天為ネット句会報2022年6月

 

天為インターネット句会2022年6月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べています。
 ※一部、インターネットで表示できる文字に置き換えています。

  <福永法弘同人会 会長選 特選句>

青葉木菟星の匂ひの森に棲み           三好 万記子

星の匂いのする森だなんて、どんなだろう、行ってみたいと思わせる素敵な言葉。(法弘)

ああ、そうか、この森は星のにおいがするんだ、、、素敵な句ですね。(志昴女)

星の匂いのする森が素敵   (温子)

「星の匂ひの森に棲み」という感性に惹かれた。(桂一)

メルヘンの世界ですね。(泰山木)

中句の「星の匂ひ」にしびれました。(春野)

星の匂ひの森という中七に魅かれました。どこまでも深い森の静けさを感じます。(明)

三枝子、由紀子、久丹子、玲奈、はま子、陽子

豹柄になりしバナナのうまさかな         金子 肇

豹柄は大阪のおばちゃんの定番なので、もうそれだけで笑えるが、バナナが熟してきた様を、皮が豹柄になったと発見した点、お見事。黒い斑がもっと増えると腐って、食べられなくなる。(法弘)

経験あり、豹柄、表現も旨い(眞五)

  <福永法弘同人会 会長選 入選句>

一山を吊り上げるごと虹架かる          相沢 恵美子

虹を鍋の把手のように見立てたところ、面白い。奥尻島に鍋釣岩というのがあるが、それを思い出した。 (法弘)

山を吊り上げるようにという虹の捉え方が新鮮(博行)

一山を吊り上げるように虹が架かっているという。雄大な視野で景色を観察されたこと素晴らしいと思います。(芳彦)

ハワイ島の神々しい山と大きな虹を思い出しました。(手鞠)

大きな景ですね(智子)

広々とした光景が見えてきます。都会ではけっして出会うことのない虹の姿ですね。(明)

くっきりと大きな虹が見えるようです。虹をこんなにも力強く感じるなんて、新しい発見です。(澄江)

陽子

円窓の程よき高さ白菖蒲             金子 正治

そういう設計にしてあったことを、菖蒲が咲いて初めて気づかされたのでしょう。 (法弘)

寺の庫裡からであろうか、円窓を通して庭の池の白菖蒲が見える。静けさの中にいる作者の姿と心境が伝わる。(博行)

「円窓」にお屋敷・庭園を想う。円窓はまさしく「景」を楽しむために設けられたのであろう。白菖蒲が庭を飾る。(孝雄)

涼しさや目鼻口無き撫仏             小栗 百り子

のっぺらぼうみたいですが、それを気持ち悪がらないで、涼しいと、前向きな感覚でとらえた点が面白い。(法弘)

病気平癒を願う無数の人に撫でられた撫仏のひんやりと滑らかな手触りとそれが置かれているお堂の静けさが伝わる。(博行)

大勢の願いを込めてなでられた挙句、眼鼻口の摩滅した撫で仏様。有難く存じます。これからも皆の祈りを受け止めてください。(志昴女)

史子

山椒魚捕ふつもりの大バケツ           榑林 匠子

オオサンショウウオは天然記念物だから、捕獲禁止のはずですが。大げさで楽しい句。 (法弘)

大バケツを持ってきたのは子どもさんでしょうか、微笑ましい句です。(春野)

「つもり」は謙遜かもしれません。「大バケツ」に惹かれました。(順一)

みちのくの国府跡てふ夏野かな          荒木 那智子

芭蕉の句<つわものどもが夢の跡>を思わせます。(法弘)

みちのくの国府跡は、夏野と呼べるほど広い、それだけ大事な国府だったのでしょう。(眞登美)

11年前の大震災のあった年の2月中旬、この辺りにいた(眞五)

万緑の隅に住吉大社かな             泰山木

今の大阪の住吉大社は周りが都市化され、万緑の隅という感じではないけれど、源氏物語に出てくる頃の住吉大社は、きっとこんな感じだったのでしょう。 (法弘)

隅に、、、というのが独特の視点で良いと思いました。(日記)



隣家より回覧板と筍飯              中川 手鞠

有難くいただく。隣人との関係は大切。 (法弘)

程よい距離感のコミュニティですね!(ユリ子)

眞登美

若葉風旅へとこころ逸れども           岡部 博行

コロナ禍でどこにも行けず。若葉風を受け、旅心が逸る。もうそろそろ、いいんじゃない?(法弘)

