天為ネット句会報2025年10月

 

天為インターネット句会2025年10月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <福永法弘同人会会長選 特選句>

採血の針ままならず獺祭忌                  鳩 泰一

下手な看護士が何度も採血の針を刺し直している。看護師は焦り、患者はいらつく。 (法弘)

史子、那智子、誠治、尚

置き去りにされさう花野来ていつも              内村 恭子

幸せに不安はつきもの。 (法弘)

花に足止めて見入っていると、仲間は遠くに。経験します。(肇)

  <福永法弘同人会会長選 入選句>

虫の音を聞き分けている文机                 鹿志村 余慶

座敷で文机に肘杖を突いて聞く。(法弘)

秋の夜のしみじみと。(孝雄)

虫の音を聞き分けている文机があるというところが面白い。(芳彦)

夜文机に向かい句作に集中しながらも耳はしっかりと虫の声を聞き分けている。俳人の聴覚は鋭い。(博行)

陽子、百り子、香誉子、哲雄

スクワット三回多く敬老日                  金山 哲雄

他の年寄りよりも元気だという自慢。 (法弘)

高齢者の運動が奨励されている昨今 ちょっとしたきっかけでもう少しとなりますね(久丹子)

膝は足のいのち、足が歩かなくなれば悲しくも籠の鳥。籠るにはまだまだ若すぎる、さあ1,2,3。(茂喜)

毎日やっているスクワットを敬老の日の今日は三回多くやった。その気合が長生きの秘訣か。(博行)

敬老の日も今では9月15日固定ではないのですが、「三回多く」に惹かれました。(順一)

中七の三回多くが季語を利かせているといただきました (余慶)

誠治

狼の骨と伝へて霧の寺                    荒木 那智子

奈良の山奥か。 (法弘)

霧の寺とは効きますね(伊葉)

恭子、玲子、香誉子

エアメールの薄き便箋秋の夜                 中川 手鞠

あの薄さがいかにもエアメール。 (法弘)

インターネットで繋がる前のあの薄い便箋。届くのにかかる時間。懐かしさを感じる句です。(ゆかり)

子のひとりを新婚旅行に見送ったのだろう。外国旅行の旅先から届いた手紙を秋の夜に広げて見せる。(茂喜)

何の賞の報せが届いたのか。と、想像しました。(正規)

哲雄

湯の町の大正いろに秋灯                   小栗 百り子

竹久夢二ゆかりの伊香保温泉か。 (法弘)

どこの温泉宿でしょうか?「大正いろ」がいいですね(智子)

大正浪漫の色。 大正いろが効いています。湯の町に相応しい風情のある秋灯の景が見えてきます。(相・恵美子)

朋子

あちこちに川向く地蔵十三夜                 髙橋 紀美子

この川で水害による死者、多数。 (法弘)

川で溺れ死んだ子供が多かったのでしょうか、月も彼らの霊魂を慰めるようです。(春野)

伊葉

ぞんざいに食ふて秋刀魚に睨まれる              金山 哲雄

命を頂くのである。ぞんざいにしてはならない。 (法弘)

食卓の秋刀魚にも「ぞんざいに」できない命の意地がある。(敏晴)

豊漁と言われ、値段も手頃な今年の秋刀魚。食べれるありがたさを忘れ、ついついぞんざいに‥‥(律子)

プランターの二株にして稲の秋                榑林 匠子

狭い庭かベランダのプランターで、実りの秋を知る。(法弘)

プランターで古代米を作ったことがあります。2株でも実ると嬉しいです。(肇)

恭子

稲架組むや叱られたくて登る子も               森野 美穂

叱ってほしい、注目してほしい。 (法弘)

昭和の元気な子の様子が懐かしい(憲史)

お相手はロボットとかや身にしみぬ              小高 久丹子

ロボットは素直で優しく、裏切らないかも。(法弘)

ちちろ鳴く伐採予定の赤き紐                  井上 澄江

伐られることに決まった印の赤い紐。 伐採の決まった大木の悲しみが。 (法弘)

「赤き紐」で「ちちろ鳴く」で(美惠)

  <互 選 句>

南より赤道越えて青りんご                  土屋 尚

「帰国の喜び」が伺える。(孝雄)

史子

月明に虎となりたる詩人かな                 西脇 はま子

「山月記」の李徴を思いました。月明に虎(詩人)の深い孤独を感じます。(ゆかり)

人喰虎となった詩人の物語と感じました。この一句に刺激され、また読み返しています。(博子)

加賀野菜の冷たいスープ盆の宿                片山 孝子

故人のお好きだった加賀料理、特に加賀野菜の冷たいスープで偲ばれているのでしょうね。(博子)

秋光のステンドグラス射す遺影                 森山 ユリ子

道代、陽子

利酒の会話饒舌豊の秋                     山本 純夫

利き酒は賑やかで愉しい(眞五)

ころころとひかりと遊ぶ芋の露                 佐藤 博子

芋の露が可愛らしく表現されている。(泰一)

