フランス通信

 
*8月に ( AU MOIS D’ AOUT )

「8月」と云えば「真夏」を感じるのですが、“夏至”(6月21日)には日の出05時47・日の入21時57であったのが、さすがに“立秋”を迎えて、日の出が06時32・日の入21時19と、毎日2分、3分と日が短くなり、陽光も少しずつ斜めになるのを感じて、何か淋しいような気がします。
アンズ それでも世間は「夏休み」の真っ最中、いつもの駅へ行っても無料新聞は休刊でスタンドに置いてなく、売店<Relay>も閉まっていて新聞も買えず、電車は20分に1本、電車に乗るとガランとした車内には、既にどこかで日焼けしてきた肌もあらわに得意げな女性や、コットン・パンツにポロシャツ、腕には見てくれと云わんばかりの入れ墨、気楽なスタイルの若者が目立ち、ショート・パンツにTシャツ、スニーカーを履き、水の瓶を手にした観光客の話す耳慣れない外国語が賑やかに聞こえてきます。いつもと違うそんな雰囲気も好いものですが、このところ物騒な事件も相次ぎ、“非常事態宣言”が更に6ケ月、来年1月26日迄延長され(la prolongation de l’ état d’ urgence pour six mois) 何となく落ち着かない毎日であることも事実です。しかし今夏は40℃に達するようなカニキュル(la canicule酷暑)に襲われることもなく、比較的に凌ぎ易い夏で助かります。鳥達も気持ちがよいのでしょう、クロツグミ(le merle)が声高く歌っています。テラスの杏子が今夏も実を付けました。

*地方で開催の展覧会(LES EXPOSITIONS : A VOIR DANS LA REGION) : 夏休み中は各種の展覧会もヴァカンス先きの各地で開催されていますので、その中の幾つかをご紹介しましょう。

 ・ルーアン「印象派画家の生活の場面を描いた作品展」(Expo. ≪ Scenes de la vie impressionniste ≫ à Rouen) 

“三輪木馬に乗るジャン・モネ(妻カミーユとの間に生まれた長男)”(クロード・モネ(1872))、“白いショールのリズ(モデルで恋人)”(ルノワール(1872))、“ワイト島のユジェーヌ・マネ(エドゥアール・マネの弟)” (ベルテ・モリゾ(1875))等々画家達の家庭的、友好的な毎日の情景、或いは親しい人の肖像画を集めて展示しています。ルーアン美術館( Musée des Beaux-Arts de Rouen)、9月26日迄 火曜日休館、毎日10時―18時、入場料11?、 詳細は http://www.rouen-musees.com

 ・ロデス(アヴェロン)「スーラ―ジュ美術館のピカソ」展(Expo. ≪ Picasso au musée Soulages ≫ à Rodez )

嘗て家畜の競売(les foires aux bestiaux)で賑わったロデスに、この町の生まれで97才の現在も抽象画の大家であり、舞台装置も手掛けるピエール・スーラージュ(Pierre Soulages(1919- ))を 記念して2014年に開館した“スーラージュ美術館”で、スーラ―ジュ自身の選択になるピカソの家族の情景や生活を共にした女性達の肖像などの作品約100点と写真30点余りを展示して評判です。 パリのピカソ美術館からの貸し出しに加えてピカソの家族からの提供を受け、殆ど一般には未公開の作品が多くみられますが、特にピカソが1954年に描いた「絵を描くクロード、フランソワーズとパロマ」 (≪ Claude dessinant, Françoise et Paloma- 17 mai 1954 ≫)と題した作品は、1946年に一緒になったフランソワーズとの間に、ピカソ66才の1947年に息子のクロードが、1949年には娘パロマが生まれ、 このピカソ一家の日常生活の一場面、絵を描く息子とそれを見る娘、そして2人の子供を優しく抱きかかえる様な母親の愛情豊かな絵画が話題です。 ( Scène de famille touchante, ce tableau représentant deux enfants de Picasso couvés par leur mère n’avait jamais été montré .)9月25日迄、月曜日14時―19時、毎日10時―19時、入場料11?、 http://musee-soulages.rodezagglo.fr/

 ・ルアーヴル「ブーダン・光のアトリエ」展(Expo. ≪ Boudin, l’atelier de la lumière  ≫ au Havre) 