毎年友人と出掛ける旅が大きなよろこびだった。後少し、コロナ禍が収まるまでの辛抱だ。(茂喜)

うららかや撫牛どこをなでやうか         染葉 三枝子

自分が患っているのと同じところを撫でると治るというが、その箇所があまりに多すぎて、どこを撫でてよいやら戸惑うる。膝か腰か肩か、目か耳か鼻か、頭か顔か。うーん、難しや。(法弘)

 <互 選 句>

キャンパスのリモート解除樟若葉         荒川 勢津子

閉塞感からの解放が、楠若葉の高々と美しい勢いに、うまく表現されていると思いました。(ユリ子)

香誉子

松の芯すつくと憲法十七条            今井 温子

この世界情勢の中、「和を以て貴しと為す」から始まる千年以上前の法が改めて心に沁みます。松の芯との取り合わせもぴったり。(恭子)

日本国憲法の第9条が芯のように立ってもらいたい気持ちのあらわれでありましょう。世界の平和をお祈り申し上げます。(国勇)

中7の表現が効いていてすっきりとした句になってます。(相・恵美子)

夏江、久丹子、礼子

蝸牛氷河擦痕(さっこん)の透ける殻       劉 国勇

小さな蝸牛の殻に大きな氷河の跡を発見(典子)

かたつむりの殻に目を遣ったところが新鮮。(伊葉)

麦の秋十勝の国は晴れ渡り            熊谷 佳久子

尚、立哉、玲奈

六月の女の開く青き傘              鈴木 楓

梅雨のどこか物憂い6月に、これからドラマが始まるような。(典子)

正治

デラシネの散り散り民に青嵐           松山 芳彦

ウクライナのことを思いつくづくと。(佳久子)

黄菖蒲の明るき谷や学習田            土屋 香誉子

子供たちは田植え体験中。泥の感触や田植え作業に上がる歓声を黄菖蒲がよく表現している。(ゆかり)

学習田に集まる子供たちが目に浮かぶ、気持ちの良い俳句だと思いました。(日記)

美穂、勢津子

先生を泣かせて茅花流しかな           芥 ゆかり

昔はそういうこともありましたね。「茅花流し」がいいですね。(光男)

カーディガンひつかけ梅雨の走りかな       上脇 立哉

梅雨の走りの肌寒い様子が引っ掛けるに良く出ていると思います。(孝子)

はま子

半夏雨来さうな橋を渡りけり           土屋 尚

時は半夏生。大雨の予報にしかと備えなくてはならない。この橋は季節の節目の意味もあると思った。(ゆかり)

涼し気な半夏生のある庭園でしょうか。(泰山木)

礼子

万緑や橋を渡れば極楽寺             中村 光男

なぜか極楽へ行けそうな気持になる句。(孝雄)

眞登美

桐の花屋島を望む喫茶店             井上 澄江

素晴らしい景観ですね、季語「桐の花」が効いています、(貞郎)

くれがての短調めける貝風鈴           佐藤 律子

陽子

白滝の飛沫に刻む一行詩             牧野 桂一

素晴らしい一句ですね、季語「白滝」が動かない(貞郎)

清々しい滝のしぶきを感じながら素晴らしい句が頭に刻まれた。吟行の喜びを感じます。(澄江)

正治

蝸牛織田信長の首柔し              劉 国勇

うつけという殻を脱ぎ捨て変貌した信長。取合せを斬新に感じました。光秀を教唆して謀反させたのは誰?説など・・想像が膨らみます。(博子)

匠子

梨の花白寿修女のエアメール           森山 ユリ子

史子、立哉

卯の花腐し猿山の猿目の虚ろ           相沢 恵美子

ボスの交代の季節かしら?長雨で猿も憂鬱?(佳久子)

那智子、美穂

「プリンセス・アイコ」咲く薔薇園の未来かな   てつお

久丹子、万記子

薄暑光海に向かひしベンチかな          宮川 陽子

海沿いの公園でしょうか。水色の空と、穏やかな青い海が目の前に広がるようです。(澄江)

梅雨寒や七七忌の挨拶状             合田 憲史

玲子

戦果て夏壇ノ浦波しづか             嶋田 夏江

芭蕉の句を想起しました。盛者必衰の理はいつの世も・・調べも美しいです。(博子)

礼子

河骨に背を見せてゆく鯉のあり          山口 眞登美

玲奈

基地を発つ機影の近し薔薇の庭          芥 ゆかり

史子、那智子

母の日の母をはみ出す鏡文字           牧野 桂一

鏡に向かう母に、きっと子供が手書きで書いたカードを見せているのだろう。(典子)

