ネット句会報2015年1月

 

天為インターネット句会2015年1月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

 

<日原傳編集顧問選特選句>
釣銭の笊を提げたる年の市  渡部有紀子  (4点)
年の暮に正月の飾り物や正月に使う雑貨を売る「年の市」。並んだ店のなかにお釣り用の小銭を入れる笊を提げた店があったのである。何を売る店なのであろうか。小銭をやり取りする店。時期限定の商売で繁昌するのであろう。昔ながらの商売を続けている店の感じが「釣銭の笊」を示すことによって伝わってくる(傳)。

年の市ならではの光景。昔は八百屋さん魚屋さんの軒先に伸び縮みする紐のついた深い笊が下がっていました。レジです。丼勘定で、おつとりした時代想い出しました。(小夜子)

 

煤逃げをさせて仕事が捗りぬ  安藤小夜子  (3点)
新年を迎えるための準備として、家の中や外を掃き清める「煤払」。その際に煤から逃れるために病人や老人、子どもが別室に籠ったり、よそに行くことを「煤籠」「煤逃げ」と本来は言ったようだ。近年目にする「煤逃げ」の句は、煤払いに加わるべき成人がその役目を放棄してよそで活動している、その状況を種にした句が多い。また煤逃げを許さぬという切り口から詠んだ句もある。掲句はその上をゆく。煤払いの要員として当てにされていない人物を登場させ、機知の働いた句となった(傳)

夫がいないときの方が正月準備がはかどる時がある。本音ですね。(編人)

 

<日原傳編集顧問選入選句>
折り紙の小さき聖樹や童話館  鈴木楓  (7点)
子どもが作ったものでしょうね。明るい童話館。(編人)

メルヘンと作者の心の温かさを感じさせる句(閑生)

 

クルミアの天使のランプ寒の星  鈴木楓  (2点)
ナイチンゲールの傷病兵巡視のランプは人類の希望の光でもある。(柳絮)

 

天金の厚き聖書や年詰る  根岸三恵子  (2点)

 

鈍色の古沼明けゆく淑気かな  今井温子  (2点)
格調高い淑気にぴったりの古沼でした。(志昴女)

 

せせらぎの他何もなき聖夜かな  加茂智子  (1点)
静謐な聖夜の景、宗教画の世界を感じました。(博子)

 

冬銀河アンドロメダの白き渦  髙橋紀美子  (1点)

 

チェコグラス旅して来たり冬銀河  早川恵美子

 

人消えて風の荒ぶる枯野かな  明隅礼子

 

<互選句>
一湾の小島ふくらむ初日の出  内藤繁  (12点)
光輪で縁取られるたのでしょう。神々しくも美しい風景とみました。(赳夫)

大きな景でありながら中七の観察が細やか(閑生)

 

海底に飽きて鮃の寄り目かな  荒木那智子  (8点)
そうなんですか?海底は飽きるんですね~寄り目で見ると世界が変わって見えますか?(志昴女)

鮃は元々寄り目なんだけれど、砂の中では解らなかった事が益々解らなくなって、寄り目になったのかな?諧謔的で面白い!(文)

 

繭玉や越後湯沢の子守唄  あさだ麻実  (6点)
雪国の様子が繭玉によって美しく感じられる。(せつ)

 

面とれば父かも知れぬなもみはぎ  和田仁  (6点)
なまはげを冷めて見ている吾子かな(たける)

下五の珍しい言葉と句材の面白さがうまく合っている(閑生)

 

聲聞いたあとが寂しい室の花  熊谷かをるこ  (5点)
聲を聞いた後は、無性に寂しいものですね。(片山孝子)

室の花という季語に心惹かれた句でした。(博子)

 

この道は片道切符去年今年  小高久丹子  (4点)

 

寒風をつつむシーツの白展く  江原文  (4点)
発想の逆転は俳句の一つの特徴。風に膨らんだシーツを見て「寒風をつつむ」と言う作者とお話をしたい。夜にはこのシーツから寒風が巻き起こり、眠れぬ一夜になるかもね…(繁)

 

ふにゃふにゃと浅き夢みし炬燵猫  佐藤博子  (3点)
ふにゃふにゃが可愛い猫の居眠りを連想させます。(片山孝子)

色は匂へど散ぬるを我が世誰そ常ならむ~~浅き夢みし酔ひもせず~きっとこんな夢をひらがな、のいろはにほへと~で見ているのでしょうね。(文)

ふにゃふにゃと出てきたのはそういうわけだったのか。あまりいい夢ではなかったろうね~笑。(志昴女)

 

冬囲い終へて夕日を背負いけり  柴﨑万里子  (3点)
一心に冬囲いをして、ふと見ると美しい夕日が輝いていた。(片山孝子)

日の暮れるまでに終えて、やれやれと言ったところでしょうか。(赳夫)

 

人力車師走を乗せて浅草寺  齊藤昭信  (3点)
一目散に走る景色が見えます。師走を乗せるが妙。(赳夫)

 

数へ日や横積みの本縦にする  中村光男  (3点)
本好きな人の新年にあたっての様子が伝わってきました。(博子)

 

丹頂の雲のファスナー開けて来る  町野敦子  (3点)
鶴の飛来する姿を「雲のファスナーを開けてくる」と表現したところが素晴らしい。(貞郎)

丹頂「の」でなく「や」と切れを入れるとすっきりすると思いますが?(豊)

 

冬枯れや鉄扉の硬き子規土蔵  浅井貞郎  (3点)

