天為ネット句会報2026年5月

 

天為インターネット句会2026年5月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

ひばり野であり開拓の村であり                荒木 那智子

雲雀は空高く舞い上がって囀り、しばらくすると急降下してくる。それがあちこちで繰り返されている広い雲雀野を想像した。そして、その地は開拓者の手によって田畑が作られた村だというのである。荒れ地が田畑となり、繁栄した時を経て、一部はまた野に返ってゆくのであろうか。そのような歴史を感じさせる句である(傳)

長閑な豊かな自然かっては未開の地開拓の地であった リズム感が良いと思います  (幸子)

「ひばり野」と「開拓の村」が上手くマッチしています。「~であり~であり」のリフレインも新鮮です(憲史)

北海道でしょうか。大変な歴史のある開拓村ですが、現在は雲雀の声が聞こえてくる長閑な田園。はま子

賑やかなひばり野と開拓村の結びつきが新鮮。真弓

恭子、 順一

青銅の馬のとも張る若葉風                  河野 伊葉

気持ちのよい若葉風に吹かれつつ馬の青銅像を見上げているのであろう。「とも」は馬の後部を言う。馬の後ろ足から尻のかけての部分。そこが張っているということは脚力に優れた馬であることを示している。銅像の制作者も掲句の作者も馬の形態に詳しいことがわかる(傳)。

中七の表記が季語に相応しいです。(相・恵美子)

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

燕の子三代つづく助産院                   金山 哲雄

「少子化」の日本、助産院を巣立つ燕、そこはかと想いはつのる。(孝雄)

燕もひとも世代を繋げている。そんな燕への親近感が伝わってくる。(光男) 春に南方から渡って来た燕は二度産卵する。鴉や蛇の目から子どもを守り助産院の軒下に営巣した(茂喜)

助産院と知っているかのように燕が子を育てている様子が浮かびます、それも3代も続いているとは素晴らしいですね。(博美)

三代つづくのなら燕の子も安心ですね。(正規)

再来して去年の巣を手直しして子育てしている燕。家主は三代続きの助産院。頑張れ!(智子)

先日、新築の家で巣が撤去され、空しく往来する番を見ました。幸を運ぶと慈しまれた燕と三代の助産院が、響き合うよう。(博子)

尚、由紀子

長瀞に海の化石や黒揚羽                   竹田 正明

古秩父湾が約1,700万年~1,500万年前に存在したということを鑑みると、ホモ・サピエンスが日本列島に初めて上陸した(約3万年前)のも現代のことのように感じます。(誠治)

山奥に海の化石という意外性に惹かれました。(春野)

長瀞に海の化石の意外性 季語が面白いです。   温子

あの岩畳は2億年以上前の海底にあった地層の隆起したもの。 地球の神秘を思う 勢津子

志昴女、真弓

アザーンの微かに聞こゆ葱坊主                中村 光男

イスラム教の礼拝の刻を告げるアザーンが微かに聞こえてくる。葱坊主がモスクのドームを連想させてくれる。微かに、の距離感がよい。(ゆかり)

季語を面白く感じました。 温子

私は突然頭の上でアザーンが鳴りびっくりしたことがあったが、この句は遠くから聞こえて、葱坊主が聞いているよう。(佳久子)

陽子、芳彦

みちのくの安倍の館の春蚊打つ                おしおいけ

前九年の役で滅んだ安倍氏と春蚊打つ心情の妙(敏晴)

立哉、那智子

春の夜の発酵を待つパンの生地                熊谷 佳久子

パンにも命が宿っているような。(泰一)

発酵してだんだん膨らんでゆくパンの生地の柔らかさと春の夜のぼんやりとなまめかしい気分が響き合う。(博行)

三枝子

老いぬれば一日短し花は葉に                 荒川 勢津子

一日が短いと感じるのは、日々が充実している証ととりました。(肇)

同感します(夏江)

澄江

春光や昔バスにはバスガール                 土屋 尚

人との距離が近かった昭和を懐かしむ句に共感です。経済論理と利便性etcで、人間が消えていくよう・・・。(博子)

