天為ネット句会報2016年4月

 

天為インターネット句会2016年4月分選句結果

 (作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<対馬 康子 編集顧問選 特選句>

花の駅膨らんで来る縄電車             原  豊   (6点)
 縄跳びを結んでは電車ごっこをしたなつかしさ。桜が咲く駅につくたびに縄をくぐって子供が加わるのだが、桜という
 ものに象徴的な、人生というものの哀歓がこの句の奥から伝わってくる。(康子)

 花の風景を縄電車の駅になぞらえて秀逸の表現。膨らんで来るの中句で子供たちの和やかな明るい風景を上手く表現。
 (克朗)

 満開の桜の下、縄電車で遊んでいる情景の春の空気感がよくでていると思います。(泰子)

 可愛い景が目に見える。(文)

黒山羊の繋がれてあり花御堂            西脇はま子  (2点)
 誕生したばかりの釈迦像を真ん中に、かわいらしく飾った小さな花御堂。そこに黒い山羊が繋がれている。それだけの
 ことだが、何とも言えぬ不思議さがある。幼稚園か何かで花祭りを祝っており、そこでは山羊が飼われているのか。
 そうしたただ牧歌的現実の景というよりも、私にはこの黒い山羊は非現実な、あたかもサタンの使いのように思える
 のである。それは「繋がれている」ではなく、「あり」という措辞の強さからくる。(康子)

 花御堂と黒い山羊の取り合わせが新鮮。(ユリ子)

<対馬 康子 編集顧問選 入選句>

シーソーの端に初蝶来てとまる           中村光男   (6点)
 小さな子供たちが思い思いに遊んでいる野原のような公園でしょうか。シーソーなどの遊具もあって、蝶も一緒にそっと
 加わっているところをスケッチしたくなります。(明)

龍天にドン・キホーテの槍構へ           早川恵美子  (4点)
 龍天に昇る黄帝の御衣翻す雲行きに立ち向かう妄想の騎士の組み合わせ。(柳絮)

 これって「俳諧文学(?)」、「俳諧アニメ(?)」。文学的動画として、ばっちり視覚に訴えてきます。俳諧ならではの
 表現として、大いに許容。楽しめます。(仁)

義士祭り影の静かに混み合へる           内藤芳生   (3点)

根の国の標新たや蜷の道              早川恵美子  (1点)
 蜷の道が根の国へ通じると表現されたところが良いと思いました。春光にきらきらと照らしだされた蜷の美しい道が
 見えてきます。(明)

叡山に風の日矢さす復活祭             小野恭子    (1点)

鶯は稽古しきりに雨しづか             上脇立哉   (1点)

調律のひねもす飽きしシャボン玉          小野恭子

桜咲く音のぱちんと響きをり            齋藤みつ子  

楽器背に草の朧を進みゆく             妹尾茂喜 

がらんどうの柱松明たばしる火           佐藤博子

<互選句>

子の追ひし見知らぬひとのシャボン玉        明隅礼子   (6点)
 「子がシャボン玉を追う」だけじゃ余りに平凡。しかし、この作者は中七を「見知らぬひとの」と表記。ぐっと俳諧的
 オリジナリティーを表出してみせました。(仁)

 小さい子供の習性が微笑ましく描かれている。(やよひ)

越後路の間口二間の種物屋             あさだ麻実  (5点)
 越後路に間口二間のちんまりとした種物屋があったという。越後路にはこのような種物屋があるのでしょうね。(芳彦)

ささやかな復興支援若布買ふ            嶋田夏江   (5点)
 スーパーで天然若布を見つけた。産地は三陸、すぐに籠に入れる。春五たび、なお復興の途上にある同地に思いをはせ、
 胸に祈る。小さな行為であるが、大勢が行えば大きな力になる。(茂喜)

春満月哈巴那(ハバナ)の白き街照らす       室  明   (4点)
 キューバの首都ハバナの植民地期の白い街並みが春満月に照らされてほうと浮かびあがっている様子が美しいと思います。
 (泰子)

 満月に照らされているハバナの街。旅情を掻き立てられる。(ユリ子)

 メキシコを旅行中、日本のお嬢さん4人が「ハバナへ渡ってダンスを習ってきます。」と楽しげに話してくれました。
 春満月の下、白い街並のどこかで彼女達が踊っている姿をふと想像しました。(博子)

少年はいつも駆足チューリップ           西脇はま子  (4点)
 元気のよい少年が目に浮かぶ。季語のチューリップがいい。(光男)

