天為ネット句会報2025年4月

 

天為インターネット句会2025年4月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <福永法弘同人会会長選 特選句>

清明や肩章光る御垣守               阿部 旭

肩章に、天皇の御陵を守る誇りが光る。(法弘)

腕の良い垣守さんには肩章を光らせる清明のちから。(伊葉)

立哉、春野

町会へ春泥つけて集ひけり             相沢 恵美子

舗装されてないぬかるむ道を歩いてやってくる町内の人たち。昭和20年代、30年代の活気ある町内会の光景。(法弘)          

  <福永法弘同人会会長選 入選句>

小さき手で草履を揃へ雛の客            長岡 ふみ

実にほほえましい。(法弘)

今日は雛祭りのおよばれだから行儀良くしなきゃと言って小さな子が草履をそろえている、そんな景が見える。(光男)

雛まつりのお呼ばれで着物を着せてもらい、ちょっとお姉さんになった仕草が可愛らしい。(ゆかり)

可愛らしい所作が目に浮かぶ(眞五)

かわいい雛の客は礼儀も正しい。(泰一)

躾の良さと共に、仕草が可愛らしく感じます。(相・恵美子)

雛祭の日、育ちの良いお子の一挙手一投足が目に浮かびます(憲史)

女の子にとってハレの日の雛祭り。おとなのする様を小さい時から見て育つ。その日の特別感がそんな仕草にも感じられます(律子)

陽子、勢津子、玲奈、立哉、道代、日記

幌あぐるバギーに双子風光る            垣内 孝雄

子育ては大変、双子だと倍大変だろう。バギーも二人を乗せる大型のもの。しかし、可愛さもまた倍だ。(法弘)

風光るが効いています。(肇)

幌をあげたら、双子ちゃん。驚きと可愛らしさと…(美穂)

史子、尚

今年また狛犬の前苗木売              永井 玲子

毎年、楽しみにしている苗木市。おなじみの店がいつもと同じ狛犬の前にある。 (法弘)

苗木売のような季節の商売は毎年同じ時期に同じ場所に来ることで顧客の信頼を得る。狛犬の前、に俳味がある。(恭子)

福島の古殿町の苗木市を思い浮かべました。正規

伊葉

配役に「スカした男」昭和の日           中川 手鞠

古い映画が好きなので、「スカした男」というのがどんな感じか見当がつく。赤木圭一郎や石原裕次郎の映画に出てきた、似合わないのに格好つけている脇役。 (法弘)

昭和ですねぇ  (幸子)

昔の映画のワンシーンを思い浮かべました(侑里)

香誉子

恋猫へ朱雀大路の門ひらく             明隅 礼子

なんとも大げさな恋。猫というより光源氏の恋のレベル。朱雀大路は羅城門から朱雀門までの都のメインストリート。どちらの門にしても、王朝のみやび。(法弘)

都のメインストリートの門が開いた。恋猫は朱雀大路をまっしぐらにやんごとなきお相手を目指すのだろう。スケールの大きいお伽話。(ゆかり)

良いですね~暫しタイムスリップさせて頂きました(早・恵美子)

恋猫の大袈裟な表現がとても面白いと思います。(ユリ子)

子のつくは昭和の生まれ桃の花           木村 史子

平成や令和生れの若い女の子はキラキラネームばかりで、名前の下に「子」が付くのはみんな「昭和の子」。昭和は確実に遠ざかっている。(法弘)

子のつく子は確かに多く、我が子にはあえて子をつけなかった。主体性の大きい人になってほしいものだ。(茂喜)

最近はおしゃれな読めない名前が多いですね(智子)

酢味噌より目玉飛び出す蛍烏賊           阿部 旭

ホタルイカの酢味噌和え。美味だが、よく見るとグロテスクかも。 (法弘)

眼玉確かに取らずに和えますよね~笑っちゃいました!(早・恵美子)

志昴女

値札大きく四等分の春キャベツ           須田 真弓

物価の高騰が半端じゃない。インフレの予感。春キャベツも四等分したものをやっと買えるありさまだ。「大きな」値札が意味深。(法弘)

天候による価格変動も大きい農産物 「四等分」にせざるを得ない価格 それも大書して 昨今の物価高騰が如実です (久丹子)

目薬に口開く癖や日の永き             上脇 立哉

目薬を差すには顔を上に向けたら、自然と口が開く。のどかな感じ。(法弘)