恭子

氷川丸の太き鉄鎖や鳥渡る                  髙橋 紀美子

日記

去り行し人来れる人や四月来る                岡部 博行

紀美子

染寺のぼうたん揺るる虚空かな                佐藤 博子

下五の虚空という表現が良いと感じました 余慶

父と子の赤き茶摘機牧之原                  榑林 匠子

博嗣

遅き日に利休鼠の小皿選る                  小高 久丹子

よしたろう

かぎろひのやうなよしなし事ばかり              福田 誠治

蛇穴を出づ初めてのものばかり                木村 史子

  <互 選 句>

ふらここや人生になきリハーサル               西脇 はま子

人生になきリハーサルとふらここの対比  (郁文)

人生はリハーサルないですね(みつ子)

神性は一回切り。リハーサルはありません。ふらここの揺れもそのように見ると一回一回は二度とない揺れなのですね。(桂一)

「人生にリハーサルはない」とはまさに至言。ブランコが黒澤明の「生きる」を連想させ、人生についてより深く考えさせられる。(博行)

やり直しが出来たら‥‥ 人生は常に本番で!!勢津子

日記

虹鱒飼ふ谷間に秘密基地のごと                上脇 立哉

綺麗な虹鱒が見えてきて「秘密基地」が効いています。(相・恵美子)

三枝子

初子の名入れし大凧天の凧                  小栗 百り子

喜びにあふれる句。「大凧天の凧」のリフレインが良い。(肇)

名入れの凧が大空に飛ぶ様子が目に浮かびます(智子)

道代、手鞠

切支丹の小石の十字霜の果                  野口 日記

霜の果てという季語の斡旋がいいですね。(光男)

芳彦

食卓に『新』『新』『新』の四月かな             佐藤 律子

着眼点が面白いです(早・恵美子)

門扉へと石段ありて蝶舞へり                 上脇 立哉

正明

庫裏で待つキジトラ猫と桜草                 原 道代

何を待っているのか、、、(誠治)

好き好きに物食ふ口や蝶の昼                 伊藤 正規

芥川龍之介の句の世界みたい!良いですね(早・恵美子)

その話堂々巡り春の逝く                   相沢 恵美子

玲奈

鳥の恋金網越しの背番号                   森野 美穂

順一

鯖を売る女の声や路地に入る                 妹尾 茂喜

私の所では今もこの姿があります。鯖は関鯖です。(桂一)

玲子、伊葉

ものの芽や小さき社の陽だまりに               宮川 陽子

澄江

ふらここや一緒に揺れる家の鍵                児島 春野

家にまだ帰りたくない大人、家族が帰ってくるまで待つとなくブランコを漕いでいる子ども。書かれていない人となりをいろいろに味わえる佳句。(ゆかり)

鍵はポケットでしょうか。それとも通勤鞄の中でしょうか。きっと、ふらここに揺れて喜んでいるのでしょう。はま子

「家の鍵」が意味深長。(哲雄)

カギは新居のものでしょうか 弾む気持ちが伝わってくるようです(久丹子)

おしおいけ

にぎやかに校舎の壁の岩燕                  土屋 香誉子

立哉

鍬振るひ春愁などは寄せ付けず                金子 肇

志昴女

残り香のほどけて咲けり牡丹かな               齋藤 みつ子

ほどけて咲けりの表現に一票。(郁文)

香が「ほどけて」が良いですね(智子)

背伸びして指先の空ヒヤシンス                阿部 朋子

背伸び、指先、空…ヒアシンスのお花そのものを思い起こさせます(美穂)

朧夜や影絵の小人ラッパ吹く                 中村 光男

影絵のこびと喇叭吹くに夢があります。朧夜がとても効いています。場面がそのまま絵になって浮かんできます。(桂一)

藤城清治さんの影絵を思い浮かべました(敏晴) ラッパの音が聞こえてきそう。(泰一)

