フランス通信

 
*夏の終わり( LA FIN DE L’ ETE ) ジャン・コクトー 

 先信にて「今夏はカニキュル(la canicule猛暑)に襲われることもなく比較的に凌ぎ易い夏で助かります。」とお伝えしましたが、確かに陽光は少しずつ斜めになるのを感じながらも、8月22日からは30℃を超え、時には40℃に達する“夏”となって9月を迎えました。しかし、さすがに夜気がヒンヤリとして、秋になろうとしているのを感じます。 バルコンに四十雀(la mésange)が4羽、餌をついばみにやってきました。
              写真:「ミリーラフォレの薬草院チャペルの壁画  ジャン・コクトーの薬草と猫」

*新学年 ( LA RENTREE SCOLAIRE )

 9月1日、全国一斉に学校が始まりました。日本では4月に始まる新学年に該当します。夕刻のTV ニュースでは、真新しいカバンを背負って、お父さん、お母さんに付き添われた新入生達、お母さんと別れるのが嫌だとベソをかいている子供など、恒例の登校風景が映りました。
 毎年のことですが、必要な入学手続きもせずに皆と同じに笑顔で登校して、登録されていないからと断られている親子も映ります。未開の土地から移住してきたばかりなのでしょうか、別に悪げ無く、手続きなるものを知らないのでしょう、年齢に達したから近くの学校へ行けばよいと思ったに違いありません。いえ、これを“差別”(la discrimination)と騒がれたら厄介な事と学校の職員も気を遣います。
 今年は新学年用に揃える学用品などを購入する為の国の援助として「新学年手当」(ARS : l’allocation de rentrée scolaire)が6才から10才の子供1人当り363€、11才―14才は383,03€、15才―18才には396,29€が支給されました。学用品大売り出しのスーパーCでは“例えばBICの4色ボールペンは1,08€、他のスーパーLでは1,38€、スーパーAで買えば1,65€もします!”とあからさまな広告を新聞に載せたり、賑やかです。(1€=約115円)
 こうして新学年が始まると、電車やバスも普段のダイヤに戻り、無料新聞も複刊してスタンドに並び、車内や歩道に紙屑が増えて風に舞い、物乞いのムッシューも何時戻って来たのか、いつもの場所に座って“ボンジュール”と云っています。マロニエの大きな葉が茶色を帯びて、早くも風にカサカサと乾いた音を立て始めました。

*ヨーロッパ文化遺産の日( LES JOURNEES EUROPEENNES DU PATRIMOINE )

 文化遺産に指定・登録された、普段は入ることが出来ない全国約1200ヶ所の建物や施設が、今年は9月17日と18日のウイークエンドに無料で一般公開されます。
 2012年就任間もないオランド大統領は、最も人気のある大統領府のエリゼ宮(le Palais de l’Elysée)を自ら案内し、その挨拶の中で「この場所を占める者は大統領たりとも賃借人に過ぎない。家主はフランス国民である。」(Celui ou celle qui demain occupera ce lieu, ceux qui l’ont déjà occupé comme président n’en étaient que des locataires, les propriétaires sont les Français.)と述べたのが印象に残っています。
 その他首相官邸のマティニョン(l’Hôtel Matignon)や国立病院、警視庁特捜部のケ・デ・ゾルフェーヴル(36 quai des Orfèvres)、パリ市交通営団(RATP)の運転指令室や車庫、王家代々の墓所サン・ドニ大聖堂(la basilique de Saint-Denis)等々、人一倍好奇心の強いフランス人はもとより、この機会に沢山の外国人も朝早くから行列を作ります。

 *セーヌに浮かぶパリの4つ星ホテル ( UN 4 ETOILES PARISIEN FLOTTANT SUR LA SEINE )

