天為ネット句会報2018年10月

 

天為インターネット句会2018年10月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

<福永 法弘 同人会会長選 特選句>

家事少し残して燈火親しめり          土屋香誉子   (8点)

私の叔母・桜井千賀子は広島の在にあり、農業歌人として地元では知られた名だが、その叔母は、家族の団欒が何より大事と、夕食のあとの食器は水に漬けおくだけで翌朝の家事にまわし、夫、二人の子供との夜の語らい、読書を何より大事にした。(法弘)

好学の主婦の気持ちがよく表れていると思います。(光男)

秋の夜長を慈しむ作者の心を感じました。(明)

家事少し残してに惹かれました。(豊)

秋冷やプレパラートに我が組織         内村恭子    (3点)

組織片はさっきまで「私」だったのだ。いや、今もまだ「私」。どっちも「私」。秋冷が身に染みる。(法弘)

細胞の組織検査の結果待つのは期待と不安の複雑な心境です。(昌夫)

お医者さまにプレパラートを見せて頂いたのでしょうか。良性だったことを祈ります。(ユリ子)

<福永 法弘 同人会会長選 入選句>

石ころのやうな御仏赤のまま          荒木那智子   (6点)

石から彫りだした仏は、やがて石に帰る。赤のままは郷愁を誘う花。(法弘)

野の隅におわす石仏、しっかりとは彫られていなくてまるで石ころのような、、、お姿。赤のままを備える素朴さが似合います。(志昴女)

石ころのような小さな野仏だったのでしょう。それを見つけた感動が季語のあかのままで感じられます。(光男)

素朴な野仏の様子が目に浮かびます。季語とよく合っていると思います。(相・恵美子)

ストローでかき回す嘘曼珠沙華         石川由紀子   (6点)

嘘をついているうち、本人もそれが嘘だと忘れてしまって、すっかりその嘘に酔う。  曼珠沙華の茎には葉がなく、まるでストローのよう。(法弘)

う~ん、ストローでかき混ぜながら嘘をしゃべる仲、、、、微妙ですな~(志昴女)

こんな光景って「ある、ある」と言いたいけれどこんなふうには詠めません。「ストローでかき回した嘘」がいい。知って欲しいための嘘?知られたくないための嘘?曼珠沙華は真っ赤な、、、?(玲子)

かき回す嘘とは発想がいろいろ飛びますので面白いです。(かや)

山荘を閉づ日一位の実の赤き          森山ユリ子   (4点)

冬が近づいていることを、赤く色づいた一位の実が教えてくれる。(法弘)

「一位の実の赤き」で閉づ日が浮かぶ。(孝雄)

文弥節佐渡夕照の柿の秋            鈴木 楓    (4点)

佐渡に伝わり今も残る文弥節。佐渡夕照の中の柿が美しい。(法弘)

冴ゆる夜の銀河鉄道発車ベル          鈴木 楓    (3点)

冴え冴えとした夜が、賢治の銀河鉄道には似合う。私の句をここに並べさせて欲しい。
<銀河濃しカンパネルラのことなども>(法弘)

行く先は白鳥座・・・。乗ってみたい鉄道ですね (宙)

句材にロマネクを感じる。(卯平)

辿りつく九十歳や秋うらら           土田栄一    (3点)

次の目標は100歳。秋が麗らかに祝福する。(法弘)

辿りつくと秋うららでお幸せなご様子が浮かびます(かや)

武四郎の知床日誌鳥渡る            竹田正明    (2点)

武四郎は「北海道」の命名者。知床に鳥が渡って来れば、もうすぐ厳寒の冬。(法弘)

季語が悠久の時を感じさせ、中七から松浦武四郎の先住民族アイヌへの尊敬の念が伝わります。(明)

死のありし水槽洗ふ晩夏かな          明隅礼子    (2点)

水槽に飼っていた金魚が死んだ。夏ももう直終わる。(法弘)

かつて命があった水槽・・晩夏の季語と相まって何かが終わった感じが悲しく心をうちました。(美穂)

季語に挽歌を重ねました。(博子)

UFOてふ方舟一つ星月夜           渡部有紀子   (2点)