藤城清治さんの可愛い小人シリーズが浮かびます。温かみのある作品に朧夜がいいですね(律子)

三枝子、玲奈、由紀子

石舞台裡の玉響外の蝶                    石川 由紀子

中七の狸とたまゆらの「た」がリズムがあり、下五との対比にも惹かれました。(博美)

よしたろう、雅司

いきあたりばつたりの旅亀の鳴く               木村 史子

いきあたりばったりが、いかにも、「亀鳴く」の季語に合っている気持ちがします(美穂)

香誉子

春の海越えて来たりし転校生                 明隅 礼子

島の子でしょうか 九州・四国・北海道・本州 島国日本はどこへ行くのにも海を越えて・・・(美惠)

テムジンの駆ける草原風光る                 鈴木 楓

颯爽と初夏の草原が目に浮かびます  (幸子)

モンゴルの大草原を駆けるジンギスカンの様子が目の前に浮かぶ。(佳久子)

陽子、那智子

大和路の祠の先の初音かな                  宮川 陽子

風情のある句。(孝雄)

史子

寿永二年若葉の倶利伽羅峠かな                内村 恭子

匠子、百り子、紀美子

後円に太古の翳り初蕨                    牧野 桂一

中七の太古の翳りと初蕨、際立っていると感じました 余慶 蕨のたくさん採れた古墳時代も終焉に近づく。古墳に関わる仮説に想いを馳せました。(博子)

史子、雅司、伊葉

黒壁の北国街道燕来る                    鈴木 楓

よしたろう

よく笑ふ片言交じりの鳳梨売                 永井 玲子

中7が効いていて明るい鳳梨売にお客が集まっている様子が見えます。(相・恵美子)

朋子、香誉子

窯変の肌の手触り古茶新茶                  日根 美惠

多分備前の湯飲かと思うが、手に馴染む肌が古茶でも新茶でも美味しく味わっている情景が浮かびます。(博美)

青の深い色合い 見る角度での変化 窯変天目で頂くお茶は最高でしょう。 温子

朋子

魚醤買へば霞の海の暮れゆけり                町田 博嗣

魚醤はお土産でしょうか 霞む海の香りのような…(美穂)

芳彦

揺れやみて小手毬次の風を待つ                鳩 泰一

豊かな時間を感じました。(誠治)

小手毬が遊んでいるかのようで、童心や優しさを感じます。(春野)

参道の若葉の隙間かぜの道                  竹田 正明

隙間からの若葉風のこころよさが浮かびます。(郁文)

家族で山の神社に登っているのだろう。木々はすべて緑、花もある、春風がおだやかに頭上を吹き抜ける。(茂喜)

囀を眼下に磨崖仏の笑み                   今井 温子

「を」が絶妙に句を引き立てていますね(憲史)

夏江

枇杷熟れて高尾の寺へ登る道                 妹尾 茂喜

博嗣、玲子

夜よりも昼を怖るる独活の山                 早川 恵美子

想像がふくらみます。(百り子)

ヒヤシンス異国の神の供物                  中島 敏晴

異国の神と響き合っています(早・恵美子)

一匹の蜘蛛ぼんやりとした不安                芥 ゆかり

芥川龍之介の蜘蛛の糸を思いました  (幸子)

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」と彼の自殺の原因とされる「ぼんやりとした不安」が連想の糸で繋がり、重層的な句となっている。(博行)

蜘蛛は一匹だけだろうか?出会ってしまったこの蜘蛛はどうしよう?まさにぼんやりとした不安だけがある(律子)

匠子、手鞠

親指の先ず働けり夏蜜柑                   鳩 泰一

夏蜜柑は大きくて皮も固いので、親指で力を入れてがよく伝わりました。(佳久子)

澄江

馬にやる春にんじんの大袋                  榑林 匠子

馬は甘い物が大好き。春にんじん最高ですね。(正規)

馬も食欲旺盛な春の気分伝わってきます。(泰一)

立哉、博嗣、順一、志昴女

春愁や上千本で引き返す                   佐藤 博子

下千本まで足を延ばす気にさせなかった。その愁いとは・・・(哲雄)