 「いつも駆足」に惹かれました。童心に戻れるような句です。(博子)

浮雲の芯に成らむと揚雲雀             竹田正明   (4点)
 雲を突き抜けて上がってゆく揚雲雀あり、麗らかな明るい春の風景が眼に浮かぶ。(克朗)

もみくちゃのダリの文字盤花粉症          小橋柳絮   (4点)
 花粉症ともみくちゃが鼻がむずむずしている様が分かります。(みつ子)

 あの文字盤と花粉症の取り合わせが面白いです。鼻がむずむずしてきそうです。(博子)

漉き槽や掬うすだれに花の影            原  豊   (4点)
 紙漉きの簾に花の影が映ったという情景が面白い。(芳彦)

天平の四弦琵琶より春の風             竹田正明   (4点)
 正倉院御物ペルシャに起源を持つ四弦琵琶の螺鈿模様からはじき出される春の風。(柳絮)

 調べが聞こえましたね。(志昴女)

 琵琶の起源はシルクロード、中国を経て日本へ渡ってきたと聞く。天平時代の四弦琵琶は象牙などがふんだんに使われた
 豪華なものであり、それが奏でる音はさぞ優美であったと想像出来る。(やよひ)

 天平、四弦琵琶、春の風と、たおやかな美しい言葉の調和。平和であることの幸せを感じる。(はま子)

恐竜に逢ひに彼岸の上野まで            岡崎志昴女  (4点)
 題材が新鮮です。(芳生)

 お彼岸の日上野まで恐竜に逢いに行く・・・・・彼岸と恐竜付かず離れず面白いですネ(麻実)

標本の和名学名亀鳴けり              荒木那智子  (4点)
 季語の亀鳴けり・・・・・上手く使われましたネ(麻実)

百歳を天寿と定め青き踏む             土田栄一   (3点)
 百歳で天寿と決めず、命ある限り生き続けてください。(允孝)

わが庭の桜に小さな物語              安藤小夜子  (3点)
 桜のエピソードは全国に有りますが我が家の桜にはどんな物語があるのでしょうお聞きしたいですね。(貞郎)

 小さな物語・・・・・どんなお話かしら想像がどんどん膨らみ、頂きました。(麻実)

 誰にでもある家族の歴史の小さなの物語。庭にある桜にも何か大切な思い出があるのでしょう。今年も見事に咲いた
 桜と作者は言葉を交わしているのでしょう。(はま子)

牛刀の錆深くあり花の冷え             江原 文   (3点)

兄の椅子たたまれしまま春の暮           満井久子   (3点)
 兄を思う気持ちが句に出ています。旅立たれたのでしょうか。(允孝)

 亡くなられたのでしょうか、お兄様への思慕が感じられます。(光男)

 身近な人がいなくなった喪失感。いつも愛用していた椅子が使われないまま置かれてある。ふと寂しさを感じてしまう
 春の暮れ。(やよひ)

駄菓子屋の瓶の彩り春休み             江原 文   (3点)

名物の小鯵のたたき真砂女の忌           髙橋紀美子  (3点)

一樹あり花虻集ひ子の集ひ             土屋香誉子  (2点)

雪解晴過去を引き出す糸車             内藤 繁   (2点)
 長い冬を越して春の到来を待ちながら、ひたすら引いてきた糸車ですが、日差しの明るさに思わず過去のあれこれを
 楽しく思い出している情景が浮かびました。(明)

料峭や買物袋にパン一つ              佐藤武代   (2点)
 季語とパン一つがなんか侘しく引き合っている。(文)

まさをなる空突きぬけし桜の芽           高橋雪子   (2点)
 空突き抜けてが春らしいと思います。(みつ子)

 真っ青な空に待ち遠しい春、桜、抜けるような青空が浮かびます。(孝子)

のどけしやヨーデルならばお手の物         和田 仁   (2点)

春光や瀬田の唐橋ボート過ぐ            松浦泰子   (2点)

盃の春三日月を呑み干しぬ             中川手鞠   (2点)
 きれいな句です。(芳生)

四、五本の堅香子ゆるる木陰かな          阿部 旭   (2点)
 万葉集家持のかたかごの歌を思い出します。(泰子)

一声で集ふ半寿の花筵               荒川勢津子  (2点)
 八十一歳のお元気な人たちの姿が目に浮かびます。(光男)

 開花の一声で今では大きなビニールシートを持ってきて場所取りをします。若い人は徹夜で番をします、半寿の花筵が
 効いています。(貞郎)