薫風にフーガで泣くや双子稚           森山 ユリ子

「フーガで泣く」とはなんといい表現でしょう。(光男)

中7の表現が効いて薫風なのであまり激しい泣き方ではなく可愛らしく感じます。(相・恵美子)

水槽のめだかの学校夜となる           西脇 はま子

24時間周期の体内時計を持つメダカたち。夜は水槽の電気を消してもらって、ゆっくり眠ることでしょう。(手鞠)

香誉子、匠子

風鈴の舌江戸弁の音色かな            西脇 はま子

私は南部風鈴を掛けていますが独特の澄み切った音色はすばらしいです、江戸風鈴の音色を聴いてみたいものです、(貞郎)

「風鈴の舌」が言い得て妙!べらんめえ調が聞こえてきます(憲史)

匠子

走り梅雨路面電車のスパーク光          石川 由紀子

忘れしか置いてゆきしか螢籠           明隅 礼子

洗練され余韻のある佳句。(伊葉)

はま子

補陀落は南遥かや卯浪立つ            岡部 博行

南海上にあるという観世音菩薩が住むという山に小舟で海を渡ろうする。折りしも卯波が立っているという。補陀落渡海は中世の菩薩信仰を俳句された。面白いと思う、(芳彦)

補陀落渡海は観音信仰と海上他界という日本の独特な思想と結び付いたもの。フロイスら宣教師たちの「偽の天国に導く悪魔の奸策」との言葉に驚いたが、考えてみれば、立場が変わると、視点も当然変わります。出発地の那智勝浦に波がたっている。(国勇)

卯波を見て補陀落に思いを馳せるとは・・・。(てつお)

那智子、正明、由紀子

外つ国で活きし武道や鉄線花           山根 眞五

鉄線花のもつ花のイメージと武道が合っています。(伊葉)

薔薇の風ハミングで押す車椅子          野口 日記

毎年、車椅子の母を薔薇園に連れ出す。母の好きな歌をハミングする。母の余生もおだやかだ。(茂喜)

介護の大変さも優しい方は、薔薇の香りとハミング迄出て素晴らしいなぁ(孝子)

介護する人される人の穏やかな様子が目に浮かびます(智子)

紀美子

心太突きて本音を少し言ふ            熊谷 佳久子

言いたかった本音を心太の力を借りてちょっともらす(肇)。

いじらしい。(手鞠)

「心太」と「本音を少しいふ」の取り合わせがとてもよく響き合っている。(桂一)

本音もほどほどが良いかも?「心太」との取り合わせが素晴らしい(憲史)

正治

遠雷や検査着で待つ控室             泰山木

緊張と不安な気持ちが季語の遠雷に良く出ていると思います。(孝子)

検査待ちをしている時の不安な気持ちが季語の遠雷で際立ちます(律子)

博嗣

刻止めて小魚狙ふ翡翠かな            金子 正治

小魚狙ふ翡翠の緊張感が「刻止めて」でよく表現されている。(桂一)

翡翠の姿に、こちらも息を殺してしまいました。(日記)

沖縄忌残波岬の魔除獅子             中川 手鞠

6月23日は恒例行事なのかもしれませんが、具体的な地名や名所で詠まれると惹かれます。(順一)

遙かなる我がマドンナやソーダ水         金子 肇

三枝子

韓国人(からくにびと)の裳裾のやうなダチュラ咲く  室 明

面白い形容。(佳久子)

黒潮の湧きて白波初鰹              合田 憲史

生きのいい初鰹が目に浮かびます。(泰山木)

シナトラの月へ行く歌業平忌           佐藤 博子

玲子、立哉、博嗣

薫風のゆらす水面に魚の影            宮川 陽子

水面を薫風が揺らしている様子がよいです。水面も魚影も綺麗に見えてきます。(相・恵美子)

ピアニスト音を磨いて夏の星           森野 美穂

正明

でで虫や矢鱈に急かす電子音           てつお

コンビニの自動支払いやATM、ちょっと間が空くと次の動作を繰り返し指示されます。でで虫の季語でユーモラスな句になりました。(恭子)

美穂

ドローンの軍務は哀し遠花火           小髙 久丹子

勢津子

ででむしの侍るや奈良坂峠越           今井 温子

平城京と京都を結ぶ歴史ある地、蝸牛君が効いてます(早・恵美子)