 

派出所の水呑んでゐる寒鴉  根岸三恵子  (3点)

 

氷河期の雪青ざめて残りけり  佐藤博子  (3点)
氷河時代から見てきたけれど、こんなに暖かい地球になってしまって。おお怖い!(たける)

 

知恵の水焚き火で沸かす郷の宮  西野編人  (2点)
焚き火を囲む郷の人々の睦が感じられる。(せつ)

 

十年が一年の如年の暮  齋藤みつ子  (2点)
十年が一年の如と言い切ったところが良い。(麻実)

 

リヤカーの板に並べて飾り売  安光せつ  (2点)
リヤカー商い今時珍しい?(万)

 

遠近にもの焼く煙峡師走  滝澤たける  (2点)

 

鴨のこゑけぶる淡海に吸い込まれ  山下閑生  (2点)

 

寒牡丹傘の雫に目覚めけり  原豊  (2点)
上野公園の寺にある寒牡丹でしょうか。中七に引かれました。(編人)

 

寒鯉の鰓ゆつくりと闇掴む  町野敦子  (2点)

 

寒柝や天に三日月青くあり  森山ユリ子  (2点)

 

恵方道歩幅合せて君とゆく  内藤繁  (2点)

 

歳晩の日矢射してゐる飛鳥寺  内藤芳生  (2点)
影絵のような美しいシルエット想い浮かびます(小夜子)

 

山眠るゆたかに水を湛えつつ  安光せつ  (2点)

 

自分史のつもりの五年日記買ふ  中村光男  (2点)

 

焼芋の車留まりし気配かな  芳賀赳夫  (2点)
誰か買いに行ったな…。私も行こうかなやめておこうかな…。(たける)

 

飾り羽子純白夜はゲーテ読む  關根文彦  (2点)
愛に生き愛を主題にして生涯詩を詠み続けたゲーテの精神には純白がふさわしい。(柳絮)

 

冬の城紙燭ふたつを片寄せて  西脇はま子  (2点)

 

青女来て枳殻の棘のまろみけり  斎川玲奈  (2点)

 

千鳥てふ青磁香炉や冬座敷  斎川玲奈  (2点)

 

鳥瞰す盛り塩ほどの雪の富士  荒木那智子  (2点)

 

日記帳静かに閉じて年送る  熊谷秀章  (2点)
こんなに心静かな歳送り憧れです。(小夜子)

 

あをあをと星影降れり牡丹鍋  内藤芳生  (1点)

 

モナリザの壁に微笑みジヨーカー引く  永井玲子  (1点)
下五から新たな物語がはじまりそうです。(和弥)

 

レダを待つ白鳥智恵の輪をひらき  小橋柳絮  (1点)

 

一灯の海しらじらと枯木宿  安田孝子  (1点)

 

塩引の黒き眼の色由一の目  髙橋紀美子  (1点)
吊された塩鮭の黒眼が明治洋画の巨人高橋由一の存在の真実をみる慧眼と重なる。(柳絮)

 

屋根叩く里の時雨や雷つれて  片山孝子  (1点)

 

火山灰をかぶる西郷冬ぬくし  満井久子  (1点)

 

回転木馬大人も乗つてクリスマス  西脇はま子  (1点)
大人も勿論子供も楽しいクリスマスの光景。(せつ)

 

ぽっかりと台詞頂く冬至の湯  早川恵美子  (1点)
たぶんぽっかり浮かんだ柚子が、「お疲れさん。ゆっくりして行っておくれやす」と言ってくれたのですね!中七の擬人化が面白い!(文)

 

去年今年慌てふためくシンデレラ  中川手鞠  (1点)
面白い(麻実)

 

冬空やノックの音の絶間なく  佐藤武代  (1点)
何かとても深い不安を感じました。(和弥)

 

固いこと言わずに一つおでんでも  小高久丹子  (1点)

 

黒人の白き掌毛糸編む  小野恭子  (1点)
映画の1シーンを思い浮かべて (万)

 

植ゑられたそこが天地と玉椿  岡崎志昴女  (1点)

 

息止まるハグして見てよシユトーレン  永井玲子  (1点)
「聖菓」の傍題の季語。新季語に挑戦する素敵な君を讃え、祝福を込めて、もちろん…(繁)

 

卒啄の機の熟するや冬深し  妹尾茂喜  (1点)

 

煤逃や川をいくつも越えてゆく  明隅礼子  (1点)
どこまで逃げていくのでしょう(笑)ユーモラスです。(和弥)

 

湯たんぽに橙色を妻使ふ  上脇立哉  (1点)
可愛い奥様ですネ。橙色なら体感温度もより上がることでしょう。(麻実)

 

冬日向選び散歩の車椅子  土屋香誉子  (1点)
ささやかな幸せをかみしめている、この一瞬、いい句ですね。(貞郎)

 

日記買ひ一日一生まづ大書  熊谷秀章  (1点)
日記を買うときの昂揚した気持ち、最初に記す言葉に託す意気込み。ここまでは誰もが抱く。この句の魅力は「一日一生」と詠みとめたところにある(繁)

 

夜神楽や曉闇明くる笛太鼓  原豊  (1点)

 

立山と海を遥かに冬薔薇  片山孝子  (1点)
雄大な日本海の景です、素晴らしい。(貞郎)

 

路地なれば木遣り獅子舞鏡酒  安藤小夜子  (1点)
下町の江戸情緒、私も見たいです。(万)


以上

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