春一番ラフマニノフのピアノ曲           森山 ユリ子

<ラフマニノフには白夜の教会が似合ふ>(七田谷まりうす)という有名な句があるが、春一番にもラフマニノフは似合うようだ。(法弘)

   <互 選 句>

のどかさの影に言はれぬ不安かな          小高 久丹子

春長閑な心ものびのびとする日和なのに、何故か不安にも成りますね(孝子)

温子

春の空浮かぶ衛星銀色に              中川 雅司

香誉子

鹿の子に幾たび星の降る夜かな           西脇 はま子

志昴女、夏江

干鰈鳥の子色の空映し               向田 敏

鳥の子色?卵殻の色と知って、黄砂降る空の見立てかも・・・と、大胆な発想をしてしまいました。(博子)

卓袱台に草餅ひとつ母の留守            中村 光男

母の温かさと同時に、子どもの寂しさもよく伝わってきました。敏

いつもいる母がいない帰宅時、おやつの草餅がぽつんと置かれて、、、景が浮かびます。ふみ

卓袱台を愛用なさるご家庭、お母さまの「思いやり」がしみじみ味わえる句。(孝雄)

学校から帰ると、、、都心の一人っ子。 ランドセルを下ろすとすぐにゲーム。 好きな草餅が救いか。(郁文)

昼下がり学校から帰ったらおやつに草餅。母の愛情と季節感も溢れていますね(憲史)

玲奈

陽春やエロスの母はアフロディテ          金子 肇

ギリシャ神話の愛と美の象徴のようなアフロディテとエロス、季語がピッタリですね。ふみ

谷戸の村ゆく路々の雪解かな            伊藤 正規

朋子

コンクリの割れ目うづめて犬ふぐり         土屋 尚

正明

春霖や源氏絵巻の十五帖              冨士原 博美

十五帖はどのお姫様かと思えば、末摘花。長雨とはいえ春の明るさがある季語に、源氏の優しさも感じます。(博子)

故郷の夢ばかり見て遍路杖             今井 温子

私も家内と連れ添って四年余り掛けて、歩き遍路(区切り打ち)をしました(憲史)

香誉子

ハレルヤと泰山木の花咲けり            森山 ユリ子

はま子

対峙する書と書遅日の祖父の部屋          町田 博嗣

書と書の対峙がいいなと思いました。(美穂)

芳彦

池の亀鳴くまで待つとしゃがむ子も         児島 春野

かわいらしい句です。  (郁文)

逝きし友病む友もあり蕗の薹            嶋田 夏江

紀美子

思ふこと声に届かず鳥の恋             佐藤 律子

玲奈

玉葱の輪切り輪廻の透きとほる           小栗 百り子

「玉葱の輪切り」姿を「生き変わり、死に変わり」する輪廻と重ねたところが面白い。桂一

玉葱から輪廻まで見通した深さ(敏晴)

玉葱の輪切りの切り口に輪廻を見るとは意外性があるが納得感がある。下五「透きとほる」が秀逸。(博行)

芳彦

恋猫の七面坂を七転び               松山 芳彦

手鞠

二人掛石のベンチの温みかな            合田 智子

ほのぼのとした温みのある(眞五)

郎女の白きブラウス風光る             垣内 孝雄

紀美子

藍甕の泡沸沸と春の声               須田 真弓

藍甕のふつふつと湧き上がる泡には生命感を感じるがそれを春の声と捉えたところに共感する。桂一

泡立ちの音はこれから夏に向かって藍色のグラデーションが始まるまさしく春の音。ふみ

並んいる甕が春を詠んでいます。  (幸子)

泡が沸々している様子を「春の声」と言っているのに惹かれました。(博美)

藍甕には神が宿るとか。神様のお目覚めでしょうか。(泰一)

生きているような藍の発酵過程は、生物の成長する春にふさわしいです。(春野)

那智子

御座浦の海女の笛よぶ潮仏             荒木 那智子

「海女の笛呼ぶ潮仏」の修辞に強く惹かれる。(孝雄)

中7が効いていて潮仏の句を上手く詠み込んでいます。(相・恵美子)

海女の笛が潮仏と下5に持ってくるところが哀愁を感じ御座浦への挨拶が利いているといただきました。余慶

雅司、朋子

春炬燵テレビ講座にうなづいて           土屋 香誉子

テレビ講座を見ているひとりの時間ですね。下5に実感が込められています。(相・恵美子)

