天為ネット句会報2019年7月

 

天為インターネット句会2019年7月分選句結果

(作者名の後ろの点は互選点)
 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。また互選句は高点句から順に、同点句は句稿番号順に並べました。
 ※一部インターネットで表示できる文字に置き換えております。ご了承ください。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

石段にゆふぐれ来たる夜店かな          明隅礼子    (5点)

寺社の参道に並び立つ夜店が想像される。近くに石段があり、そのあたりに夕暮れが迫って来たというのである。夜涼の待たれる頃合。夜店の灯はこれからだんだんと輝きを増し、佳境を迎えることになるのであろう(傳)。

氏神様の祭りでしょうか。映像の一シーンのような美しさを感じました。(博子)

境内に朝の箒目梯梧(でいご)散る        土田栄一    (1点)

朝早くに掃除がなされ、境内にきれいな箒目が立っている。そこに紅い梯梧の花が散っているのである。強い色彩をもつ梯梧の花が印象的な南国の風景(傳)。

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

高瀬川涼し肩幅ほどの橋             今井温子    (6点)

高瀬川の涼しさが感ぜられる(芳彦)

発車してすぐに着く駅額の花           土屋香誉子   (4点)

この鉄道の感じと額の花がとても合っているように思いました。(美穂)

木鋏の音する路地や梅雨晴間           阿部 旭    (4点)

雨模様の続いた路地に陽が差し、働き者の居住者がそれとばかりに植木の手入れをしている光景。路地を訪れる度に花や植木を愛する人々の暮らしを感心して眺めております。(明)

百伝ふ磐余の径の落し文             早川恵美子   (3点)

縄文の土面の眼孔夏の闇             浅井貞郎    (3点)

眼孔の迫力が伝わってきて夏闇によく合っていると思います。(相・恵美子)

小糠雨湖畔に白き花サビタ            森山ユリ子   (3点)

「小糠雨」「湖畔」「「サビタ」丁寧な描写である。純真なアイヌの人達がどうか悪徳な人にかどわかされないようにと祈るばかりである。(孝雄)

一万歩歩きしあとの大昼寝            加茂智子    (1点)

いかにも大昼寝と言う貫禄の一句。(順一)

蜆蝶雨の上がるを待ちかねて           土屋 尚    (1点)

蜆蝶は15ミリほどの小さな蝶で種類も沢山有りますが本州では6月から8月頃に良く見かけます、小さな蝶で雨が上がるのを待って涼しくなった空へ飛んで行くのでしょう、可愛い句ですね(貞郎)

梅雨はげしステンドグラス火の色に        永井玲子

  <互選句>

白黒の家族写真や時計草             佐藤律子    (5点)

家族写真も何か行事がなければ写真館で写真を撮ることもなかったですが時計草とあってると思います(みつ子)

懐かしい家族の写真を眺めながら来し方に思いを馳せている作者の気持ちが時計草という季語にぴったりです。(明)

季題「時計草」が上句にぴったり!(春野)

巡礼の村を貫く夏の川              森山ユリ子   (5点)

巡礼者の心に貫かれた思いが中七と響き合い、すがすがしい夏の川の光輝く光景が見えてきます。(明)

四国であろうか、スペインのサンチャゴの道であろうか。巡礼の村を貫いて夏の川が流れている。ただそれだけの景ではあるが、巡礼という言葉が上五に置かれているため、村を貫く夏の川が強い意思を持っているように感じられる力強さがある。(武夫)

お接待と川の涼風を受けながら歩みを進める巡礼の姿が見えてくるようです。(博子)

今年竹嵯峨野をわたる風の音           荒木那智子   (4点)

「嵯峨野」は今年竹の「青」が美しい京都の観光スポット。心地よい風を感じながら歩を進める作者が浮かぶ。(孝雄)

枇杷の実の零れる道や検診日           中村光男    (4点)

日常生活の中の一つである検診と枇杷の実の零れている景とよく合っていると思います。(相・恵美子)

万緑や俳句も山の深さにて            上脇立哉    (3点)

