天為ネット句会報2017年8月

 

天為インターネット句会2017年8月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<福永法弘同人会会長選 特選句>

引き出しに死海見てきしサングラス       森山ユリ子   (8点)
旅の楽しみは三つある。出発する前にあれこれ計画し手配している時、実際の旅の最中に様々な人や物や事件に出くわす時、そして、旅から帰った後でその旅を懐かしく思い出す時だ。死海を訪れた際、日差しのあまりの眩しさ故に掛けていたサングラス。日本ではする機会がないので、引き出しに仕舞ったままだったのだが、それを久々に目にしたとき、かつての死海への旅を鮮明に思い出したのだ。(法弘)

さ行を上手く使っており、引き出しと死海、サングラスの取り合わせが面白いと思います。(相・恵美子)

サングラスに死海の思い出がたくさん詰まっているのでしょうネ。(麻実)

ホースセラピーとふ任務得し馬洗ふ       室 明   
役に立たなくなった農耕馬も、競技に勝てない競走馬も、末路は哀れだ。処理業者に引き取られ、皮は剥がれ、肉は馬肉にされる。だが、幸いにもこの馬は、病んだ人の心を癒すホースセラピーの職を得て、生きながらえることになった。これまでの感謝と、この先の安堵の気持ちを込めて、馬を洗ってやっているのだ。(法弘)

<福永法弘同人会会長選 入選句>

サイダーの泡跳ね夏目雅子の忌         髙橋紀美子   (7点)
サイダーの光の中に、夏目雅子の笑顔がうかぶ。大女優ではないが、映画誌のベスト10に入った。「瀬戸内少年野球団」の青春群像を忘れない。夏目に〈間断の音なき空に星花火〉の句がある。9月11日逝去、享年27。(茂喜)

若くて美しかった夏目雅子さんはいつまでもそのまま。サイダーのように爽やかな方でしたね。(泰子)

夏目雅子の透明な儚い美しさをサイダーの泡に例えるとは・・・いいですネ(麻実)

白川の瀬音聞こえて鱧の膳           森山ユリ子   (6点)
白川の瀬音聴きながら鱧を味わうなど肖りたい。(芳彦)

おっとりとした京言葉も 聞こえてきそうな一句です。(博子)

塩浜の小屋閉ざされて花南瓜          阿部 旭    (2点)

動かざる三連水車稲の花            嶋田夏江    (2点)
稲の成長のために青田の時期存分に活躍した水車が、今は静かに清らかな稲の花を見つめつつ稲の稔を祈っているようです。(明)

居留地の辻馬車の鈴星涼し           西脇はま子   (1点)

朝霧や賽の川原の風車             原 豊     (1点)

水打つて法隆寺道しづかなる          内藤芳生

バザールの水晶玉に天の川           上脇立哉

冷奴喧嘩腰なる河内弁             今井温子

被災地の野菜販売トマト買ふ          嶋田夏江

<互選句>

甲板に並ぶ白椅子大南風            満井久子    (7点)
海風を全身に受けて進む航海の大景が視覚的に迫って来る感じで印象明確、そして爽快さを感じる句だ。(勘六)

白椅子と対照的に飛沫の上がった青々とした波の景も見えて来て、きれいな力強い句と思います。(相・恵美子)

気持ちの良い句です。空の靑、白い雲、白い椅子、蒼い海~、色、ロケーションまで目に浮かぶ、大南風が効いている。(文)

明珍の火箸も鳴るや風鈴市           中川手鞠    (6点)
明珍の火箸も鳴っていたという風鈴市というところ面白い。(芳彦)

明珍の箸と風鈴がアンサンブルしているようで清々しい一句です(早・恵美子)

あいまいな時間をつなぐ心太          江原 文    (6点)
「あいまいな時間」とは、二人の関係性か、それとも単に手持ち無沙汰なだけの時間なのか。いずれにしても微妙なニュアンスを心太という実態のないような存在で表したのに感心。(勘六)

