかして熱帯夜  熊谷かをるこ  (1点)

 

星にまみれ涼しき街に書を抱き  關根文彦  (1点)

 

西瓜積みリヤカー北京の朝早し  永井玲子  (1点)

昔の旅で見た風景が今も (編人)

 

青葉映ゆ琵琶湖周航若き詩  菅野強  (1点)

 

草の蔓からみて解けぬ不死男の忌  原豊  (1点)

 

草団扇わざと編み込む赤の糸  劉海燕  (1点)

 

体臭の薄き男のサングラス  西脇はま子  (1点)

 

野薊やしばらく休む畔の道  山本光華  (1点)

 

朝曇りレトロの街の人力車  土田栄一  (1点)

 

吊り橋や万緑の宇宙飛ぶ如く  武井悦子  (1点)

 

吊革の三角形な晩夏かな  西脇はま子  (1点)

この三角形が何か神秘的にすら思います。不思議な存在感が提示されています。(和弥)

 

天井にらあめん冷やす扇風機  妹尾茂喜  (1点)

このあっけらかんとした存在がとてもユーモラスです。(和弥)

 

天使魚のワルツ地下街喫茶店  小橋柳絮  (1点)

ちょっと暗めの地下喫茶。客人も天使魚の気分。人間に固執せず、プライドを捨て、この際、素直に天使魚とお友達になりましょう。(仁)

 

白茄子や故郷を思ふ異邦人  あさだ麻実  (1点)

 

八月の骨の白さや聖日輪  鈴木楓  (1点)

 

飯盒の焦げの匂ひや新樹光  和田仁  (1点)

 

飛鳥野の露踏み訪ひし石舞台  内藤芳生  (1点)

 

風吹けばサリーに微か素足かな  劉海燕  (1点)

 

暮れなずむ犀川合歓の花あかり  山下閑生  (1点)

 

芳一の弾きし琵琶の音釣忍  竹田正明  (1点)

 

幽閉の城見るツアー夏の霧  安藤小夜子  (1点)

 

楊貴妃の胡旋の舞や風涼し  董?  (1点)

私は星涼しの方がよかったような気がします。(編人)

 

流燈やヒロシマの川大洋へ  室明  (1点)

 

留守二日檜扇咲きし名残りあり  岡崎美代子  (1点)

咲いている時に家に居たかったですね (みつ子)

 

凌霄の雨に打たれて染まる路地  阿部旭  (1点)

当地にもこんな路地があります。敷き詰めた花が明るいが、少し寂しい(赳夫)

 

鈴虫の闇へと誘ふ恋心  染葉三枝子  (1点)

以上

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