万緑も、俳句も奥を極めれば極める程段々と色濃いものになるものです。(豊)

憂きことも溶きて千色の夕焼かな         中川手鞠    (3点)

憂きこともが効いてると感じました。(柳匠)

ラベンダーの香る便箋夏見舞           中川手鞠    (3点)

相手まで床しく感じられる夏見舞ですね。(芳生)

枇杷の実に残る夕陽や子守唄           竹田正明    (3点)

枇杷の実の黄色に夕焼けの赤が映っている、きれいな情景。子守歌のとりあわせもよい。 (光男)

セザンヌの籠より零れ青林檎           佐々 宙    (3点)

梅雨寒や麒麟の睫毛重たげに           石川由紀子   (3点)

麒麟の睫毛?とても意外な展開に惹かれました(律子)

父親と同じ顔して袋掛              染葉三枝子   (3点)

さもありなん。父上と同じ顔になったら、同じように頑固で逞しい篤農になられたことでしょう。(志昴女)

父親と中学生か高校生の男の子が黙々と袋掛けをしている様子が目に浮かびます。(春野)

戸袋にもとの静けさ鳥巣立つ           阿部 旭    (3点)

燕でしょうかね、鳥が巣立ってまた静かな家になったとの感慨が濃く出ている(柳匠)

作者の観察力の素晴らしさと心の優しさが滲み出ている。(豊)

泰山木の花得て剣山踏んばれり          高橋紀美子   (3点)

踏ん張れり、が楽しく、大きなお花とその枝を思いました。(美穂)

傘たたむ青水無月の瑠璃光院           佐藤博子    (3点)

夏雲や銀座はちみつパンケーキ          武井悦子    (3点)

銀座はちみつパンケーキのリズムの良さ、夏雲との取り合わせに、梅雨模様の空までカラッと見えました(律子)

骨切の音涼しきや貴船宿             中嶋昌夫    (3点)

「更科」の暖簾も白に燕来る           佐々 宙    (3点)

ゆつくりと川内川のほたる舟           室 明     (2点)

ほたる舟とは なんと優雅なひと時 (温子)

名山の頂き万緑ほしいまま            内藤芳生    (2点)

制服のもやもやと髭薄暑かな           嶋田夏江    (2点)

制服+もやもや+髭=薄暑。この制服を来た子は中学生でしょうか。もやもやがなんともきいています。(玲子)

季語が効いています(早・恵美子)

ストローの口紅ソーダ水青し           瀬尾柳匠    (2点)

ストローの口紅とソーダ―水の青、赤と青が浮かび上がってくる。 (光男)

少女達花冠の夏至祭               齋藤みつ子   (2点)

北欧の短い夏 とりどりの花の冠を付けての夏至祭り歓声が聞こえてきます (温子)

祇園会やポニーテールを探しをり         森野美穂    (2点)

探す目印がポニーテールとは意外! 髪型は違えども、川端康成の祇園会のシーンとダブり気になる1句でした。(博子)

明けを待つ白きふくらみ夏椿           高橋紀美子   (2点)

作者は夜明け前の闇の中で夏椿と共に明けを待っている。中七の表現が自然体で良い。下五でその白きふくらみが夏椿であることが判る。(武夫)

菓子箱に犬のお骨や星祭             西脇はま子   (2点)

厳粛な気持ちと砕けた気持ち。苦いユーモアにペーソスが隠れていると思いました。(順一)

緑蔭やかごめかごめの子が十人          荒木那智子   (2点)

猛暑日の木陰は有難いもの賑わいを感じます。(昌夫)

教会の火点す頃や梅雨の坂            永井玲子    (2点)

さくらんぼ幸せ詰めて双子かな          齋藤みつ子   (2点)

さくらんぼと双子の取り合わせが面白い、幸せそうな双子ですね(貞郎)

孫と繰る長き青竹ほたる舟            石川由紀子   (2点)

微笑ましく家族愛を感じます。(昌夫)

