天為ネット句会報2026年9月

 

天為インターネット句会2026年9月分選句結果

 ※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
  また互選句は句稿番号順に並べております。

  <日原 傳編集顧問選 特選句>

月の路地一位一刀彫師棲む                  西脇 はま子

「一位一刀彫」は岐阜県飛驒地方で生産される伝統的工芸品。イチイの木を素材とし、彩色はせず、彫刻刀のみで彫り上げるという。それを仕事とする彫刻師が路地に棲み、その路地に今、月の光が差しているというのである。「月の路地」という鮮烈な出だしを受け、「一位一刀彫師棲む」と句またがりのかたちで続けて句に勢いが備わった(傳)。

彫師の打ち込む一途さが見えます  (幸子)

由紀子

カルストの風に吹かれてソーダ水               井上 澄江

日本のカルスト地形というと山口県の秋吉台が有名だが、その他に福岡県にある平尾台や愛媛・高知県境にある四国カルストも知られている。掲句はどこのカルストであろうか。白い石灰岩が露出する風景を眺めつつソーダ水を飲んでいるのである。石灰岩の白いイメージが働くためであろうか、「カルストの風」という措辞から涼しげな感じが伝わってくる(傳)。

岩と草原を吹き抜ける風 ソーダ水の弾ける泡とともにディランの曲が聞こえてくるようです(久丹子)

  <日原 傳編集顧問選 入選句>

爽やかや刺し子ふきんの青海波                荒木 那智子

白地に青い糸の青海波模様の布巾、一心に縫った人の気持ちも含めて爽やか。ふみ

確かに爽やかです。白地に刺し子のさざ波の立つ海です。(百り子)

東北の庶民の知恵の刺し子。簡単なぐし縫いで完成した青海波の文様は、まさに爽やか。(博子)

史子

手拭の十種十彩踊の輪                    須田 真弓

踊りのようなリズムがよい 敏晴

郁文、由紀子、香誉子

新涼や舌に転がす薄荷飴                   中川 手鞠

涼し気な季節の到來を喜ぶ姿が薄荷飴で伝わってくる。(光男)

史子、雅司、夏江

家族分の鮎を釣り上げ父帰る                 髙橋 紀美子

微笑ましい句ですね。(孝雄)

納得して感心した句(佳久子)

朋子、道代

炊きあがる加賀冬瓜の翡翠色                 斎川 玲奈

朋子、百り子

新涼や七つ道具の虫眼鏡                   荒川 勢津子

老いてなお盛ん!養老先生存えて下さい(憲史)

紅葉のドナウを下る蒸気船                  中川 雅司

正明

白山の清らなる水夕涼み                   須田 真弓

白山の麓は水も酒も良いですね(眞五)

宮出しの神輿に木遣り澄む谷中                芥 ゆかり

尚

ギグの音の地下より漏るる夜の秋               内村 恭子

寿恵

水澄むや上田紬の林檎染め                  松山 芳彦

 

  <互 選 句>

金比羅の七百五段木の実降る                 熊谷 佳久子

石段を上り上って本宮まであと少し。木の実が石段に降って跳ねる音がしてくる。(ゆかり)

石段と季語の取り合せが良いです 温子

金比羅の階段を上った時を思い出しました(美穂)

澄江

ラ・フランスの横顔てふも無かりけり             阿部 朋子

確かに横顔はないよなぁとクスッとしますが、何故かこの世のやりきれなさを感じます。(誠治)

見つけてみたいです。(正規)

そう思います(眞五)

朝市に絵蝋燭買ふ雁のころ                  西脇 はま子

会津の朝市でしょうか 絵蝋燭は 暑かった季節が終わり しっとりとしてきた「雁のころ」が似合います。美惠

会津であろうか。秋の訪れとともに日本へ渡来する雁に作者の旅ごころも感じる。蝋燭の炎のゆらぎや風の気配もいい。(ゆかり)

秋の頃ではなく雁のころが良いと。絵蝋燭の在り様が情趣を誘う景ですね。   余慶

飛騨の朝市でしょうか? 旅のつれづれに気に入った絵蝋燭を、いいですね。(佳久子)