匠子

願掛に母国語を聞く花祭                   中島 敏晴

那智子

戦火から遠きこの国躑躅燃ゆ                 児島 春野

燃えるような真っ赤な躑躅の咲く平和で美しい日本 戦時下の国の平和を祈ると共に、私たちは戦火の無い国であり続ける義務があると思っています。(美惠)

日記、尚

島ひとつ海に消したり夕霞                  岡崎 よしたろう

伊葉

蟇蛙蹲踞崩さず歩み初む                   早川 恵美子

ユーモラスな蟇蛙、蹲踞しているのですか 凄い(美惠)

待合の身の上話春うれひ                   井上 澄江

知らない人にでも言いたいなんとなくわかります(みつ子)

史子

グリコポーズ真似る夫ゐて春の月               永井 玲子

夫婦仲良く大阪旅行ですね。多分初めてこれたのかな。(正規)

風韻の鴨の川瀬や夏隣                    鹿志村 余慶

風韻とは風情あり余情あり、といったニュアンスだろうか。京都の鴨川を美しく褒め称え、夏を待つ気分が高まる。(ゆかり)

おきなぐさ聴禽書屋の国訛り                 荒木 那智子

朋子

ヒマラヤ杉新樹となりて羽搏けり               相沢 恵美子

おしおいけ

雨粒を一つぶら下げ華鬘草                  中川 手鞠

華鬘草を教えて頂きました。画像を見て上五中七を納得。(肇)

青踏んで神の風穴やまじ風                  松山 芳彦

愛媛県東部の豊受山。NHK番組「にっぽん百低山」で初めて知り得た話に重なり、再度感動しました(憲史)

うぐひすの啼いてしづかな茶会かな              阿部 朋子

鶯だけが春ですよと(みつ子)

玲子

茫茫とけふも雨降るねぎ坊主                 熊谷 幸子

ねぎ坊主と「茫茫と」降りやまぬ雨が不思議に似合う(敏晴)

雨降りに葱坊主の景、侘びの心象風景がよいと感じました 余慶

湯の町の慣れぬ草履や春驟雨                 野口 日記

小走りには不向きな草履。似たような体験をしたことがあります。(哲雄)

恭子

干されある白きブラウス風薫る                垣内 孝雄

正明

遅き日の街は見知らぬ貌を持ち                小高 久丹子

ゆっくり暮れる春の日は景色一つも違って見え、見えてなかったものにも光をあててくれます(律子)

すすぎ水使ふて床(とこ)へ遍路杖              合田 憲史

由紀子

鐘の音に色ある春となりにけり                岡崎 よしたろう

音に色を感じるのも春ならでは(久丹子)

おしおいけ、尚、手鞠

整然と復活祭の木椅子かな                  佐藤 律子

質朴な教会で心を込めて儀式の準備をする様子に、頭が下がります。(春野)

教会の木椅子はそれだけで整然とした趣がありますが復活祭ではよりその存在感が増すように思います(久丹子)

紀美子

地震のあり戦も止まず霾れる                 荒川 勢津子

浜に地震が止まぬ。異国の空や海に人を殺める火の手が上がる。我が国には風に乗る黄砂が止まぬ。(茂喜)

陽子

足音を追ふ足音や街朧                    岡部 博行

なんとなく不気味感があって面白い。(光男)

玲奈、道代、真弓

蜂飼ひが一人や隠れ耶蘇の里                 熊谷 佳久子

一人の蜂飼いの佇まいが伺える。(孝雄)

聖書に乳と蜂蜜の流る地などと記されていますが、祭壇には蜜蝋で作つた蝋燭を灯されるとか。そのため隠耶蘇の人も、蜂を飼っておられるのでしょう。はま子

雅司

話しこむ犬好き同士木の芽垣                 土屋 尚

犬の散歩でなじみになった人とよもやま話をする。 季節もよくゆったりした暮らしを感じる。 勢津子"

夏江

以上

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