天為ネット句会報2018年6月

 

天為インターネット句会2018年6月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<福永 法弘 同人会会長選 特選句>

少女期の嘘は躑躅の蜜の味       石川由紀子   (3点)

他愛の無い嘘だが、何度もしゃべっていると、本人もそれを信じ込んでしまう。躑躅の花を毟っては蜜を吸う。誰かに叱られるまで、止まらない。(法弘)

うふふ~つつじには吸えるような蜜は余りないんですが、、、、そこはかとない秘密の味が、、、、(志昴女)

菱の花風ほの白き転害門        今井温子    (1点)

奈良時代建てられ、そのままの姿で現存する東大寺の転害門。菱の白花を揺らす風が爽やかだ。まさに、天平の風。(法弘)

転害門は国宝ですが脇の通用門は出入り自由で何度か通り抜けました。くすんだ柱に花や風、壁の白さが加わり創建以来1300年を物語っています。(昌夫)

アンソール仮面の踊る黴の国      小髙久丹子   

ベルギーの画家アンソールの悪意や欺瞞に満ちた仮面は不気味だ。黴臭い洋館にこそ似合う。(法弘)

 

<福永 法弘 同人会会長選 入選句>

金雀枝や丘なだらかに羊群れ      森山ユリ子   (5点)

ヨーロッパの美しい田園風景。(法弘)

聖画の一こまを見るようで風景が広がります(早・恵美子)

「金の羊」という秘宝を思い浮かべました。(博子)

樹海より蟻の無音の列来たる      妹尾茂喜    (4点)

死ぬのが早すぎた人の葬列のように重々しい。(法弘)

銀山の宿は木造り河鹿宿        鹿目勘六    (3点)

コンクリートに囲まれた都会の喧騒を逃れ、山深い銀山温泉の湯に浸れば、身も心も癒される。宿という字が重なるので、下五は河鹿笛にしたらいかがか。(法弘)

山の宿は静かで河鹿の声が聞こえてくるのでしょう、中七の「宿は木造り」が良いですね。(貞郎)

夏潮の渦百雷の鳴門かな        浅井貞郎    (2点)

渦潮が雷のように吠える。地球は生きている。(法弘)

この道も行き止まりなり栗の花     明隅礼子    (1点)

選んだ道がまたもや行き止まり。栗の花ゆえに、青春の迷い道といったところか。(法弘)

この道もの「も」がなんとも言えない閉塞感を感じさせ、栗の花と合っているように思いました。(美穂)

老鶯に窓開け放ち司祭館        森山ユリ子   (1点)

爽やかな高原の初夏の雰囲気。(法弘)

遠景となりて一点山法師        鹿目勘六    (1点)

初夏、山法師の白が、緑の木々に混じって、鮮やかに眩しい。遠景の点描。(法弘)

亡き母のソファーに窪み牡丹散る    相沢恵美子   (1点)

ソファに座って庭の牡丹をよく眺めていた母。(法弘)

亡くなられたお母様への強い想いが感じられます。(光男)

広く厚き刀鍛冶の背雲の峰       室 明

信頼の置ける逞しい背中。雲の峰が刀鍛冶の光背のようだ。(法弘)

 

<互選句>

白きもの白く洗ひて夏来る       加茂智子    (8点)

初夏の”白”を綺麗に表現した句ですね。さわやかな風を感じました。(志昴女)

苗のまだよそよそしげな植田かな    安光せつ    (7点)

植えたての苗の様子、とてもよく解ります。まだ田んぼに慣れていない様子の苗・・思わず頷いた句でした。(美穂)

植えた苗は強い雨に根ごと流されそうですが1週間もすれば青田の兆しが見られ秋には穂が垂れます、句から力強さを感じます。今朝、色とりどりの傘の植田のを行く登校の風景に出会いました。 (昌夫)

落人のごとく谷間の水芭蕉       染葉三枝子   (5点)

水芭蕉の姿形が落人とマッチしている。(豊)

厚塗りの絵の具ゴッホの麦の秋     中川手鞠    (4点)

水澄し飽かずに回す四方の嶺      内藤芳生    (4点)

飽かずに回すといふ所がなんともユウモラス(豊)

水澄ましが四方の山を細い足で回すとは!(宙)

山々の姿を映す清澄な大池を想像しました。佳き住処を得て水澄しも幸せそうですね。(明)

仔牛みな大鋸屑まみれ走り梅雨     佐藤武代    (4点)

柳絮舞ふ交脚椅座(いざ)の北魏仏   高橋紀美子   (4点)

中国旅行での風景でしょうか。「柳絮舞ふ」が効いていますね。(光男)

北魏仏と柳絮は何を語らふのでしょう?(宙)

勝鬨の渡しの跡や卯波寄す       阿部 旭    (4点)

リラ香る窓辺に母を納棺す       相沢恵美子   (3点)

上五の(リラ香る)の季語が良いですね、お母様もさぞかし安らかに成仏されたことでしょう、(貞郎)

「母の納棺」がリラの香りに包まれて安らかさを感じます。(ユリ子)

山法師咲く信玄の隠れ里        鈴木 楓    (3点)

山法師の白く輝く色に、隠れ里も明るいイメージに変わります。(ユリ子)

耿耿と有り明けの月髪洗ふ       永井玲子    (3点)

