天為ネット句会報2016年2月

 

天為ネット句会2016年2月分選句結果

 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<対馬康子編集顧問選特選句>

夕闇に湖国の子どもかいつぶり          明隅礼子   (1点)
 夕暮れも進みだんだん暗くなってきた。まだ月が出ぬつかのまの時間。帰るのも忘れてかいつぶりと遊んで
 いるのだろうか。 琵琶湖を故郷とするしずかな影絵のような「湖国の子ども」が抒情的である。(康子)

 黄昏時の琵琶湖のそばで遊んでいる子供たちの影とカイツブリの取り合わせが詩情豊かで美しいと思います。(明)

奈良の鹿走つてゆきし恵方かな          明隅礼子   
 春日大社の神の使いであるとされる奈良公園の鹿が目の前を走って行った。それがまるで神のお告げのように、
 今年の吉の方角なのだと作者は思った。ホルンを吹くと遠くから鹿が一斉に集まってくる鹿寄せは迫力があるが、
 この句はそれとは違う一頭の鮮烈さが面白い。(康子)

<対馬康子編集顧問選入選句>

春めくや縄跳とある時間割            今井温子   (7点)
 子供達の学校生活の中にも春到来の喜びが感じられることを時間割という日常的なものを使って何気なく表現している。
 上手いと思いました。(光男)

 小学校低学年の子だろうか、時間割に縄跳と書いているのが、いかにも春らしく楽しく、季語とよく合っている(美春)

 小学校の「縄跳」は校庭で各自が一斉に飛ぶ。時にはおおぜいで大縄をくぐり跳ぶ。縄が高く舞いあがるたびに足をあげ、
 声もあがる。子らの歓声が季節の鼓動を呼び、春がもうそこに来ている。(茂喜)

煮こごりや琥珀の中に蟻がいる          中村光男   (3点)
 煮凝りと琥珀の引き合いが面白い!(文)

竜の玉抱へて山は暮れにけり           鈴木 楓   (2点)
 深閑とした仙境にすむ竜の抱く如意宝珠が見えてくる。(柳絮)

 なんと静かな景なんでしょう。(博子)

雪ノ下一丁目一番地雪              あさだ麻実  (2点)
 雪ではさんだ作り方を視覚的に面白いと思った(美春)

水鳥の潜りて孤独ついばめり           江原 文   (1点)
 水鳥は普通群れでいることが多いのですがその中に「孤独」を見ている作者に共鳴します。(明)

二山に積みてどんどを待つばかり         土屋 尚   (1点)

初午や随身門に白きつね             荒木那智子  (1点)
 初午には阿吽の白きつねに会いに行かねば・・。(博子)

春の月つはもの船の渡し跡            妹尾茂喜

白梅の奥に火となり咳込める           關根文彦

お飾りが北風に曲がってばかり居る        岡崎志昴女

本州の西端に来て時雨をり            上脇立哉

<互選句>

日脚伸ぶ座卓一つの子規の部屋          浅井貞郎   (8点)
 日脚が伸びて座卓一つの子規の部屋を照らしている。子規の部屋に日脚が伸びたという所が良い。(芳彦)

 簡素な子規の部屋に春の日差しが差し込んできた、という情景が目に浮かぶようです。(光男)

 子規の人柄がにじみ出ている。(文)

 子規の部屋の質素な佇まいが、日差しが長くなってくることで際立っている。(ユリ子)

 明治21年、正岡升20歳は、向島長命寺境内の桜餅屋月香楼に仮寓、鎌倉で初喀血。本郷真砂町の常磐会寄宿舎に入居。
 22年夏目金之助と会う。5月に喀血、時鳥の句を作る。初めて「子規」と号す。(茂喜)

山風に竹鳴る音や寒四郎             西野編人   (6点)
 山風と竹のざわめき情景にマッチした季語素晴らしいです。(豊)

 寒そうな寒四郎でしまってるなと思いました。(みつ子)

日脚伸ぶムーミン谷の丸太小屋          髙橋紀美子  (6点)
 イメージとしての丸太小屋とムーミン谷のメルヘンの世界が明るく暖かい。(柳絮)