良い句と。擬態語の上五を具象表記すると良いのではとも。(余慶)

芋の葉の上を転がる露。美しく楽しい句。(はま子)

孝子、日記、みつ子

星今宵金糸銀糸の綴織                     石川 由紀子

道代

季めぐりやうやく肌に秋の風                  嶋田 夏江

まさしくやうやくですねぇ(幸子)

また来てと父の一言秋の虹                   野口 日記

「また来て」で感じる父との距離感と秋の虹の取り合わせ。(敏晴)

年老いた父の一言が、秋の虹のはかなさに響いています(智子)

立哉、ふみ、澄江

塩辛蜻蛉後になり先になり                   冨士原 博美

蜻蛉の実写 それだけで人との微妙な緊張感、空気感も漂います(久丹子)

如来のみ灯す御堂や月の暈                   芥 ゆかり

由紀子、紀美子、志昴女

金堂の石積みの裔残る虫                    河野 伊葉

金堂の石積の末裔として虫が残っているというところが面白い。(芳彦)

無花果や聖母伝説エフェソスに                 金子 肇

伝説がたくさんありますね。私、「イスラエル、ナザレ村」の石造りのマリア生家を訪れたことがあります。無花果の取り合せが珍しい。(ユリ子)

秋の蚊や公案の解をひもとけば       早川 恵美子

公安の解とは禅宗の古徳の言行と解釈するが、その難問を繙閲したという事と秋の蚊との対比が面白い。(芳彦)

小学生ドラマー入場敬老日                  永井 玲子

小学生の元気な演奏で会場がひとつになり盛り上がったことと思います。(相・恵美子)

栗飯の栗を等しく子らに分く                 中川 手鞠

子供達に平等に栗が行きわたるようにする母がなんとも微笑ましい。(博美)

紀美子、澄江

自然薯を母に鞐を外す父                   熊谷 幸子

天然の自然薯掘りは男たちの大仕事 掘り出したちょっと自慢の大きな自然薯を母さんに渡す父さん 地下足袋の鞐をはずす仕草に照れ隠しが見えて素敵(美惠)

鉛筆を削る音澄む秋の夜                   中村 光男

然もありなん(眞五) 鉛筆を削っていると心が落ち着きますね。みつ子

野の道へ野菊の傾ぐ雨上り                  竹田 正明

雨の降ったあとの野の道の様子が鮮やかに浮かびます(美穂)

朋子、純夫

生きて世に迷へり烏瓜の花                  牧野 桂一

烏瓜の花が日暮れに彷徨ってゐる様子が目に浮かびました(早・恵美子)

玲子

しばらくは差しつ差されつ月今宵               垣内 孝雄

月を見ながら気のおけない間柄の二人が見えます(美穂)

ムックリの響く水面や龍淵に                 熊谷 佳久子

静かで澄んだ湖面にムックリの玄妙な音が響く様子が目に浮かびます。(春野)

アイヌの口琴。その音色に龍は確かに淵に潜みそう。(正規)

那智子、百り子

誰が袖の屏風離れぬ秋の蝶                  早川 恵美子

秋の蝶の気持ちが伝わってくる。(博美)

葡萄食ぶ魔女になるまで爪染めて               芥 ゆかり

「魔女になるまで」多少大袈裟なこの表現に惹かれました(憲史)

魔女のように伸ばした爪で沢山食べた葡萄、その様子がおもしろかった。(佳久子)

由紀子、那智子、幸子、百り子、手鞠

おすそわけ秋茄子料理ギリシャ風               森山 ユリ子

秋茄子はおいしいですね。みつ子

天平の色に乾きぬ鵙の贄                   中川 雅司

朗人先生の「草餅」の俳句を思い出しながら。(佳久子)

玲子

身辺にデジタルの波そぞろ寒                 小高 久丹子

人の温もりを大切にしたい。(泰一)

デジタルは1か0の情報、数値に表せない、人のファジーな良さを損ないませんよう・・・。(博子)

勢津子

菊の香や老いてなほ舞ふ鷺娘                 中川 雅司

人間国宝の女形の舞でしょうか。芭蕉の「奈良には古き仏たち」を思い起こす季語の選択が効いていると思いました。(ゆかり)

歌舞伎役者の家に生まれた者の宿命のようなものを詠いあげている。(はま子)

手鞠

はなびらをひたすら夫に菊膾                 伊藤 正規

優しい奥様、旦那様お幸せです!(早・恵美子)

濁り酒赫き鰊の大漁図                    斎川 玲奈

史子、立哉、尚

大秋刀魚尾をはみ出して焼かれけり              岡部 博行

漁で身も大きいとのこと(眞五)

紀美子、純夫

唐門の扁額五彩秋高し                    相沢 恵美子

京都は雲一つ無く高く晴れ渡っていたようです。(正規)

由紀子、ふみ、楓、手鞠、純夫

弾痕白き蛤御門蚯蚓鳴く                   原 道代

明治維新も遠くなりました。(泰一)