勾玉は父祖のたましひ田植歌           長濱武夫    (2点)

七月の瑠璃紺青の佐渡の海            鈴木 楓    (2点)

私は10月に佐渡への旅をしたいと思います、是非瑠璃紺青の海を観たいものです、楽しみです、(貞郎)

萱草の花の彼方に蝦夷の影            鹿目勘六    (2点)

萱草別名忘れ草、故郷の蝦夷を懐かしんでいるのだろうか。(豊)

黒真珠好む女や夏来たり             加茂智子    (2点)

確かに女性は黒真珠好きですね。夏の喪には(みつ子)

黒真珠は南海の「贈り物」、黒真珠を身につけた「女」、不思議に惹かれる。(孝雄)

肩に鍬かつぐ埴輪や大夕焼            浅井貞郎    (2点)

片陰の途切れ維新の志士の墓           内藤芳生    (2点)

維新の志士の墓とはだれの墓だったのか、想像力を掻き立てられました。(順一)

しづけさや『死者の書』捲る日の盛り       室 明     (1点)

青葉光エリスマン邸の板廊下           相沢恵美子   (1点)

夏蝶の飛ぶか白花舞い散るか           児島春野    (1点)

黒南風やクィーンエリザベス窓灯る        佐藤博子    (1点)

夏海の渦潮破る貨物船              原 道代    (1点)

渦潮破るの表現が豪快で良いと思います。夏の海らしい景が見えて来ます。(相・恵美子)

蝸牛げに雨嫌ひ晴れ嫌ひ             小野恭子   (1点)

なるほど、、、蝸牛さん、雨も晴れも御嫌いでしたか。(志昴女)

井伊様の大居士大姉梅雨晴間           土田栄一    (1点)

季語が良いと思います。(昌夫)

雲海へ遣唐使船船出待つ             今井温子    (1点)

ロマンが有っていいですね(早・恵美子)

冷房の音だけの夜に祈りけり           野口日記    (1点)

静寂の中の切ない祈りを感じます。(美穂)

扁桃腺腫れ上がりたる梅雨湿り          長濱武夫    (1点)

今年は夏風邪を引いた方が多いいと思います。梅雨湿りとあってると思います(みつ子)

鳥籠の留守の涼しや喫茶店            松山芳彦    (1点)

緑濃し教林坊の蚊の柱              松山芳彦    (1点)

白玉に言葉よせ合ふ姉妹             小野恭子    (1点)

白服の消す黒板の美しき文字           明隅礼子    (1点)

凌霄の花雨曇る登り坂              荒川勢津子   (1点)

雨曇りは手許の辞書にもあるが、雨曇るという動詞形はない。小生が不勉強なのかも知れないが、雨曇るという言葉に初めて出会ったが、その意味はよく解る。オレンジ色の凌霄の花とどんよりとした雨曇りの登坂の対比は色のみならず、心理的にも鮮やかである。(武夫)

千曲川青葉の風の一流れ             妹尾茂喜    (1点)

懐かしき染みひとつあり母の衣          染葉三枝子   (1点)

ひとつの染みが亡くなられてお母様の思い出につながった。しみじみとする句です。(光男)

空梅雨や薪割る音の農具小屋           原 豊     (1点)

五月晴れに響く薪割りの音が映像として浮かびました(柳匠)

ずぶ濡れの逢瀬薩摩の男梅雨           早川恵美子   (1点)

「道」一字刻む墓石や青葉菟           荒川勢津子   (1点)

お墓は持たない選択をしていますが、このようなお墓もいいですね。墓守がいることが前提ではありますが。(志昴女)

あじさゐや牧野博士に字を問はれ         岡崎志昴女   (1点)

植物学者の牧野センセイに字を聞かれたの?すごい!(早・恵美子)

カーラジオ聞き取れなくて梅雨の町        森野美穂    (1点)

災害続きの日本列島、大雨の最中なのでしょうか。その緊迫感する一コマを切り取られたように思いました(律子)

夏芝や緑の屋根の明日館             武井悦子    (1点)

以上

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