あいまいな時間というから時間を持て余していたのでしょう。そこで心太を食べ時間を繋いだところが良いと思う。(芳彦)

「二人の関係」「あいまいな時間」。心太という物に照らし面白い表現と思う(ユリ子)

遠雷やざらりと温き猫の舌           石川由紀子   (5点)
ざらり、が効いてますね。如何にも猫の舌は”ざらり”!!(志昴女)

猫の舌のあのざらりとした感じが、遠雷の見えない感覚を感じる触覚の感じ、心象風景と重なる(文)

遠雷と猫の舌の取り合わせが新鮮です。不安な気持ちの時に猫に毛づくろいしてもらうのも安らぐことでしょう。(泰子)

海の日や古地図に探す蝦夷湊          竹田正明    (5点)

噴水の影柔らかに伸びちぢみ          小野恭子    (4点)
確かに噴水の影は伸び縮みするなあと教えていただいた句(柳匠)

もも組の一団遅れ夏帽子            佐藤博子    (4点)
もも組さんを引率されている汗だくの先生、すれ違った作者の感謝の意が感じられます。(温子)

もも組という具体名から小さな子供たちの姿が浮かぶようです。(柳匠)

夢殿へ供物ささげて蟻の列           今井温子    (4点)
蟻の列を、救世観音を拝したい敬虔な信者と見立てたのが素敵です。(博子)

夢の淵にゐて夏蝶の真つ平ら          明隅礼子    (3点)
幻想的な句として魅かれました。(律子)

静けさを感じました。(博子)

山百合の白をおのれの矜持とす         鹿目勘六    (3点)

二上山の雄岳へ渡る黒揚羽           松浦泰子    (3点)
そうですか。二上山へ、雄岳へ行くのですか、クロアゲハさん。(志昴女)

さまよい出た大津皇子の魂が舞い戻ってきたのでしょうか、、、と勝手な想像を致しました。(明)

遠雷や十年前の悔いひとつ           齋藤みつ子   (3点)
悔いているのは何だろう?遠くに聞こえる雷の音のように時々思い出されるのだろうか、などと想像を膨らませてくれる句でした。(律子)

甲虫帽子に入れて帰りけり           中村光男    (3点)
子供が公園で甲虫を思いがけず捕まえて帽子に入れて意気揚々と帰って来た。子供の興奮と喜びが伝わって来る。(勘六)

白毫のひかりを放ち夕蛍            西脇はま子   (3点)

団子屋はモルタル造り夏燕           荒木那智子   (3点)
モルタル造りにも燕は住むのでしょうか。団子屋との取り合わせ楽しい感じがある。(ユリ子)

波打つも少し重たし稲の花           岩川富江    (2点)
中七の「少し重たし」と季語「稲の花」が相まって良い句になりました。(貞郎)

青々とした稲が夏の風を受けて波打っている様子、その稲が収穫に向かい少しづつ実ってきている様子がうかがえます。( 律子 )

雑兵の動く闇夜や舟食虫            中村光男    (2点)
舟虫を雑兵に見たてたところが上手です。(早・恵美子)

闇にまぎれて動く雑兵はぞわぞわと一斉に動く舟食虫のよう・・少し物悲しいですね。(泰子)

木曽晩夏雲耀へる芭蕉句碑           内藤芳生    (2点)

未完なる向日葵畑の大迷路           小野恭子    (2点)
背丈より高い向日葵畑の中で作者は迷い子になったのでしょうか面白い句です。(貞郎)

鞄の紐肩にくひ込む暑さかな          相沢恵美子   (2点)

それぞれの正午昭和の残暑かな         安藤小夜子   (2点)
8月15日。日本各地で正午の時報にあわせて第二次世界大戦犠牲者への黙祷が行われる。310万人の犠牲者とその家族・親族・知人の悲しみを分かつ、戦後72年目の祈り。(茂喜)