月の明るさを、髪を洗うほどと詠まれたのが素敵だと思いました(律子)

津軽路の縄文琴の音涼し        松山芳彦    (3点)

八戸市の紀元前1000年(縄文時代晩期)の是川中居遺跡から出土した世界最古の木製の弦楽器で、縄文琴は日本の琴の原型成すものらしい、この頃は大陸から稲作も伝はって来ていて水田の水面を琴の音が流れていたのでしょうか、弦の材料が気になります。(昌夫)

中七からしっとりとした津軽の風と琴の響きが伝わってきます。低音の残響が素晴らしいのではないでしょうか。(明)

母の忌や黴香るもの愛しむ       安藤小夜子   (3点)
何年か前に母上を亡くされたのでしょう、この程荷物の中から母上の遺品が出てきた、黴臭いけど懐かしい母の品。共感します。(志昴女)

紫陽花の影ある窓を開け放つ      妹尾茂喜    (3点)

紫陽花は好きなお花であり自分でこんな風に詠めればいいのに、と思えた句でした。情景が浮かびます。(美穂)

もの思ふわれより速き毛虫かな     上脇立哉    (3点)

昼顔や水路を巡る櫂の音        中嶋昌夫    (3点)

水路巡りののどかな情景、昼顔という季語の斡旋が効いていると思います。(光男)

昼顔の淡い色を仰ぎ見ながら、櫂の音の心地良さを満喫している水郷の旅は心休まるひと時だったことでしょう。(明)

髭面も得意満面山車の上        片山孝子    (2点)

捨て杭に川鵜うごかぬ夕間暮      阿部 旭    (2点)

夕間暮という言葉で景が、川鵜が、浮き立ちました(律子)

青嵐や新岩絵具塗り重ね        土屋 尚    (2点)

異国語の飛び交ふ築地若葉風      土田栄一    (2点)

石筍をよぎる涼風地下の黙       竹田正明    (2点)

植田はや空に龍神迎へたり       佐々 宙    (2点)

龍神が登場し、とても大きな景を感じました(律子)

国亡びまた立ち上がり麦青む      永井玲子    (2点)

歴史を継いで来たのは「麦」でした。(宙)

満ち来たる潮の高鳴り雲の峰      浅井貞郎    (2点)

水中花ぼとんと夜の吐息かな      佐藤博子    (2点)

ネックレスシルバーにして薄暑光    森野美穂    (2点)

舟下りの空やあまたの鯉のぼり     原 道代    (2点)

川をまたいで鯉幟が泳ぐ姿は壮観です。(貞郎)

二日目は風の子となる避暑地かな    佐藤博子    (2点)

避暑地に慣れて飛んで出て行くお子様の姿を彷彿させる一句です(早・恵美子)

家族旅なんじゃもんじゃの花盛り    染葉三枝子   (2点)

ご家族サービス・・・なかなか大変ですよね。なんじゃもんじゃの花が生きています(早・恵美子)

風抜けて百も散りたる牡丹かな     瀬尾柳匠    (1点)

羽抜鶏を驚かしたる火縄銃       荒木那智子   (1点)

昆布干す原初の海は瑠璃色に      内村恭子    (1点)

「原初の海」の瑠璃色が美しい表現。(ユリ子)

大股で母の歩める磯遊び        渡部有紀子   (1点)

大河いま闇に土手切る蛍草       早川恵美子   (1点)

半仙戯ゆらし乾坤独り占め       小橋柳絮    (1点)

エンパイアもクライスラーも夕立かな  中川手鞠    (1点)

むき出しで乙女の足の五月かな     岡崎志昴女   (1点)

蛍狩り今年の蛍にあひにゆく      安光せつ    (1点)

父母の闇思ひけり青葉木兎       佐藤律子    (1点)

退院の妻の仕草や梅雨青し       中嶋昌夫    (1点)

夏の風一直線に北欧へ         齋藤みつ子   (1点)

山門の金泥文字や夏日燦        小野恭子    (1点)

金泥文字が日射しに焼かれ更に金色になっている様子が見えてきます。(相・恵美子)

食玩の大きなどんぶり炎天下      渡部有紀子   (1点)

神官の沓音白き名越かな        佐々 宙    (1点)

恐るべし豌豆のさや次々と       嶋田夏江    (1点)

大振りの鞘豌豆が次々と実っているのを見て恐るべしと表現したところに面白さがあると思います。(相・恵美子)

アマリリス月光は廃れるものに濃し   關根文彦    (1点)

桜桃をもぐ小悪魔の紅の色       鈴木 楓    (1点)

走り梅雨ピアノソナタは軽やかに    石川順一    (1点)

山宿の膳に沁みゐる河鹿の音      内藤芳生    (1点)

河鹿の音が山宿の膳に沁みいると表現したところが佳いと思います。(相・恵美子)

草笛や原野の川の乱反射        内村恭子    (1点)

原野の川の乱反射と草笛の音色は、句に奥行き感を感じた。(豊)

潜水艦海月の群に浮かび出づ      中村光男    (1点)

老鶯や茶屋の火ずつと揺れてをり    明隅礼子    (1点)

古語辞典に親しむ卯月曇かな      土屋香誉子   (1点)

卯の花は曇空を引き立てます。思わず一句が、ほろと口から零れたのでしょうか?(博子)

以上

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