凍蝶や女人高野の石畳              早川恵美子  (5点)
 凍蝶と石畳だれも立ち入れない冷たさを感じました。(豊)

 「凍蝶」と「女人高野」のマッチングが、映画のラストシーンのような耽美な情感を醸して居ります。口誦性にも優れ、
 作者の美意識が素直に読み手に伝わって参ります。(仁)

 季語の「凍蝶」がよく効いていると思います。(光男)

梅開く地球ふんはりふくらんで          齋藤みつ子  (5点)
 地球ふんわりがやっと春が来たように感じられた。(豊)

 梅がひらく心がひらく地球が量感をうしなう。そんな感覚の句。 (柳絮)

 ふんはり春らしい気分になりました(夏江)

雪の原ただひたすらに田沢湖線          武井悦子   (4点)

洪鐘の一打に山の芽吹きかな           内藤 繁   (4点)
 立春を迎え国宝の洪鐘(おおがね)の一打で一気に山が芽吹くとは力強い生命力溢れるいい句ですね。(貞郎)

摺り足の一歩一歩に春きざす           原 豊    (4点)
 能の摺り足は滑るようで上体は微動だにしないのは見事。思わずその一歩一歩に見入ってしまいます。(泰子)

春を待つドレミドレミの幼き手          内藤 繁   (4点)
 聞こえます。たどたどしいピアノの音が・・・(みつ子)

 ドレミドレミに幼子の春を待つ気持ちが集約されていますネ(麻実)

海老蔵のにらみ初春引き寄せる          和田 仁   (3点)
 海老蔵の気迫ある若い表情が初春を引き寄せてくるという表現は、生き生きとして説得力がある。(ユリ子)

泣きべそのピカソの女福笑            小橋柳絮   (3点)
 福笑いの表情をピカソの女ととらえたところが楽しいです。(明)

 ピカソでしかも泣きべそとは大福笑いでした。(小夜子)

大寒やなつかぬ猫の甘え声            佐藤武代   (3点)
 猫の身勝手さがよく分かりました。でも猫のそこが好き・・・・・(麻実)

ジビエ喰む一献の夜の暖炉の火          鈴木 楓   (3点)
 狩猟によって、得た食材に盃をそえて出し、酒を3杯すすめるときの暖炉の心地よいという感じで出ている。(芳彦)

 暖炉の火で焼かれるジビエ料理。情景が見えてきました。(ユリ子)

老いてなほ欲しきは自立春の雲          荒川勢津子  (3点)
 同感です。まだまだ自立してます。(みつ子)

 歳を重ねても自立の道への欲望を捨てきれないことは、何分においても結構なことだと思います。私もこのように
 ありたいと感銘しました。(允孝)

数枚の返信の無く睦月過ぎ            荒川勢津子  (3点)
 私も返信の無かった友人が亡くなっていました、合掌。(貞郎)

 親戚や旧知との交流はおそらく年賀状が主であろう。今年の整理をしてみると数枚に来信がない。高齢、病気、家族の不幸
 など理由はさまざまだろう。電話一本入れて、生の声を聴きたいもの。(茂喜)

 年に一度の便りになってしまった年賀状、齢を重ねると改めて確かめる怖さがあります。(小夜子)

身じろぎて寒鯉ちらと朱をこぼす         森山ユリ子  (3点)
 モノクロの冬景色の中に一瞬見えた朱。美しい映像の世界に惹かれました。(博子)

冬麗や向こう岸ばかり陽が当たる         岡崎志昴女  (2点)
 隣りの芝生はなんとやら、寒い時はよけい羨ましいですね。(小夜子)

山河はや目覚むとして雪解風           竹田正明   (2点)
 今年の冬は暖かく山に雪も降らない日が続きましたが、そんな中、はや雪解けとなって山河を潤している様子が伺え
 感銘いたしました。(允孝)

水鳥の眩しきひかりトロンボーン         西脇はま子  (2点)

俗塵も名利も遠き柚子湯かな           内藤芳生   (2点)
 我が人生も同じく、と思う方も多いのではないでしょうか。(志昴女)

