フランス通信

 
*5月に( AU MOIS DE MAI )

 5月は、1日の「メーデー、勤労者の祭り」(Fête du Travail)で始まりました。この日は1560年、時のフランス王シャルル9世以来続く伝統の「スズラン祭り」(Fête du Muguet)でもあり、 幸運をもたらす花のスズランを1輪、2輪と贈る慣わしがあります。 藤

 5月には爽やかな若葉、紫色や紅白の花が春の盛りを唄っているかのようです。藤(la glycine)やリラ(le lilas)の紫色や白い花もあります。紫色の花といえば桐の花(le paulownia)も見頃、エトワール広場からカルノ通り(Avenue Carnot)や13区の区役所前のイタリー広場(Place d’Italie)、同様に20区の区役所前のガンベッタ広場(Place Gambetta)など、光によってはボーっと霞んだ様に見え、心が和みます。

 マロニエ(le marronnier)や西洋サンザシ(l’aubépine)には白い花と紅い花があります。紫がかった濃いピンク色の花蘇芳(どなたかフランス語名を教えて下さい)も春らしい華やかさがあります。花壇には色とりどりにチューリップ(la tulipe)が咲いています。

 「花玉春爛」、いずれもわざわざ遠く迄足を運ばなくても、メトロの切符1枚のパリ市内で十分楽しめます。シャンゼリゼ大通り(Avenue des Champs-Elysées)の中程ロン・ポアン(Rond-Point des Champs-Elysees)からコンコルド広場(Place de la Concorde)、チュイルリー公園(Jardin des Tuileries)、モンソー公園(Parc de Monceau)、トロカデロ広場(Place du Trocadéro)からパッシー(Passy)周辺の16区の住宅街、ビュット・ショーモン公園(Parc des Buttes Chaumont)、モンスリー公園(Parc Montsouris)とパリ国際大学都市(Cité Internationale Universitaire de Paris)、リュクサンブール公園(Jardin du Luxembourg)・・・

 好天の日には、のんびりと春の散策をお勧めします。疲れたらカフェに入って一休み、シャンパンの一杯、冷たいビールの一杯もよいものです。もしも田舎に出掛けるのでしたら、野や畑に真紅のヒナゲシ(le coquelicot)が風に揺れ、そこにモネの描く景色が見られるでしょう。暦を見ればもう「立夏」、未だに肌寒さの残る冴えない日もありますが、そうこうしているうちに、いつの間にか春が通り抜け、或る日突然に夏がやって来る、そんな気配も感じられます。事実5月4日から5日間程はパリでも日中の気温が25℃を超える暑い日が続きました。

* 「税関吏ルッソー“アーカイックな無知”」展
    ( Expo  ≪ LE DOUANIER ROUSSEAU -L’ INNOCENCE RCHAIQUE ≫ )

 熱帯植物が生い茂る密林に動物が争う画で知られるアンリ・ルッソー(Henri Rousseau(1844-1910))は、質素なブリキ屋の息子で、税関の一職員として働いていたことから、後に詩人アルフレッド・ジャリィ(Alfred Jarry(1873-1907))から「税関吏」とあだ名のように呼ばれる様になりました。

 ジャングルの絵を描いても、フランスからは一歩も外へ出た事がなく、いえ、パリの植物園から遠くへは行った事がなく、新聞や雑誌に載る植民地の様子から想像に想像を重ね、パリの自然科学博物館にある剥製の動物と熱帯植物園の樹木を参考に全く根拠のない伝説めいたものを作り上げては、1870年頃から絵を描くようになりました。絵を習ったことも、ましてや遠近法や明暗法も知らず、その奇抜な構図や色彩は1885年の「アンデパンダン展」(Salon des indépendants de 1885)で受賞してから世間に知られるところとなりましたが、当初は嘲笑され、皮肉られ、酷評を受けました。1891年の作品「驚き(Surpris)」は、雷雨に慄く虎を描いたもので、ジャングル・シリーズの第1作ですが、実は子供の本にあった挿絵を複写したと云われます。