サ行のリズムに合わせてそれぞれの残暑を感じました。(麻実)

氷塊漂流森林砂漠噫炎天            妹尾茂喜    (2点)
危機的状況にある我らが「水の星」をすべて漢字で表現なさっていることに感服しました。(明)

白南風に乗り出帆の銅鑼の音          満井久子    (2点)
海王丸か日本丸かいずれにしてもメインマスト45メートルの日本が誇る世界最大級の帆船は「太平洋の白鳥」と呼ばれ今まさに出港しようとしている、白南風が効いています。(貞郎)

歴史を感じさせる一句です(早・恵美子)

優曇華や心の奥にある不安           佐藤武代    (2点)
なんかわかるような気がします(みつ子)

言い表せぬ何かしらの”不安”を白い優曇華が示します。(志昴女)

二人目を生む教え子に夏見舞          土屋香誉子   (2点)
夏見舞いが二人目の子供さんへのものだというのが大変面白い。(柳匠)

苧殻箸水子の膳にそっと置き          佐藤武代    (1点)
最短の生涯を閉じたいのちへ、芋茎の供養をする。芋茎は古い血を下ろすと言われ、産後料理によく使われた。東京・両国の回向院には、江戸時代から胎児などの死者を祀る塚がある。(茂喜)

水平線溶けゆくバルコンティータイム      小高久丹子   (1点)

万緑や高野山への町石道            荒木那智子   (1点)

大花火あの頃父母も兄もゐて          安藤小夜子   (1点)
毎年訪れる花火大会、とても共感を覚える句です。(孝子)

香水の残り香ひろふ朝かな           佐藤律子    (1点)

山粧ふ猿も地獄の湯を使ひ           早川恵美子   (1点)

歳時記の著き朱線や青嵐            和田 仁    (1点)

パリ祭のテロの記憶のまた新た         岡崎志昴女   (1点)

紅をさす一夜すずけの新生姜          阿部 旭    (1点)
新生姜の酢漬け、美しいピンク色を紅をさすと表現されました。(孝子)

逝く秋や子規と鼠骨の六畳間          浅井貞郎    (1点)
毎日の様に子規の病床に見舞い子規の死後も、遺族を見守り遺品の保存に尽力した鼠骨、子規も一番信頼していた。その二人が過ごした六畳間、逝く秋の季語が絶妙!(文)

枯山水月白に浮く石の島            原 豊     (1点)

高層の窓辺に寄りて花火かな          岩川富江    (1点)
花火の大きな音にハッとして窓辺に寄って見る気持ちが良く分かります。今時かなぁ・・・と。(孝子)

鮎釣りや山影に染む相模川           荒川勢津子   (1点)
山の緑色に染まった相模川で鮎を釣っている。きれいな景ですね。(相・恵美子)

同窓会こぞつて頼む氷水            瀬尾柳匠    (1点)

抽斗に千枚通し子規忌かな           浅井貞郎    (1点)

揺れてゐるこころ夜店の万華鏡         明隅礼子    (1点)
万華鏡のきれいな揺れ心もきれいなんでしょうね(みつ子)

夏の昼菩薩のそばの雨やどり          佐藤律子    (1点)
菩薩に守られているようですね(みつ子)

梅雨上る身を舐めて猫月を浴び         關根文彦    (1点)

樹々若くグランドゼロに驟雨かな        武井悦子    (1点)
グランドゼロには行ったことはないのですが、「人類の忌わしい絶望の想い」を払拭するように、若々しい樹木の成長の様子が想像できてよいと思いました。(ユリ子)

朝涼やチコリの先のうすみどり         土屋 尚    (1点)

鰐口の音に始まる白雨かな           竹田正明    (1点)

盆棚に草原の花遠嶺星             松浦泰子    (1点)

頬に風傘寿の贅沢寝茣蓙かな          片山孝子    (1点)

老を啼く夏うぐひすの峪深し          鈴木 楓    (1点)

以上

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