 いいなぁ柚子湯って何もかも忘れてのんびりしたいですよね。(恵美子)

鷽替えて罪滅ぼしをしたつもり          安藤小夜子  (2点)
 小さな罪悪感を少しだけ救ってくれるかも(泰子)

紅絹裏のちらりと覗く初詣            高橋雪子   (2点)
 華やかな着物の裾裏の紅絹。日本の美の点描ですね。(智子)

ホチキスの針の鋭き霜柱             中村光男   (2点)
 ホチキスの尖りを、霜柱の尖りと重ねた、作者の遊び心が憎い!(文)

筆供養草書のやうな煙ぬくし           室 明    (2点)

早春や微塵子の世も華やぎて           室 明    (2点)
 早春の温かい日差しのもと、微塵子の世界も華やかになってきたこの光景は、今冬の温かさを物語った句だと推察
 しました。(允孝)

 暖かくなるとミジンコの動きも活発になる。その「世が華やぐ」ととらえたところが面白い(美春)

関節の逆をとられて越の蟹            松浦泰子   (2点)
 蟹が哀れ。ぎりぎりで大いに笑える諧謔の一句。際どい盛り上がりが伝わって参ります。ムードメイキングに長けた
 作者の優しい配慮が汲み取れます。(仁)

 関節の逆を取る。なるほどと感心しました。(恵美子)

降る雪は育児日記の文字となる          西脇はま子  (2点)
 なんとも言えずあたたかい気持ちになりました。(智子)

三寒の尾をよく回す風見鶏            橋本有史   (2点)

猟犬に無線機つけて放ちけり           土屋 尚   (1点)

みな沖を眺めて高し冬鴎             橋本有史   (1点)

オリオンも昴もともに去年今年          上脇立哉   (1点)
 空にある”去年今年”の星、きれいです(寒い!)。(志昴女)

鳩抱きて少女は逝きぬ冬銀河           中川手鞠   (1点)

鎌倉の鳩と争ふ都鳥               佐藤博子   (1点)

国栖奏古風幄舎に飾り臼             松山芳彦   (1点)

開墾の若木に固きみかんかな           土屋香誉子  (1点)
 情景が、まざまざと目に浮かびます。故郷のみかん山がなつかしく思い出されます。(智子)

夕照の漁場に群るる冬かもめ           後藤允孝   (1点)

棒鱈の硬さ函館の長き夜             高橋雪子   (1点)
 函館の底冷えが伝わって来るようです。(恵美子)

大銀杏の若木に注連や春を待つ          根岸三恵子  (1点)

雪吊りの縄雪空の中に映え            片山孝子   (1点)
 天に向かって力強く立つ雪吊りの姿が浮かんできます。(貞郎)

寒漉の真白きに筆走らせん            武井悦子   (1点)

二人して歩調を合わす恵方道           土田栄一   (1点)
 おのろけでしょうか。お幾つでしょうか。いずれにしてもお仲の好いことは結構なこと。中七「歩調を合わす」にお互いの
 心遣いが凝縮して居ります。(仁)

ウォーリーとなるときめきの初詣         小橋柳絮   (1点)

一月の病床に置く句帳かな            杉 美春   (1点)

皇后の魚釣る絵図や冬ぬくし           西野編人   (1点)
 え~そんな絵図があったのいですか。知らなかった。のどかですね。(志昴女)

冴返るしらじら月の天主堂            佐藤博子   (1点)

枝先の紋付鳥の御慶かな             嶋田夏江   (1点)

草原に牛呼ぶホルン春兆す            妹尾茂喜   (1点)

読初の奪格と知る典禮文             早川恵美子  (1点)

移民らの長き一日鉄凍る             中川手鞠   (1点)

撫牛の頭ぴかぴか初天神             満井久子   (1点)
 北野天神にはそこここに大小の牛が置かれていてどれも頭は撫でられてぴかぴかになってますね。初天神のめでたさが
 よくでていると思います。(泰子)

翡翠や瑠璃の残影冬の川             阿部 旭   (1点)

<以上>

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