陽子

万愚節火星の地図に宝島              西脇 はま子

ローウェルの描く火星人の時代からは大分研究も進んだだろう。けれどまだ火星は「宝島」を持ち出せる夢のある場所かもしれない。(恭子)

実際にありそうな地図ですね。(侑里)

史子、立哉、雅司、日記、百り子 、純夫

素粒子の一つ激突大雪崩              早川 恵美子

宇宙から見たら大雪崩も素粒子のひとつに過ぎないのかも…(美穂)

半玉の憧れのまと白牡丹              山根 眞五

侑里

花守の笑へば皺のより深き             たまむし

守られた桜も守った花守にも年輪が見え「笑へば皴のより深き」が素敵です。(美惠)

羽ばたきの朱鷺の幽姿や能登に春          高島 郁文

自然災害に幾たびも見舞われた能登にも少しづつ春がきています(智子)

卒業や近くて遠いままの距離            岡部 博行

まさしく青春の「ひとこま」ですね。(孝雄)

青春時代を思い出す(眞五)

地も岩も包むが如く花ミモザ            河野 伊葉

ミモザの黄に包まれた大地。女性デーを象徴したような母性の一句に共感しました。(博子)

博嗣

草餅や変体仮名の包装紙              木村 史子

変体仮名がこんなところで重宝されるとは。(泰一)

変体仮名の包装紙に包まれた草餅は柔らかそうで、また由緒正しそうな趣がある。(博行)

志昴女

家族葬短き列の花の山               永井 玲子

陽子

立ちさうな茶柱一本春炬燵             阿部 朋子

母娘で春炬燵に入ってお茶を飲んでいる。茶柱が立ったので、今日はいいことありそうね、など言っている景が見える。(光男)

春ののどかでゆったりとした気分を感じました。 たまむし

そろそろ炬燵を仕舞わなければと思いながら、茶柱を見つめて居られる様子が同感です。(孝子)

小さなものをじっと見つめているだけの幸せ(敏晴)

初花や母の小振りの握り飯             野口 日記

お花見にはやっぱり母の小ぶり。登山なら親父のでかいやつかな。正規

新聞の人事異動や水温む              合田 憲史

人事異動の多い春。紙面の大異動に迎える新年度を季語が包みます。正規

薬箱に残る昭和の紙風船              石川 由紀子

私の家にもありました。富山の薬売りの箱、土産に紙風船をもらいましたね。懐かしい思い出です。(光男)

懐かしいですね(夏江)

懐かしい昭和の時代の一コマですね(智子)

紀美子、道代、手鞠、日記

関税とディールの果ては春愁            岡部 博行

トランプ政権の関税により、ディール(取式)がし難いので憂鬱だ。(芳彦)

痛風も三日目となり星朧              門司 侑里

潤んだような光、星朧の季語が痛い痛風と相まって同感です。早く良く成ってください。(孝子)

星屑の降りくる予感辛夷咲く            日根 美惠

辛夷咲く前のわくわく感が良く表しています  (幸子)

正明

はじかれて花のおはじき春の雲           熊谷 幸子

「花のおはじき」が花の形のおはじきでも、桜の花の比喩でもいいし、いかにも揺蕩う春を感じました。 たまむし

玲子

犬吠の夕映え翳る霾ぐもり             鹿志村 余慶

順一

茶箪笥の上のラジオや春の宵            中村 光男

玲子、夏江、尚

もて余すやどかり宿に連れ来しが          内村 恭子

まだ旅の途中、どうしょう!という作者の姿が浮かびました。(佳久子)

行楽などハイテンションのままつい手にとるあれこれ ただ生き物は‥ヤドカリ氏のその後は‥(久丹子)

朋子

椿落つ同心円の波紋もて              斎川 玲奈

雅司

ぶらんこや待つてゐる子が数へをり         土屋 香誉子

ぶらんこに乗っている子の耳に、待っている子の数える大きな声は届いているでしょうか(律子)

勢津子、匠子 、 純夫

遠景の初島消へて遠霞               齋藤 みつ子

博嗣

卒業の祝辞のなかに花のこと            明隅 礼子

人生の門出を祝うに当たり、桜花の咲く姿、散る姿を引き合いにされたのでしょうか。(哲雄)

国境は人の悪戯黄砂降る              荒川 勢津子

まさに国境は人間の作った最も非人間なものかも知れない。「人の悪戯」は文明批評として響く。桂一

国境は人が勝手に決めたもの、黄砂には国境など知ったことじゃない。(哲雄)