小面の眉はおぼろでありにけり           武藤スエ子  (2点)
 あの眉は、、、確かに”おぼろ”です!!お見事。(志昴女)

 小面はあどけさなを残した可憐な若い女の面と云う。「おぼろでありにけり」から、けぶる様な眉の美しい女の面差しが
 思い浮かべることが出来る。(はま子)

貝桶の王朝蒔絵雛の宵               髙橋紀美子  (2点)

春光を打ち返したるフォアハンド          和田 仁   (2点)
 陽光を浴びながらのテニス、感銘しました。(允孝)

風光るマオリの村の間歇泉             鈴木 楓   (2点)
 自然の中の素朴なマオリの村を思い浮かべることができます。(ユリ子)

駅裏に大き寺見ゆ梅日和              上脇立哉   (1点)

妻が問ふ独り笑いの春の夢             高澤克朗   (1点)
 ご夫婦の仲睦まじい様子が伺えます。(孝子)

フローラと佐保姫笑みを交はす空          佐藤博子   (1点)
 ローマ神話の花と豊穣の女神と日本神話の春の女神の競演による空模様。(柳絮)

テレビより意味なき笑い万愚節           小高久丹子  (1点)
 詩的抒情はさて置き、時事俳句っぽくて、この諧謔に妙に納得。サービス精神旺盛な五七五として楽しめます。(仁)

買ひし薯負ふ母の夢バラの闇            關根文彦   (1点)

テロ見舞ふ句が記事に出る弥生尽          岡崎志昴女  (1点)
 弥生の月はこれからの新しい希望に満ちた出発点。それにもかかわらず、テロ勃発の悲報が相次ぐ。せめて見舞いて、
 テロ撲滅に共感して。(克朗)

朧夜やワイン微かに発泡す             土屋 尚   (1点)

大学の煉瓦越しなる花あかり            満井久子   (1点)

ナポリタン釦一つを外し春             あさだ麻実  (1点)

どこからか初夏の風来る我が家にも         齋藤みつ子  (1点)
 心地よい初夏の風を感じておられる作者の幸せな様子が浮かびます。(孝子)

余花白し復旧なつたるローカル線          中村光男   (1点)

墨色の鯉揺れやまず西行忌             渡部有紀子  (1点)

猫板に万古茶碗と草の餅              石川由紀子  (1点)
 長火鉢の猫板に万古茶碗と草の餅があるという明治の世が浮かんでくる。我が家に伝わる長火鉢をじっと見てしまった。(芳彦)

春雨や友禅絵師の筆走る              後藤允孝   (1点)

光陰や訪ね来れば花の墓              森山ユリ子  (1点)

春の燭阿弥陀如来の影揺らぎ            後藤允孝   (1点)
 阿弥陀如来の影が御堂でゆらゆらしているのが見えます。(みつ子)

春蘭に谷戸の日差しの早陰る            武藤スエ子  (1点)

初花や湯気のゆたかな朝の粥            内藤 繁   (1点)
 古来、日本人の心をとりこにする桜。ことしも花をつけた庭の樹を見ながら朝粥をいただく。椀をのぼる炊き立ての
 湯気も花の色に染まり、豊かな一日がはじまりそうだ。花と粥との配合が妙。(茂喜)

コックスの声流れゆく春の水            阿部 旭   (1点)

花通草三下り半は女房から             石川由紀子  (1点)
 我が家のアケビの花は雄花ばっかりなんですよ~ひ弱なんだ~(笑)(志昴女)

長らくの空き家の窓に春灯             嶋田夏江   (1点)
 町内にも空きやが増えてきましたが先日一家族が引っ越してきました、若い人の姿が見られるようになって嬉しいです、
 季語「春灯」が大変良いですね。(貞郎)

幹つたふ弥生の朝のひかりかな           片山孝子   (1点)

風光る大和山の辺土匂ふ              松浦泰子   (1点)

野遊びや火口湖見ゆる展望台            根岸三恵子  (1点)
 野遊びは、だれかと連れ立って山野に遊び風と日をあびる楽しみ。日々の苦労は発散し、不満の爆発もおさえられる。
 折しもここは火口湖、蔵王か霧島か。そろって静かな水面を一望している。(茂喜)

カステラに黒文字添へて春の午後          室  明   (1点)

靴空へ蹴上ぐ少年ミモザ咲く            荒川勢津子  (1点)

<以上>

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