輪島の朝市を思い出しました。絵蝋燭と「雁のころ」の組合せが素敵です。真弓

志昴女、博嗣、内・恭子、那智子、日記

人の世の阿頼耶銀河に沫一つ                 松山 芳彦

唯識思想の八識の第八、阿頼耶識を煩悩を持つとするか真如とするかは説によって分かれるとあります。よくわからないので教えて下さい。    余慶

秋彼岸十字の墓のバラ一本                  合田 智子

「バラ一本」と十字の墓に秋の寂寥感。(ユリ子)

虫の声人それぞれの晩年に                  金山 哲雄

人の往生は虫が決める。人の生をひそかに引っ張るように、命の終わりを告げる。(茂喜)

晩年には、聴きなれた虫の声も自分に語り掛けてくれている様。(泰一) 

紙皿に釣果の重み沖膾                    芥 ゆかり

紙皿に山盛りの沖膾、その場でしか頂けないご馳走。ふみ

紙皿がいい。野趣溢れる句。(肇)

しっとりとした紙皿に釣りたてのお魚がずっしりと。対比が見事です。(三・恭子)

青猫

澄みに澄む仁淀ブルーや今朝の秋               佐藤 博子

透明度抜群!そのブルー色は今や全国区。カワガラスが仁淀川に飛び込む映像に感動しました(智子)

秋の澄んだ水が目に浮かびます(夏江)

純夫、青猫

湯の町に故郷と同じ鰯雲                   児島 春野

鰯雲をしみじみと味わったのかもしれません。(順一)

立哉

七夕やインクの滲む一筆箋                  宮川陽子

那智子

舟入の盆波ひたと船の底                   鹿志村 余慶

「盆波ひたと」の表現がいいと思いました(美穂)

立哉、九紋

三日月は西へ迎への来ぬ園児                 小池 澄子

志昴女、尚、純夫

酒桶干す行基葺より弥陀の風                 日根 美惠

上五に中七と下五の取り合わせが効いています。中々見られない景ですね。(相・恵美子)

朋子

泣き止んで歩き出す子や鳳仙花                野口 日記

お母さんに叱られたのかな・・・。(孝雄)

泣いてもどうにもならないと諦めて、トボトボと健気に歩きだす幼児の様子が目に浮かびます。鳳仙花という庶民的な季語も良いと思います。(手鞠)

立哉、香誉子

この星の傷みかしこに秋出水                 小高 久丹子

線状降水帯に心が痛みます  (幸子)

秋の台風や大雨で水嵩は増え続け、道も川も森も姿を変える。痛みは地球を覆う。これが星の力だ。(茂喜)

環境破壊の影響が心配されます(眞五)

まるで地球の表面に穴が開き、水が噴き出ているような感覚を持ちました。秋出水を柔らかい言葉で詩的に表現されていると思います。真弓

研究者の声にも自国・自分ファースト、解決は遠そう。俳句でも静かな抵抗ができると感じました。(博子)

那智子

竹煮草カサカサ音立て空を切る                日根 美惠

「カサカサ」と「空を切る」が良かったです。秀平

処暑到り蝉の声音の変わりけり                岡﨑 志昴女

雅司

砂漠より尖塔見ゆる星月夜                  中川 雅司

雄大な砂漠、その上の広大な星空を思います。(春野)

「月の砂漠」の世界ですね。(泰一)

芳彦

百日紅四十九日も過ぎにけり                 中村 光男

義弟の49日にも百日紅が咲いていました。季語がしっくり来ました。ふみ

玲子、内・恭子

甘口のカレーライスや野分あと                鳩 泰一

ホッと一息ついた避難所でしょうか。(誠治)

「野分」のせいでいつもと違う方のカレー味になったのかな。(孝雄)

炎暑の頃には激辛のを、野分の頃には甘口のカレーライスをですね。(佳久子)

快晴のテニスコートや今朝の秋                福田 誠治

夏江、澄江

網戸のかまきり暫しの無言劇                 竹田 正明

上八・下九のアンストラクチャー(Unstructure)が、無言劇の迫力を増しています。(誠治)

なるほど。(寿恵)

一瞬の驚きや、恐怖で固まっている状況を”無言劇”と表現したところが面白いと思いました。(手鞠)