道代

藤垂れて吾深海の魚となる            中村 光男

可視光線はほぼ遮断され、暗黒の世界の藤の花。安房直子の『南の島の魔法の話』における「木の葉の魚」や有馬先生の「天草の海は平に花朱欒」を想起いたしました。(国勇)

大きな藤棚の下から見上げるそこは紫色の深海、、、。幻想的な世界に浸っている作者の姿が浮かびます。(明)

実際に藤の下に立って、まさしくその感を深くしました。(てつお)

由紀子

汗拭ひ浄土見むとて南大門            染葉 三枝子

道代

文字摺草児のどうしての矢継ぎ早         榑林 匠子

大人でも文字摺草はどうしてと思う(肇)。

児のどうして?は待ったなしにエンドレスで続きます。それが螺旋状にいっぱい咲く文字摺草と相呼応して面白いです(律子)

幼子のどうしてどうして攻撃は成長の証し?(智子)

霊峰をそびらに月毛の仔馬立つ          斎川 玲奈

仔馬が生まれる瞬間が見えて、霊峰という言葉でより神聖さを感じる句ですね。(道代)

荘厳な霊峰と仔馬の対比が絶妙。(てつお)

木を育て土を育てし新茶酌む           土屋 香誉子

勢津子

社殿への道のりのある青嵐            山口 眞登美

鳥居をくぐり神域に入ったはずだが社殿は遠い。鎮守の杜の深さは心を清めてゆく道のりであろう。(ゆかり)

残照のしばし留まる菖蒲園            竹田 正明

菖蒲があまり美しいので、夕日が沈むのを遅らせていると思った。美しい菖蒲であったのでしょうね(芳彦)

岩絵具を重ねて微妙な色合いを表現する、日本画の世界。幸せなひとときだった事でしょう。(博子)

万記子、春野

浅みどり色を重ねて手毬花            合田 智子

三枝子

シャツの背にポンコツの文字聖五月        内村 恭子

ポンコツと聖五月の取り合わせ(肇)。

玲子

大学の図書館へ緑の並木             妹尾 茂喜

博嗣

竹落葉飛び交ふは可翁の雀            妹尾 茂喜

可翁の雀、本物は見たことないですが、季語が効いています(早・恵美子)

河骨を動かしてゐる真鯉かな           荒川 勢津子

情景が良く見えます(百り子)

水面下の真鯉が河骨を動かしている、という捉え方が面白いと思います(律子)

骨の金色の鯉の艶との対比。色が美しい。「動かしてゐる」がいいと思いました。(ユリ子)

水無月や同行二人の傘と鈴            石川 由紀子

しとしと雨の中をお遍路に回られましたか。傘も杖も濡れて重くなったことでしょう。でも同行二人、御大師様が寄り添います。(志昴女)

薔薇垣に群れる小蜂の翅音かな          阿部 旭

神乗するごと神馬動かぬ五月闇          原 道代

神馬が動かないのは、我々に見えないけれど今、神様がお乗りになっているからかもしれない、という発想に説得力があります。神馬の白さが五月闇に際立ちます。(恭子)

クレマチスあさむらさきの嘘をつく        佐藤 律子

「嘘」の色付け、真っ黒な嘘もあるかも。(孝雄)

クレマチスは確かにそんな感じがする。(光男)

昼は夜は、どんな嘘をつくのか?(眞五)

あさむらさき色の嘘。想像がふくらみます。(百り子)

楓、紀美子、(早・恵美子)

諸事後回し間食にシャーベット          町田 博嗣

香誉子

時の日の昼餉知らせる野良時計          合田 智子

万記子

蛍飛ぶ旅に読みたる点と線            早川 恵美子

蛍飛ぶ、旅、点と線、相互の言葉の関係と印象が強い感じがします。(百り子)

薔薇園の木陰に風の交差点            長濱 武夫

薔薇があちこちに咲いている。木陰のベンチから園内を見渡せる。風は気ままに交差する。(茂喜)

風に立ち止まって見たのかもしれません。「交差点」とは風が目に見えるようです。(順一)

「風の交差点」がほっとした心情を巧みに表現していて素晴らしい(憲史)

正明

真白き帆立夏の風をとらえけり          浅井 貞郎

俳句のお手本の様な掲句   (温子)

雨宿り吾の他には蝸牛              竹田 正明

楽しい句です(夏江)

一茶の心境 (温子)

どん尻にならぶコロッケ街薄暑          垣内 孝雄

夏江

天蚕の碧の華やぎ透綾織             斎川 玲奈

紀美子

以上

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