ネット句会報2015年6月

 

天為インターネット句会2015年6月分選句結果 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。

 

<対馬康子編集顧問選特選句>
稚児顔の大関生まれ五月場所     荒川勢津子  (2点)
若いイケメン力士の活躍に引っ張られて、大相撲ブームが再来している。「稚児顔」の強くて若い大関。
いかにも五月場所らしくすがすがしい。(康子)

 

五月闇若き俳人のみ込めり      佐藤武代   (1点)
澤田和弥さん、君はなんと突然に逝ってしまったのでしょう。
修司忌の明るくも寂しい五月の闇が君をのみ込んでしまったのですね。
  「元日のママン僕から洗つてよ」
  「マフラーを形見にもらふだけのこと」
天為の同志として、含羞と青春に充ちた君の作品を忘れません。(康子)

残念な訃報を読みました。本当に才能ある若き俳人を惜しみます。(志昴女)

 

山笑ふそろそろ神が田へ下りる    岡崎志昴女
山の雪形が消え、木々が芽吹く頃、いよいよ田畑の仕事が本格的に始まる。万物自然の神に従って農事を行う里山の喜びが上手く表現されている。(康子)

 

<対馬康子編集顧問選入選句>
みちのくの星の大きな田水曳く    和田 仁  (7点)
田に映る星が見えてくる、大きな景色。(美春)

 

 

ででむしの角に相模の海ひかる    内藤芳生  (5点)
個性的な視座から、心の解放も誘う素敵な情景を創出して下さいました。構図も決まっており、俳味と共に落ち着きさえ感じ取れます。(仁)

小さなものと広大な景の組み合わせがよいと思いました。(博子)

 

羽抜鶏何かと言へば飛び上がる    安西佐和  (5点)

 

ビール飲む草食系で猫舌で      小野恭子  (2点)
だがどっこい、俳句では誰にも負けないと。このリズム感が得難い。(高甫)

 

蛞蝓の跡顔面に微笑仏        松山芳彦  (1点)

 

合歓や読書声なき孔子廟       劉海燕

 

<互選句>
絵手紙に淡き色入れ夏来る       齋藤みつ子  (8点)
「淡き色入れ」が初夏の爽やかさを感じさせる。(閑生)

 

とんぼ玉立夏の空を封じ込め     原  豊  (5点)

 

紫陽花の雨にけぶれる切通し     石川由紀子  (5点)
調べが美しい。鎌倉の景色でしょうか。(ユリ子)

 

水中花自縄自縛をとくやうに     小橋柳絮  (5点)
水中花が大きく広がって行く姿が自縄自縛を解くようだと見た。面白い。(芳彦)

 

星満つる峡の足湯や河鹿笛      西野編人  (5点)
河鹿笛の季語が良いですね。(貞郎)

 

西安の一番星や沙羅の花       西脇はま子  (5点) 
西安では見たことがないが京都の沙羅の花もいいですよ。(みつ子)

一番星と沙羅の花の白さがよく似合う。「西安の星」もイメージを広げる。(ユリ子)

 

青嵐埴輪の馬も嘶けり        内藤 繁  (5点)
足長・足太の馬型埴輪が青嵐のざわめきに蘇り古墳時代へと誘う。(柳絮)

 

臍の緒の拍動抱くみどりの夜     江原 文  (5点) 
臍帯の取れない赤子が腕の中でしっかりと生命の律動を伝えている。まるで拍動を抱いているようだと。省略の効いた、季語斡旋抜群の生命讃歌。(高甫)

命の脈動、みどりの夜が美しい。(美春)

 

ピアフ聴く夜の窓辺の紅き薔薇    鈴木 楓  (4点)
ピアフと薔薇ちょっと棘がきついかなと思うが……しゃがれ声が聞こえてきそう。(みつ子)

シャンソンを聞き、ひとり静かにワイングラスを傾ける部屋、そこには、ピアフの好きな紅い薔薇もあった。羨ましい。(豊)

ピアフの特徴のある巻き舌の発音。「愛の讃歌」をこの巻き舌でからまれたら逃げようもない。窓辺の薔薇が一層燃え立たせてくれる。眠れぬ夜になるかも…(繁)

 

海霧になだるる能登の千枚田     髙橋紀美子  (4点)
白米の千枚田を思い出されました。海へ流れ込んでいく珍しい千枚田ですね。(貞郎)

 

時計草いつも未来を指してをり    明隅礼子  (4点)
時計草は動かない。何時までも未来を指しているようだと。(芳彦)

 

雄叫びをあげる蛙や戯画の夏     伊藤高甫  (4点)

 

ストローに泡の絡まるソーダ水    武藤スエ子  (3点)
よく見ていましたね。で、お相手の話にはしっかりと耳を傾けていたのでしょうね。(繁)

 

紅芍薬の花散るごとく号泣す     中川手鞠  (3点)
こういう風に号泣したい時もありますね。(博子)

 

若葉雨傘さすきみも薄みどり     土田栄一  (3点)
若葉雨の季語が効いています。(貞郎)

 

ほととぎす水嵩増えし山の池     安光せつ  (3点)

 

ほうたるの点滅の間の時流る     嶋田夏江  (2点)

 

夏蝶の白群舞する樹林かな      杉 美春  (2点)
アカシアの花でしょうか。白い花に白い蝶が群れ飛んでいたのを思い出しました。(ユリ子)

 