 1893年、絵に専念しようと税関吏を退職しましたが、2度の結婚で7人もの子供が出来、その中の6人を亡くしたり、金銭的にも苦境にあり、作品も使った絵の具の色の数で売値を決めることにしていましたので、自ずと色彩豊かなものが多く出来上がりました。しかし詩人のアポリネール(Guillaume Apollinaire(1880-1918))やピカソ(Pablo Picasso(1881-1973))達と知り合い、仲間受けをするうちに、むしろその独特な画風はピカソばかりでなく、後のデ・キリコやダリ、カンディンスキー、ボテロにまで大きな影響を与えるようになりました。

 1910年、ジャングルの中、長椅子に横たわるオリンピアを描いた「夢(la reve)」という神秘的な、神聖な儀式とも見える作品を最後に「税関吏ルッソー」は壊疽でこの世を去りました。(オルセー美術館(Musée d’ Orsay)にて2016年7月17日迄、月曜休館、毎日09時30-18時00、木曜日は21時45迄、入場料12ユーロ)

*「野外のアトリエ“ノルマンディの印象派の画家達”」展
    ( Exp. ≪ L’ ATELIER EN PLEIN
AIR -LES IMPRESSIONNISTES EN NORMANDIE ≫ )

 4月中旬から「ノルマンディ印象派フェスティバル」が始まり、ルーアン、ジベルニィ、ルアーブルなどノルマンディ各地で印象派展が開かれていますが、パリでもジャックマール・アンドレ美術館にてクロード・モネの逆光を表現した「ヴァランジェヴィルの教会」や、ギュスタヴ・カイユボットの”トルーヴィルのヨットレース“などフランス初公開の作品など50点近くを展示しています。

 (Les toiles ≪ l’Eglise de Varengeville à contre jour ≫ de Claude Monet et ≪ Régates en mer à Trouville ≫ de Gustave Caillebotte sont montrées pour la première fois en France.)Musée Jacquemart-André (158,Blvd.Haussmann,Paris 8e - Métro ≪ Miromesnil ≫)

2016年7月25日迄 毎日10時-18時、月曜日20時30迄、入場料12ユーロ

*アトリエの中“写真が捉えたアーティスト、アングルからジェフ・クーンズまで”」展
    ( Expo. ≪ DANS L’ ATELIER - L’ ARTISTE PHOTOGRAPHIE, D’ INGRES A JEFF KOONS ≫ )

 閉ざされたアトリエに入り、アーティストの最も近くで、ひたすら制作に励む姿を隠すことなく捉えた、アングルからピカソ、マチス、ザッキン、ブランクジ、カミーユ・クローデル、ジャコメティ、、、、そしてクーンズに至る興味深い400点余りの写真を展示、同時に撮影したカメラマン自身もまたアーティストであることを証明する展示会です。

 2016年7月17日迄、プチ・パレにて : Petit Palais (Avenue Winston Churchill, Paris 8e Métro ≪ Champs-Elysées-Clemenceau ≫) 月曜日を除く毎日10時-18時、金曜日21時迄、入場料10ユーロ

*シャンゼリセ通りが歩行者天国に( LA PIETONNISATION DES CHAMPS-ELYSEES )

 パリ市は毎月第一日曜日にシャンゼリゼ大通りを歩行者天国にする事に決定、5月1日はメーデーでしたので5月8日の日曜日から実施しました。(L’ avenue est piétonnisée tous les premiers dimanches du mois.) この他にも市内9ケ所を週末や祭日に歩行者に開放する計画が進められています。

 又既にご存知の通り、市内の各美術館は毎月第一日曜日は入場無料です。

ホームへもどる パリ通信目次へ戻る
2016年 5月11日 Sainte Estelle  日の出 06時14分・日の入21時20分        パリ朝夕14℃・日中20℃曇天、ニース17/20℃晴天、ストラスブール11/24℃曇天
*パリ・ヴェルサイユ地区の学校は4月17日から5月1日迄春休みです。       「カタツムリ食べはしないよ頭出せ」  安芸寛(俳号) 皆様どうぞお元気で

天為俳句会
2016 Copyright© 菅 佳夫 All rights reserved.