黄砂に国境なんて関係ありませんものね(早・恵美子)

純夫

バチカンの門に佇み春暑し             中川 雅司

朗人先生と訪ねたバチカン王国をおもう。去りがたい作者の気持も。(佳久子)

この町も制圧せりと黄砂降る            土屋 尚

黄砂が押し寄せる様は、まさに次々と制圧するかのようです。(哲雄)

黄砂と花粉。列島はまさに制圧され。   (郁文)

まさをなる深吉野の空花の雲            鈴木 楓

吉野山でしょうか?  青空と花の雲の景が素晴らしいですよね。(佳久子)

青空に風生は真間の枝垂れを対比させたが、この句は吉野の桜を持ってきた。調もよい句です。(肇)

まさに西行の吉野山、西行庵迄の山並みと花の盛りの道中を飾る雲をよみ一体感が伝わります。三度西行庵へ花吹雪を行ったことが懐かしいです。余慶

吉野の桜、筆舌につくせぬ美しさですね。(ユリ子)

海底の管弦に寄す飛花落花             早川 恵美子

「か」の韻律の響。海底の暗さ、静けさ空を舞う花の明るさ。理解しがたいが、心とらえる句(百り子)

大漁旗振つて言祝ぐ卒業歌             佐藤 博子

これから社会に出ていく子供たちにエールを送る「大漁旗」が良いです。(博美)

海辺の町の学校の勇壮な卒業式ですね。(春野)

手鞠、那智子、はま子

花冷えのライトアップの底蒼し           長岡 ふみ

順一

見る者の居住まひ正す白牡丹            山根 眞五

白牡丹は居住まいを正すほど美しく気品がありますね。(ユリ子)

杉戸絵の鳥のしろがね凍てゆるむ          斎川 玲奈

描かれている鳥がスーーと浮かびあがってきたような。(伊葉)

博嗣、温子、百り子

引鳥やガラシャ供養の鳴らぬ鐘           芥 ゆかり

今は人の訪れない、静寂な空気さえも伝わってきました。敏

由紀子

花衣女はいつも何か提げ              金山 哲雄

確かに。でもスマホ一つで手ぶらで出かけられる女子にも憧れる。(恭子)

勢津子

地球儀と回る国の名黄砂降る            牧野 桂一

黄砂降る国から我が国に飛ぶは致し方ない。地球が逆転を始めないかぎりだ、共に暮らしていこう。(茂喜)

正明、匠子

花冷や蓋の開かないジャムの瓶           中島 敏晴

些細なことですが、その方を表して、ドラマのひとコマになりそうです。敏

「花冷え」と「蓋の開かないジャムの瓶」ひんやりとした感触が・・・(美惠)

意外な取合せだが、ジャムの蓋が開かないもどかしさが花見をためらう花冷の気分に合っている。(博行)

花冷えの日お気に入りのジャムの瓶の蓋が開かない、あまりの寒さからなのか大事に置いていたものだからなのか……(律子)

由紀子、はま子、匠子

桃の日の和紙に一筆書きの雛            町田 博嗣

道代

木蓮の小道やかつて住みし家            染葉 三枝子

昨年、田舎の墓を当地に移した。古い墓に行くには堤の側を抜けて木蓮の道を上りゆく。鐘も鳴る。(茂喜)

野菜多き養生訓や春惜しむ             竹田 正明

順一

鷹化して鳩となる日や保護猫来           伊藤 正規

保護猫に季語がぴったりです。(博美)

み仏が鷹を鳩に替えてくださるうららかな春の訪れが、保護猫にも飼い主にも訪れました。保護猫も飼い主もいっぱい幸せになってほしいです。(美惠)

鳩となる イコール可愛がるでしょう 保護猫さんも幸せ(久丹子)

那智子、尚

春なのに今日も中也の小雪降る           鈴木 楓

汚れつちまつた悲しみとは何なのでしょうか(敏晴)

今や別れの歌は仰げば尊しよりも春なのにお説の通り、ここで中也の小雪とくれば申し分なく◎でしょうか。余慶

玲子

地震の地の桜見上ぐる桜守             中川 手鞠

地震の被害にあった桜をその後もずっと世話してきたのでしょう。「見上ぐる」に万感の思いを感じます。(ゆかり)

遥かより城址を標す花辛夷             荒川 勢津子

辛夷の花が生きています。(肇)

史子、由紀子、温子

                     以上


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