 その名は“オフ・パリ・セーヌ”、54室にスイート・ルームが4つ、バー・レストラン、80m2のテラス、プールが備わり、メトロの5号線がセーヌの橋を渡る辺り、オーステルリッツ河岸(Quai d’ Austerlitz)に浮かんでいます。宿泊料金は1泊160€から、朝食19€、バーは17時から、レストランは19時から開いています。
  ノルマンディ地方ディエップの造船所で造られた鋼鉄製の2艙の船体をルーアンで整備、内装を施して形を整え、ゆっくりとセーヌ河をパリまで上り、係留したもので、パリでは初めてのフローティング・ホテルです。技術的に上手く固定してあるので大丈夫とは思いますが、船酔いなさる方にはどうでしょうか。お試し下さい。

OFF PARIS SEINE, 20-22, Port d’Austerlitz, 75013 Paris (01 4406 6265 offparisseine.com)

 近くのミッテラン国立図書館の足元にあるスイミング・プール“ジョゼフィーヌ・ベーカー”も、ノルマンディで造った鉄とコンクリートの箱(caisson ケッソン)を船でセーヌを曳航、現在のフランソワ・モーリャック河岸に接岸、浮島の様に設置して2006年にオープンしたものです。

*8年前にロンドンで行方不明になった猫がパリ郊外で見つかり飼い主のもとへ( Il y a 8 ans que les Londoniens avaient perdu la trace de leur chatte et ils l’ont retrouvée et récupérée dans le banlieu parisien....)

   2008年の大晦日、ロンドン在住のシーンとマーナ夫妻のもとから愛猫“ムーン・ユニット”(Moon Unit)が行方不明となりました。数ケ月に亘り、八方手を尽くして探しましたが解らず、結局は諦めるしかありませんでした。
 ところが今年の5月、パリ郊外アルパジョンに家を買ったローランスさんが、庭に1匹の猫が棲みついているのを見つけ、歯も毛も抜けて弱っている様子に、動物愛護保護団体ADADに届け出ました。知らせを受けてADADはこの猫を引き取り、必要な治療を施した上で、飼い主探しを始めました。首輪の名札の番号はフランスで該当するものは無く、ヨーロッパ各地の団体に手を広げて照会したところ、写真を見たロンドンのシーンとマーナ夫妻が、目から鼻にかけての白い毛、その他の特徴から、まさか、でも“ムーン・ユニット”に間違いない、と名乗ってきたのです。
 この7月末、夫妻が来仏、“ムーン・ユニット”は8年ぶりに飼い主に抱かれてロンドンへ帰って行きました。しかし、どうやってパリまでやって来たのか。パリへも来たことが無かった夫婦の猫が何故パリの郊外に棲みついたのか、、多くの疑問が残りますが、それは“ムーン・ユニット”だけが知っている、というハッピー・エンドのお話です。めでたし!めでたし!

*美術館の入場者記録など・・・( LES MUSEES LES PLUS FREQUENTES・・・)

 物騒なテロ事件などが相次ぎ、「非常事態宣言」(l’ état d’ urgence)が来年の1月26日迄延長されている中、全国約8000軒の国立、市立、私立などの美術館の入場者数は文化省の調べでは過去1年間に、ルーヴル美術館がトップで830万人、次がヴェルサイユ宮の740万人、オルセー美術館が340万人、ポンピドーセンター300万人、グラン・パレ170万人と続き、地方のルーヴル・ランスは53万9千人、メッツのポンピドーが33万700人、、、、との記録です。
 因みに日本人観光客は46,2%減、ということは半減したことになります。ついでに調査機関IPSOSによれば、今夏は何処へも行かなかったフランス人が43%もおり、バカンスに出掛けたフランス人の行く先は64%が国内だったそうです。

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2016年9月9日Saint Alain:日の出07時19分・日の入20時15分       パリ朝夕14℃/日中27℃曇天、ニース21/29℃晴天、ストラスブール16/29℃曇天
「les juillettistes」7月に休暇を取る人 「les aoûtiens」8月に休暇を取る人      「冷ややかな大気を肌に秋を知る」(安芸寛) 皆様どうぞお元気で  菅 佳夫

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