堕落した他の星から逃れてきたか? 星を眺めてロマンが広がる。(法弘)

UFOと方舟との結びつきに感心しました。(芳生)

棟上げの木遣りの唄や蜻蛉舞ふ         中村光男    (1点)

めでたい席にめでたい歌。蜻蛉も浮かれる。(法弘)

ほほえみの木喰仏や雁来紅           武井悦子    (1点)

木喰上人の微笑仏。見れば微笑を返され、こちらも笑みをこぼしてしまう。雁来紅は木喰の微笑仏に似合う。(法弘)

破れめの多きジーパン鳳仙花          中村光男    (1点)

わざわざ破って古着らしく見せる。若者のファッション。鳳仙花も若者もはじけ飛ぶ。(法弘)

季語の位置が的確である。(卯平)

山頂の芭蕉の句碑や霧速し           浅井貞郎    (1点)

芭蕉の句碑は、沖縄県以外の47都道府県にあり、その数は2500弱らしい。(25年前の、とある個人の調査(法弘)

旅の途の水軍の島秋祭             今井温子    (1点)

途ということは、目的地は別だったのだ。水軍の島の秋祭りがあると情報を得て、寄り道をした。これはラッキー。(法弘)

「水軍」という言葉に船を据えた秋祭を想像しました。さぞや勇壮だったことでしょう・・(博子)

天高しイギリス積の赤煉瓦           石川由紀子

レンガの積み方にもお国振りがある。イギリス積みは堅牢、フランス積みは華麗。秋空に堅牢な赤煉瓦の建物が眩しい。(法弘)

渡り鳥しづかに五湖をかすめゆく        明隅礼子

五湖もまた、静かに横たわっている。北から来た渡り鳥は更に南へ急ぐ。(法弘)

金の風渡る岩首棚田かな            中川手鞠

岩首棚田は金山で有名な佐渡島。その佐渡で金風。(法弘)

<互選句>

五線譜の音を辿れば木の実降る         原 豊     (8点)

木の実の音符いいですね(みつ子)

小声で歌う作者に木の実がハモっているようで、秋の夜の優しい時間の流れが伝わります。(明)

澄んだ爽やかな音色が心地よく感じられます。 (昌夫)

楽器の澄んだ音色と木の実の息が合いました (宙)

木犀の大気へ雨戸あけにけり          土屋 尚    (6点)

爽やかで、香りや光を感じる句だと思いました。(美穂)

大気へ雨戸あけ、の表現に共感(ユリ子)

長き夜や人形青き瞳閉づ            佐藤律子    (6点)

寝かせると目を閉じる人形がありますね。そんな大型の西洋人形。夜更けには余り凝視されたくはないな~(笑)綺麗な句だと思います。(志昴女)

昔々、父が買って来てくれた、横にすると青い瞳が閉じるミルク飲み人形を懐かしく思い出しました。長き夜がそんな思い出に浸るのにぴったり。(手鞠)

人形の瞳に焦点を合わせた所が上五にマッチ。(豊)

葬送や金木犀の咲き残る            荒川勢津子   (5点)

木犀の名残の香の中での葬送、故人が偲ばれます。(孝雄)

厳かに送るときに金木犀が匂って合ってると思います(みつ子)

主が亡くなったあとも家の庭には金木犀が咲き香っている、下5の「咲き残る」が印象的、(貞郎)

葬送のあとの寂しさのなかに香る金木犀。よく分かります。(ユリ子)

人はみな一点となる花野かな          かや和子    (5点)

太郎・次郎も花野の中では只の点に過ぎないのです (宙)

広い花野が見える。雄大な句。(卯平)

縄飛の少女ふはりと大花野           永井玲子    (5点)

幻想的な一句です。「縄跳び」とは違う動きかしら?(早・恵美子)

万葉の里のともしび萩の花           竹田正明    (4点)

夕暮れ時の明日香村で夕日に映える萩の花が美しく感動したことを思い出しました、季語「萩の花」が動かない(貞郎)

大いなる満月栗の巨木より           森山ユリ子   (3点)

満月と栗の巨木の取り合わせが面白いと思います。煌煌と輝いている満月が目に浮かびます。(相・恵美子)