祈る背にやさしき風や萩の寺                 井上 澄江

萩の寺の真ん中に・・時がとまっているような静寂。(伊葉)

私は萩の神社を歩いたことが有るのですが、萩の寺と言われて、公園の萩にはない魅力が有ると思いました。(順一)

道代、陽子

柘榴割れ隣家の雨戸閉めしまま                髙橋 紀美子

気になる光景ですね 季語の柘榴が良いと思いました (幸子)

誠治

安達太良の智恵子の空や吾亦紅                松山 芳彦

夏江、孝子、楓

静かなる谷戸の入日や萩の花                 竹田 正明

入り日に萩の花たゆたう。深まりゆく秋の谷戸がすっきりと表現されている。(ユリ子)

朋子

休暇明けかかりつけ医のアロハシャツ             永井 玲子

かかりつけ医の診察を受けに行くと、アロハシャツを着ている。医者も人間、夏休みをとったのだ。(博行)

開業医でしょうか 何でも相談できそうな磊落な先生がイメージされます(久丹子)

ふみ

角打ちや三々五々の月の客                  中村 光男

製鉄の町でしょうか 炭鉱の町でしょうか 仕事帰りの一杯の酒の喜びが・・・(美惠)

飛鳥路の風蘇る曼殊沙華                   合田 智子

長閑な飛鳥路のあぜ道に煌々とした曼殊沙華がひときわ輝いて見えます。(相・恵美子)

楓、澄江

蛇行する坂東太郎野分浪                   鈴木 楓

夏江

皿数の多き食卓獺祭忌                    児島 春野

季語が活きている句。(孝雄)

匠子

美術展ヴェニスに古き信用状                 内村 恭子

博嗣、立哉

畳まれし複素空間蓼の花                   福田 誠治

イメージ不可能な複素数空間と蓼の花との不思議な親和性(敏晴)

バス停に交わす近況秋日和                  野口 日記

秋日和がよく合います。(肇)

待ち時間も気にならない秋日和、会話もはずみますね(智子)

玲奈、雅司、恭子

大山の水をくぐりて新豆腐                  熊谷 幸子

清らかな水が「大山」の引用で、想像が豊かになりました(憲史)

春野

毬栗や今朝の会話のかみ合ず                 長岡 ふみ

時間に急いていたのでしょうか?気持ちがすでにトゲトゲしていたのでしょう、きっと(律子)

傷みてもまだ用の在る秋団扇                 岡部 博行

志昴女

今も昔も万博に列秋晴るる                  山本 純夫

日記

釈迦堂へ紅葉且つ散る切通                  垣内 孝雄

夏江

霧の夜やバーの扉は引けば開く                上脇 立哉

下五の平明さが句を生かしている。なるほど左様にそうだったのかと。いただきました。余慶

行進の縦横の列さはやかに                  土屋 香誉子

玲奈

秋深し鳥獣の庭石の寺                    松山 芳彦

秋が深まって行き、作庭や寺の建築、石灯籠などに対して魅力を感じたのでしょう。(順一)

襖絵のまかれし砂子秋澄めり                 佐藤 律子

雅司

歳時記の「秋」に栞や小鳥来る                合田 憲史

秋、「眼中のもの皆俳句」と虚子も言っていますね。(ユリ子)

秋燕太極拳の指の先                     森野 美穂

日記

太鼓フェス闇をゆるがす秋の風                齋藤 みつ子

太鼓叩いて鐘鳴らし、人の心つないで軽くする、祭は秋の宝物、風も相の手入れて盛り上げる。(茂喜)

博嗣

稲穂波一升瓶の並ぶ酒舗                   児島 春野

豊作を予感させるような豊かな気持ちにさせていただきました(美穂)

蓑虫や一糸に委ぬるオブジェかな               阿部 旭

この声も一期一会や法師蝉                  木村 史子

今年は今年で出会った法師蝉のツクツクボウシと鳴く声を聴く、まさに一期一会です(律子)

孝子、勢津子

蓮の実の飛んで彼の日も過ぎにけり              明隅 礼子

ご命日でしょうか。思い出深い一句です(早・恵美子)

一畝の蚕豆を蒔く旗日かな                  西脇 はま子

雅司、匠子

霧晴れて出でし太郎の月の顔                 阿部 朋子

霧が晴れたあと、岡本太郎の月の顔も満月を見上げているのでしょうね。(博子)

割烹着美人と呼ばれ衣被                   長岡 ふみ

割烹着が似合う真砂女。真砂女の「衣被」の句を思い出す。(佳久子)

盛装をしたよりも割烹着をつけた方が美人は作者の自画像のように思われます。(はま子)

玲奈、匠子、香誉子、哲雄

骨拾ふ長箸重し秋の雨                    鳩 泰一

大切な方を無くされたのでしょうね~(博美)

勢津子

水底の故郷恋ふや蘆の花                   日根 美惠

博嗣

以上

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