天為ネット句会報2019年6月

 

天為インターネット句会2019年6月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

  <福永 法弘 同人会会長選 特選句>

別々の制服で会うソーダ水           野口日記    (4点)

中学校で仲良かった2人は、高校は別々になったけれども、今も大の仲良し。しょっちゅう会って、おしゃべりとソーダ水。それぞれ別の高校の制服姿で。 さて、今どきの若い女の子は、いかにも昭和っぽいソーダ水など頼まないで、おしゃれなラテやスイーツだろうけれども、それらを全て含めてソーダ水という季語で表すということだろう。(法弘)

他校の女生徒をナンパ(?)したのねと言いたくなるような楽しい句でした。(柳匠)

おそらく高校生、違う学校に行っても近況報告をする仲良しさん・・若々しい感覚がいいなと思いました(美穂)

夏つばめ蒼穹に描く一円相           石川由紀子   (3点)

夏空に燕が描くのが丸とか円とかでなく、円相という禅宗用語を持ち出したところが面白い。円相とは、悟りや真理、仏性、宇宙全体などを円形で象徴的に表現したものだそうだ。(法弘)

  
  <福永 法弘 同人会会長選 入選句>

けふからは風を身近に更衣           内村恭子    (10点)

いよいよ夏。薄衣に変えた感じが良く出ている。(法弘)

軽やかな服装に軽やかな風身も心も健全 (温子)

まさに今この感覚、半袖の腕が気持ちいい今日この頃です(美穂)

温暖化で季節感が早まり新学期早々夏服で登校する子供達を見かけました。(昌夫)

日本の夏の始まりですね。(智子)

万緑へ大きな欠伸赤ん坊            瀬尾柳匠    (6点)

中村草田男に<万緑の中や吾子の歯生え初むる>の句がある。生き生きとした生命力にみなぎる句。一方でこの句の赤ん坊は生まれたて、まだ歯は生えていない。怖れを知らない、のびのびとした大きな欠伸だ。(法弘)

赤ん坊の「欠伸」はみたことがる。万緑への欠伸、何か生命を感じる。(孝雄)

草田男の句を思い出しました。(芳生)

健やかに成長する赤ん坊の姿が見えてきます。(明)

天真爛漫きっと良い子に育ちますよん(早・恵美子)

葉桜の湖畔にぎはし印伝屋           原 道代    (2点)

印伝とは、獣皮をなめした物を使った鞄や財布などのこと。人だかりがしているようだから、かなりよく出来た品物を並べているのに違いない。そのおかげで、花の盛りが過ぎ葉桜の時期になってもまだ湖畔は賑わっている。(法弘)

季語の斡旋が上手です(早・恵美子)

戸の朽ちし開山堂や桐の花           竹田正明    (2点)

その寺の開基を祀るのが開山堂。どこの寺院の開山堂かはわからないが、戸が朽ちているのだから、開山当時の勢いはなくなって、寂れているのだろう。桐の花は盛んな樹勢に比べて、どこか寂しい花だ。(法弘)

豪華な開山堂ではなく質素な堂なのである。「桐の花」がその佇まいに相応しい。(孝雄)

大いなる奈良の仏や袋角            荒木那智子   (2点)

芭蕉に<菊の香や奈良には古き仏たち>という句があるが、古いだけではなく、大きいのもまた奈良ならではだ。鹿もまた奈良。(法弘)

浅利砂吐くいさかいのありし夜         中村光男    (1点)

アサリが砂を吐いたのと、いさかいとは何の関係もないのに。取り合わせの妙。(法弘)

いさかいがあってシンとした台所・・そんな空気も関係なく砂をはく音のみ・・という感じかなぁと思いました(美穂)

のぼさんの机上にランプ夏の雷         浅井貞郎

のぼさんは子規のこと。ランプを灯し、雷の夜も勉学に励んでいたのだろう。(法弘)

百号の裸婦の油絵夏館             垣内孝雄

人物画の100号は、1620mm×1300mmの大作。明け広げられた夏の館にふさわしい美術品だ。(法弘)

桐の花令和の御代の始まりぬ          土田栄一

戦争はもちろん、天災も無い御代であって欲しい。季語は動くが問題ない。新しい時代への挨拶句だから。(法弘)

 
  <互選句>

花びらは絹の冷たさ白牡丹           荒木那智子   (7点)

白牡丹神々しいが何か冷たいを絹の冷たさで言い表しているのがいいと思います(みつ子)