由紀子

虫すだくあたり圧して外来種                 土屋 尚

最近は外来種の虫が多く、鈴虫などの固有の音色が少なく。(芳彦)

また一人談話の中へ菊花展                  竹田 正明

見ている人よりも話している人の方が多い賑やかな菊花展の様子がよく見えます(澄子)

立派に仕上がった自慢の菊。育てる間の苦労も忘れて、誇らしげに話す様子が目に浮かびます(智子)

玲奈

機の音の町家に秋や奈良晒                  合田 憲史

秋。町家から機織りの音が聞こえてくる。そして下五は奈良晒。美しい!日本に帰りたくなります。(手鞠)

下五が効いていて静かな町家の秋の訪れを上手く詠んでいます。(相・恵美子)

奈良晒しの作業は一年を通じてありそんな中にも季節を感じる時はあるのでしょう。機織る音だけの静かな生活を想像します(律子)

道代

青瓢下がりて形を正しけり                  相沢 恵美子

実が重くなってくると下がる。通常は尻の方が大きく重いので、揺るぎなく定まって下がってくる。座りの悪い瓢箪もあるが、それが空中でどっしり構えているのが良い。秀平

爽やかな景ですね。(三・恭子)

音なき音残し線香花火落つ                  木村 史子

陽子、三枝子

山の風ひつぱり合ふて秋桜                  熊谷 幸子

確かにその様に見えると思いました。(正規)

ひつぱり合ふがいいですね(みつ子)

伊葉、日記

真上から燃殻落つる花火かな                 土屋 香誉子

雅司

虫鬼灯窓から覗く不登校                   冨士原 博美

青猫

筋トレに動く胎児や夕月夜                  三浦 恭子

これから月が満月になるのと動く胎児が響き合っていると思う。(博美)

九紋

仏桑花移民四世にて仏徒                   内村 恭子

どこのお国でしょうか、勤勉で敬虔な一族なのでしょう。(春野)

移民も早や苦節四世。二つの「仏」が響き合っています。(哲雄)

秋の色一足先に生花店                    山根 眞五

季節を先取りした生花店。今年の秋色は?楽しみです(智子)

つきまとふ認証コード秋暑し                 小高 久丹子

入院中、手首に巻かれた認証コードによって点滴から検温まで全てが管理される。安心である一方鬱陶しくもある。秋暑しの季語が効いている。(博行)

どちらもいいかげんにして欲しい。取り合わせが面白い。(肇)

あるがまま生くる月日の秋海棠                鈴木 楓

百り子

秋めきて余呉湖伝説ふたつあり                山根 眞五

鏡湖とも呼ばれる余呉湖ならではの伝説がふたつあるという。水澄む頃であればなお神秘的だ。(ゆかり)

余呉湖伝説ふたつとは天女の羽衣伝説と菊石姫伝説のことでしょうか?どちらも悲しい物語ですが心惹かれます(律子)

病得て植うる苗木や茄子の花                 井上 澄江

花に託す希望。茄子が実る頃には寛解されますように(澄子)

茄子の花に無駄はないということ。希望を感じます。(ユリ子)

陽子

雲の峰凹凸なせる地平線                   郁文

紀美子

水玉の割れて彌生の星流る                  小栗 百り子

観る人の脳裏に刻印を押すかのような強烈な画風でした ご冥福を祈ります(久丹子)

九紋、勢津子

米炊くは土鍋に一合夜の秋                  河野 伊葉

一手間かけた土鍋のご飯を頂く幸せ。秋を感じる夜も想像します。(博子)

追憶のやうに出会へり日焼の子                木村 史子

日焼けして遊ぶ子どもの中に作者が無邪気であったころの友達とそっくりな子どもでも居たか、、、「追憶のやうに出会」うという表現が良かったです。秀平

ただ日焼だけでなく、雰囲気やその容姿に何かを見たのでしょう。(正規)

目の前の日焼の子が、遠い昔からやってきたような幻想を生む上五中七が独創的で良いと思います(澄子)

日焼けの子は、かつて一日中真っ黒になって遊び呆けていた自分のよう。(泰一)

そういえば昔は日焼けの子がいた 敏晴

夕ぐれの雲流れゆく山桔梗                  森山 ユリ子

空と地上の対比。山桔梗は自生だったものなのか、人工的に植えられたものだったのかと思いました。(順一)