薫風や女人もすなるボクシング    和田 仁  (2点)
題材が面白い!原始の世より男人は骨格逞しく筋肉量が多く、力が強いとされてきた。女人は子を孕むため内蔵を含む他の素材が丈夫であり、長生きをする。しかし今や何にも,トライする女人がいる。上五の薫風でと、さらりと言った表現が上手い!(文)

 

青空に残雪浮かぶ五月かな      中村光男  (2点)

 

男衆部屋で出を待つ祭足袋      土田栄一  (2点)
出番を待つ男衆に視座をずらし、しかも無駄のない表現で臨場感を醸しております。手練れの技巧的な一句とお見受け致しました。(仁)

面白い!男達のワクワク感が伝わる。声を出すと中七の喉ごしが悪い。しかし情景が良く伝わるので頂いた。(文)

 

踏切のゆつくり上り街薄暑      佐藤武代  (2点)

 

悲しいほど束縛なき身額の花     熊谷かをるこ  (2点)
年金生活の御同輩だろうか。あの束縛された五十代が嘘のようだと。控え目な額の花といい字余り効果といい、いよいよ味わい深い
ものがある。(高甫)

 

武家屋敷生垣の茶の摘み頃に     安光せつ  (2点)

 

暮れ行かば声の透けゆく遠河鹿    原  豊  (2点)

 

房総に潮の高鳴り夏の蝶       妹尾茂喜  (2点)

 

隣家訪ふ声に返事をする薄暑     土屋香誉子  (2点)

 

すれちがふあの香水に振り返る    江原 文  (1点)

 

草つめたきは梅花うつぎの夜の白さ  土屋 尚  (1点)

闇の中に咲く白い花の凛とした冷たさが伝わってくる、詩情を感じる。(美春)

 

ひもすがら鳴く郭公や畑仕事     竹田正明  (1点)

 

一山の洗ひ辣韮地震続く       土屋香誉子  (1点)

 

夏木立古城への道一すじに      安藤小夜子  (1点)

 

花つつじ窓に映して山手線      森山ユリ子  (1点)
見逃しがちな一瞬を、詩人の眼でしっかり捕らえております。表現も簡潔でなかなかの感性です。「山手線」が効いており、日常のふとした詩性を
感受出来ます。(仁)

 

花合歓の羽化うながして櫂の音    小橋柳絮  (1点)

 

蚊遣火や古家の形をワインバー    妹尾茂喜  (1点)

 

魚釣る夾竹桃の倒影に        劉海燕  (1点)

 

峡細く山桜また山桜         岡崎志昴女  (1点)

 

蛍火に屠所の羊は笑み浮べ      松山芳彦  (1点)
蛍になって、闇夜に飛んでゆく羊の笑顔、悲愴感を、思わせる句。(豊)

 

狐兎猿蛙鳥獣戯画に夏兆す      伊藤高甫  (1点)
日本最古の漫画になぞらえて動物が生き生きと動き出す晩春。(柳絮)

 

今日の日を静かに咲きぬ鴨足草    阿部 旭  (1点)

 

山桜西行歌碑にしばし佇つ      浅井貞郎  (1点)

 

山並みやゆすらの赤き酒に酔ふ    髙橋紀美子  (1点)
山並みが見える(ゆすら)桜桃が咲いているその美しさに酔ってしまった。眼に浮かびます。(芳彦)

 

山法師街に咲いても山法師      あさだ麻実  (1点)

 

子燕の伸ぶ頸ワイングラスほど    渡部有紀子  (1点)

 

小面の泣くも笑ふも夏至白夜     荒木那智子  (1点)
日本なら稚内白夜祭。幻想の夜の若き女性は小面を見る如く。(柳絮)

 

少女等は長き足延べ若葉時      佐藤博子  (1点)

 

新樹新樹どこまでいっても新樹かな  中村光男  (1点)
愛犬、愛妻とともに午後のお散歩。実に気分がよい!(繁)

 

厨房の煽るや汗の中華鍋       早川恵美子  (1点)

 

青嵐宇宙を見しや枯山水       武井悦子  (1点)

 

打ち水をして去り難し子規墓前    浅井貞郎  (1点)

 

竹槍にならぬやうにと今年竹     安西佐和  (1点)

 

倒木の土に還らむ苔の花       武藤スエ子  (1点)

 

働いて働きつづけてかたつむり    齋藤みつ子  (1点)
重い殻を背負い、一生懸命家族のために働き続ける姿、何か人生の侘しさを感じさせます。(豊)

 

日に風に緑煌めき五月来る      満井久子  (1点)

 

盤上に知力の夏や名人戦       武井悦子  (1点)

 

美少女の絵画展なり修司の忌     あさだ麻実  (1点)
若い革命家にはシュールでない美少女の絵を手向けたいです。(博子)

 

百足出て我には強き女房あり     上脇立哉  (1点)
思わず苦笑い!我が家も同然、しかるに私は百足如きは捻り潰します。私はぞろお蛇さま。昔アメリカからの友人に~なぜお前は蛇を怖がり、旦那を恐れない!~と言われた事を思いだしました。(文)

 

無敵なる少女のびやか夏薊      杉 美春  (1点)
強くなる一方の女性。少女も薊のような棘を秘めるか。(閑生)

 

夜更かしに慣れて独り居明け易し   熊谷かをるこ  (1点)

 

豌豆の畝のさきなる百観音      西脇はま子  (1点)

 

靑蔦濃しロダンの懊悩坐し錆びる   關根文彦  (1点)


以上

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