緑さす一間一人の針仕事            石川由紀子   (7点)

外は新緑一人黙々と好きな針仕事私も大好きです(みつ子)

「緑さす」の季語が針仕事の尊さを伝えています。 (宙)

美しい情景ですね。(智子)

子らの声一直線に夏木立             内村恭子    (6点)

子供たちの元気な声が聞こえて来るようです。一直線と夏木立が効いています。(相・恵美子)

子供の声が夏木立にはじける夏のよろこびを伝えました。  (宙)

爽やかな緑の中から、元気な子供たちの声が聞こえてきます。清々しい景色ですね。(春野)

一直線に届いてくる子らの声(聴覚)と、夏木立の直立(視覚)がすっきりと屹立し見事。(藤樹)

ロザリオの沈みし海や聖五月          野口日記    (4点)

枝蛙鳥語の中に紛れけり            佐藤律子    (4点)

「鳥語の中に紛れけり」の表現が佳いと思います。小さな枝蛙によく合っています。(相・恵美子)

鳥語が気になりましたが、昼間の長閑な田舎が確り伝わりました。(芭行)

今月はカエルの句がいいです。木の枝に登る小型の雨蛙を想像しました。雨蛙は高い場所にいることが多いですね。(志昴女)

谷川のしじまを深め夕河鹿           内藤芳生    (4点)

河鹿の澄んだ声が一層谷川の静寂を際立てるという感覚に共鳴します。(明)

漁礁となりし潜水艦や沖縄忌          室 明     (3点)

戦争の残骸に色鮮やか魚たち 永遠に戦のない事を願っております (温子)

戦争も忘れ去られてゆく哀れ。簡潔な表現で素晴らしい。(ユリ子)

取寄せの土佐の風よぶ初鰹           森山ユリ子   (2点)

桂浜への旅でわらで焙った鰹を食べた、中七の「土佐の風呼ぶ」の措辞が初鰹の味を思い出させてくれる、素敵な一句です(貞郎)

詩的で、かつ美味しそうな一句です。(博子)

黒イチジク熟れてガラスのコンポート      永井玲子    (2点)

ガラスのコンポートに載せられている黒イチジク、絵画的で上手いと思います。(光男)

熟れたイチジクの黒が、ガラスの器に美しい。(ユリ子)

遠き日の客気に満ちし書を曝す         内藤芳生    (2点)

どの墨書も力強く書かれていることでしょう。(博子)

「客気に満ちし書」。緑風に曝されてふたたび生き返るように思えます。(ユリ子)

どの窓も白き濯ぎや梅雨晴間          佐々 宙    (2点)

季節感よく出ていいと思います(和子)

イヤサイヤサと町が動いて祭りかな       片山孝子    (2点)

夏祭りのにぎわいが上五で感じられます。 (光男)

その奥に白きテーブル薔薇アーチ        土屋香誉子   (2点)

その奥のテーブルにいるのは老夫婦か、若いカップルか。想像をかきたてる。 (光男)

万緑のぐらり延縄漁船発つ           早川恵美子   (2点)

緑さすボヘミアの画家の故郷          森野美穂    (2点)

句またがりの強さで、歴史に蹂躙された画家が頭に浮かび(特にミュシャ・・)鎮魂も感ずる季語に惹かれました。(博子)

ウォーキングいえ散歩です青蛙         小髙久丹子   (2点)

これ、アオガエルのセリフだったら完璧!(志昴女)

そつときて昼蛍のゐるといふ          中村光男    (2点)

足音を潜め、小声で発見を告げる人。聞かされた作者もそーっと…(春野)

夏場所や悲喜こもごもにはね太鼓        武井悦子    (2点)

中七の悲喜こもごもが効いています。(柳匠)

聖五月円卓に置くハーブティー         窪田治美    (2点)

円卓にハーブテイーを置いた時に、聖五月を感じたというだけだが、ハーブテイーの香りと聖五月は程よい取合せである。(藤樹)

蝸牛空倍子色(うつぶしいろ)に濡れてゆく   早川恵美子   (2点)

「うつぶしいろに濡れてゆく」が蝸牛の動きと葬列を思う色彩を浮かべる。まさに鎮魂である。(孝雄)

らっきょうを漬けて季節を身の内に       荒川勢津子   (2点)

「身の内に」に膝を打つ思いでした。(智子)

碧眼の子に手を添えて甘茶仏          かや和子    (2点)