赤蕎麦の花に埋もれし伊那の谷         武井悦子    (3点)

上五の「赤蕎麦」と下五の「伊那の谷」の取り合わせが良く「花に埋もれし」の措辞が引き立って素晴らしい句です、(貞郎)

北嶽は雲凝りやすし吾亦紅           内藤芳生    (2点)

空海のたどる道のり秋深し           齋藤みつ子   (2点)

空海のたどると大きくでたところがとても気持ちいい。(かや)

秋澄むや経の聞こゆる庭仕事          嶋田夏江    (2点)

秋ともしピアフの「パリの空の下」       垣内孝雄    (2点)

晩秋の夕暮とピアフの歌声は、パリにピッタリですね!(豊)

金木犀そぼ降る雨の根岸かな          阿部旭     (2点)

そぼ降る雨という表現が花にびったり。金木犀の香りが一気に立って来ました(律子)

名水は伊予のうちぬき秋祭           今井温子    (2点)

掘抜き井戸の水はさぞかし「旨い」ことででしょう。語呂の良さに秋祭りの威勢を感じます。(玲子)

円空仏の「やあ」と手を上げ秋高し       高橋紀美子   (2点)

パラフィン紙開けば秋蝶の欠片         内村恭子    (2点)

パラフィン紙、欠片という言葉に秋蝶のはかなさ、哀れさが感じられ素敵です(律子)

細き月少年の寄りかかる壁           妹尾茂喜    (2点)

「細き月」「寄りかかる壁」で少年を詠っている。(孝雄)

多感な少年の不安定な気持ち・・壁と細い月が表現していると思いました(美穂)

離れ家に二十三夜を灯しをり          垣内孝雄    (2点)

秋収めギターを吊りし作業小屋         安光せつ    (2点)

時間のある時にはギターを弾いていたのですね。作業の合間のささやかな楽しみだったと思います。(相・恵美子)

ドアノブのざらつく錆や稲光          瀬尾柳匠    (2点)

稲光に、ドアノブのざらつきの感触だけではなくその錆までしっかりと見えてしまった、そんな一瞬が浮かびました(律子)

宙の青宿して飛べり鬼やんま          佐々 宙    (2点)

会終へて身振り手振りの秋扇          加茂智子    (1点)

玄界の海向いて梳く木の葉髪          西脇はま子   (1点)

玄海灘の荒海と闘う力強さ感じます。(昌夫)

クラウンの静かに入る西日かな         卯平      (1点)

確認のラインやり取り菊日和          片山孝子    (1点)

一畑の葉を巻き上げて甘藷掘          土屋尚     (1点)

色変へぬ松や遊子の千曲川           荒木那智子   (1点)

鐘の音の聞こゆる嵯峨の竹の春         原 道代    (1点)

十六夜の駿府に金座銀座町           永井玲子    (1点)

都府楼の礎石の跡や柿の秋           西脇はま子   (1点)

秋深し灯台といふ無一物            鹿目勘六(1点)

加賀訛り芭蕉を惜しむ菊膾           中嶋昌夫    (1点)

遺言のタワー向く墓参りけり          片山孝子    (1点)

亡夫と共に見上げるタワー、心にしみる一句です。(博子)

秋彼岸鞄ひとつで故郷へ            相沢恵美子   (1点)

背(せな)ばかり見するきちきちばつたかな    上脇立哉    (1点)

成る程!虫さんは背中ばかり見せてくれますね(早・恵美子)

花野ゆく妻の口より歌の洩れ          土田栄一    (1点)

狭き間も等しく照らす月明り          加茂智子    (1点)

爽やかな大坂なおみのインタビュー       かや和子    (1点)

コスモスやまだ胸の平らな少女         森野美穂    (1点)

連れ合ひの好み薄味衣被            染葉三枝子   (1点)

秋蝶の飛び立ちにけり台風過          瀬尾柳匠    (1点)

台風の過ぎるのを待って残り少ない命を費消しようとする秋の蝶の姿がみえます。(光男)

墨染を海に脱ぎ捨て鼻曲り           早川恵美子   (1点)

降りながら西空明かし秋の朝          上脇立哉    (1点)

以上

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