オンフルールに生まれたユジェ―ヌ・ブーダン(1824-1898)は、始めはバルビゾン派の影響で、室内や影ばかりを描いて「私は光に飢えている」と云っていたのでしたが、故郷ノルマンディの空と海を見て発奮、 海岸、海水浴客、港、船、等々、明るい風景を描くようになり、印象主義の先駆者(la précurseur de l’ im-pressionnisme)と呼ばれ、印象派を代表するモネもブーダンを師と仰ぎ、コロやクールベも同様にブーダンを敬っていました。“トル―ヴィルの海岸(la plage de Trouville(1899))等多数展示しています。ルアーヴルのアンドレ・マルロー近代美術館( Musée André -Malraux du Havre)、9月26日迄、入場料10ユーロ www.muma-lehavre.fr

 ・カンペール「オルセー美術館の自画像」展 (Expo. ≪ Autoportraits du musée d’ Orsay ≫ a Quimper) 

既にナンシーやクレルモン・フェランにて開催の巡回展、セザンヌ、ヴァン・ゴッホ、クロード・モネ、ゴーギャン、等々、パリのオルセー美術館所蔵の1848年から1914年迄のコレクションから、画家達が描いた自画像ばかりを展示しています。10月2日迄、カンペール美術館( Musée des Beaux-Arts de Quimper)毎日10時―18時、入場料6?、www.mbaq.fr

 ・オルナン「クールベと印象主義」展 (Expo. ≪ Courbet et l’impressionnisme ≫ à Ornans(Doubs)) 

パリから約430㎞、ブザンソンから25㎞にある小さな村オルナンに生まれたギュスタヴ・クールベ(1819-1877)は、法律を勉強する為パリへ上京しますが、ルーヴルでダヴィッドの大作“ナポレオンの戴冠式”(le Sacre de Napoléon )に圧倒され、自分だって出来ると気負い、故郷に帰るや315㎝x668㎝の”オルナンの埋葬式“(un enterrement à Ornans(1849))を描いて出展、注目を集めて以来画家として活躍しました。そのオルナンのルー川(la Loue)沿いの生家が改築され、2011年に開館した”クールベ美術館“が75点の作品と沢山の資料を展示しています。10月17日迄、 Musée Courbet, 25290 Ornanswww.musee-courbet.fr

 ・エクス・アン・プロヴァンス「ターナーと色彩」展 (Expo. ≪ Turner et la couleur ≫ à a Aix-en-Provence ≫ 

暗いロンドンのコヴェント・ガーデンで1775年に生まれたウイリアム・ターナーは、多くの旅を通して光と色を求め続け、チェルシーに引き揚げ、最後に“太陽は神である”(le Soleil est Dieu)と云って亡くなった 1851年迄の光と色に溢れる作品“ウェールズのドルバダーン城”(1800)から“真っ赤な太陽(マインツの思い出)”(1835頃)、“荒海、難破船”(1840頃)、等々、素描、油絵、水彩画、120点を集めて展示しています。 9月18日迄、 Hôtel de Caumont centre d’ art にて。
www.caumont-centredart.com

*メードイン・パリのビール ( LA BIERE ≪ MADE IN PARIS ≫)

此の度パリとパリ近郊産の材料を使用(但しホップ(le houblon)だけはどうしてもアルザス産)、30才の3人の若者が、若い人達の人気の界隈オーベルカンフ(Oberkampf)で醸造に成功、 ≪ Bapbap ≫のラベルで売り出しました。33clの小瓶で年間60万本を目指し、既にカフェやビストロで味わうことが出来るとのこと。ブティックは79, Rue Saint-Maur, Paris 11e, 毎日18時―20時、土曜日は15時から開いています。お試し下さい。古代より中世期迄は”セルヴォアーズ(la cervoise)“の名で親しまれ、15世紀に”ビール(la biere)“と名称が統一され、嘗てパリは一番のビール都市でしたが、アルザス地方に押され、”アル中問題“が大いに騒がれた頃から、パリからビール製造業者(le brasseur)が姿を消していたものです。www.bapbap.paris

* 運賃値上げ(パリ地区)

メトロ・バス1,90 ?(市内均一)カルネ(10枚まとめ買い)14,50?、*既にお持ちの値上がり前の切符は常に有効です。

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2016年8月8日Saint Dominique :日の出06時34分・日の入21時17分       パリ朝夕16℃/日中24℃曇天、ニース22/29℃晴天、ストラスブール13/29℃曇天
昨日は「立秋」、その前夜、こちらでは「星の夜」“la nuit des etoiles”と言います。     「眠れずにテラスに出れば星月夜」(安芸寛) 皆様どうぞお元気で  菅 佳夫

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