夕凪の橋渡りゆく電車音            妹尾茂喜    (2点)

作者は電車が橋を渡る景を聴覚だけで聞いている。夕凪は、橋を渡る電車音に読者をより深く引き込むことに成功している。(藤樹)

子はさらに高きところへ端午の日        明隅礼子    (2点)

木登りか、いえ勉学が親を越えたのか端午の日と響き合っていますv(早・恵美子)

鉄線の一花添へて野点傘            阿部 旭    (2点)

好きな花です(和)

睡蓮の色は虹色モネの庭            染葉三枝子   (2点)

モネの睡蓮当たり前だけど落ち着く名画です。(みつ子)

蛇苺真紅に昼の雨上がる            相沢恵美子   (2点)

赤楽も黒楽も好き利休の忌           かや和子    (2点)

僧坊の三和土守宮の落ちて来し         今井温子    (1点)

海軍のカレーにミルク聖五月          鈴木 楓    (1点)

夏の蝶追つてのぼりし観覧車          明隅礼子    (1点)

大陸の短波放送よりやませ           垣内孝雄    (1点)

始まりは早緑の毬七変化            高橋紀美子   (1点)

スリットの揺るる残像夏の服          瀬尾柳匠    (1点)

少年は八頭身よ青葉木菟            小髙久丹子   (1点)

青葉木菟今日も大人は子を殺め         中川手鞠    (1点)

夏川の逆流広島平和記念館           長濱武夫    (1点)

白鷺の四五羽佇む代田かな           郷 芭行    (1点)

白鷺・四五羽・代田とシ音が続いていて美しく、情景もくっきりと見えてきます。(明)

筑波野は早も代田に入日燦           児島春野    (1点)

すひかづら幼馴染のゆき急           荒川勢津子   (1点)

城郭の遺跡の萌芽に落し文           松山芳彦    (1点)

雨の中ここよここよとアマリリス        嶋田夏江    (1点)

春惜しむこころ平成おしみをり         鹿目勘六    (1点)

夏服の海を真っ直ぐ泳ぎをり          加茂智子    (1点)

海を真っ直ぐが大変面白い。(柳匠)

天竜の浄き流れに鮎の香            松山芳彦    (1点)

昨年天竜舟下りを体験した。切り立つ断崖に深く真っ青に澄んだ浄き流れ・鮎の投網漁も見せてくれた、素晴らしい一句となりましたね(貞郎)

いちまいの蛍袋の淡彩画            西脇はま子   (1点)

いつのまに庭に紛れし罌粟の花         土屋香誉子   (1点)

魔性の花かも。気おつけて処分を------。  (宙)

ももづたふ磐余の道の時鳥           今井温子    (1点)

大和政権から飛鳥へ政治や文化が移る伝承地ですが辿る古代の歴史ファンには魅了有る道。(昌夫)

モッコウバラ青いホースの水飛沫        森野美穂    (1点)

白いモッコウバラ、ホースの青と燦々とした水飛沫で夏らしい綺麗な景が見えて来ます。(相・恵美子)

空木白し中山道の脇本陣            岡崎志昴女   (1点)

二月堂の供田に子等の田植かな         中嶋昌夫    (1点)

御垣守つばの雫やさみだるる          阿部 旭    (1点)

皇宮警察でしょうか、、、。静かに佇む仕事をズームで切り取った景色が好きです。(芭行)

大川に浮かぶ芥や業平忌            鈴木 楓    (1点)

存分に白球とばし五月果つ           土屋 尚    (1点)

気持ちいい句ですね(和)

風死すや鎌倉街道どんづまり          佐藤博子    (1点)

武家政治を開いた源頼朝親子三代の運命の短さ感じました。(昌夫)

遠き日の鉄路の錆や葛茂る           染葉三枝子   (1点)

青春時代の夜行列車の旅が懐かしく思い出されます、今はその鉄路もも錆び付いて雑草の中に埋もれている、季語「蔦茂る」が動かない、(貞郎)

程々に雨降りてなほ薄暑かな          窪田治美    (1点)

この頃は雨が降ってもさほど涼しくはなりませんね。丁度この句のような感覚です。(志昴女)

ひなげしの満ち満ちてをり休耕田        永井玲子    (1点)

農業生産は停止していますが、そんな事に関係なく、ひなげしの世界が、静と動の表現ですね、、、。(芭行)

町中の血が騒ぎ出す喧嘩山車          片山孝子    (1点)

以上

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