虫の音が残暑の昼を去らしむる                岡﨑 志昴女

勢津子

二学期や飼い猫腹を舐めており                青猫

気が重くなっている子達へ、マイペースな猫に習いなさい・・・というメタファを感じました。(博子)

香誉子


月の夜の隅を借りたる花火かな                小栗 百り子

月光の隅を借りる 静かな余韻のある花火を想います(久丹子)

博嗣、内・恭子

テーブルの一輪挿に宿る秋                  森野 美穂

楚々とした秋の感 涼風を肌に。温子

銀鱗の鮭迸る川碧し                     相沢 恵美子

紀美子

新涼や愁眉の動く阿修羅像                  今井 温子

はま子

船だまりに戻る漁船や秋夕焼                 原 道代

玲奈、勢津子

秋の旅「古寺巡礼」を携へて                 長岡 ふみ

古寺の姿と数は奈良時代に始まり、歴史と風貌を人びとに伝え続ける。西暦2000年の今も、これからも。(茂喜)

広島忌罅割れてゐる白き空                  岡部 博行

玲子

豚に訊く黑き宝石茸採り                   早川 恵美子

世界三大珍味の一つは豚の鼻頼り。グルメを標榜する方は豚に感謝せねば。(肇)

舌で読む点字の尖り夜の秋                  九紋

手が使えないためか舌で点字を読む。その逞さが心を打つ。舌先の鋭敏な感覚が夏のうちに秋を感じ取る鋭敏な感性と響き合う。(博行)

点字の尖りに実感がある。(桂一)

点字の尖りを頼りに何を読んでおられるのでしょうか。その懸命さに心打たれます。(哲雄)

志昴女、尚、日記

向日葵にクリムトの金ゴッホの黄               佐藤 博子

情景が鮮やかです。(博美)

向日葵の油絵にクリムトとゴッホの色使いが金と黄色。(芳彦)

ひまわりの表し方で分かるのはさすが(みつ子)

季語の斡旋が上手です(早・恵美子)

正明

焦げ癖のつきし鉄鍋秋深む                  山本 純夫

年季の入った鉄鍋ですね。日々丹精込めて調理されている様子が感じられます。(相・恵美子)

よく使い込んだ鉄鍋と深まる秋の取り合わせが絶妙です。(三・恭子)

畔の泥払い落として村歌舞伎                 鹿志村 余慶

地元の観客には、皆知ったる面々の役者たちですね。(春野)

田仕事から急いで村歌舞伎に駆けつける様子が手に取る様です。(哲雄)

匠子、玲奈

それぞれに丸く収まる盆の月                 森野 美穂

御父様お母様も天上で安心していらっしゃるでしょう(早・恵美子)

草に寝て真上に開く花火かな                 土屋 香誉子

天上に展開する花火を満喫しようとする姿が見える。(光男)

澄江

歳時記に付箋ペタペタ草の花                 冨士原 博美

付箋ペタペタが良いといただきました。  余慶

体型も声も母似や衣被                    熊谷 幸子

親芋の周りに出来た子芋を皮付のまま茹でて食べる衣被。その美味しさに親子の血の繋がりの深さを改めて感じる作者。(博行)

何となくほっこりします。(博美)

女性は特に。家内も、娘、姉も然り!「衣被」に詩情を感じます(憲史)

三枝子

太郎冠者の台詞を割ってはたたがみ              斎川 玲奈

匠子

羊と山羊見分けのつかぬ残暑かな               佐藤 律子

玲子、正明

けふは夜の巷湖上を揚花火                  伊藤 正規

博嗣

立ち上がるたびに「よいしよ」と秋暑し            金子 肇

他人ごとに非ず実感です。温子

私も言います(みつ子)

えんぴつに木の香木の声秋の暮                中田 秀平

中七の措辞に惹かれました。(光男)

鉛筆の木の香や木の声を感受するとは感服しました。秋の暮と言う季語との共鳴度が高いと思いました。(順一)

えんぴつは使わなくなって久しいので木の香木の声が懐かしい。(桂一)

陽子、はま子

ひぐらしや一合炊きの炊飯器                 金山 哲雄

キャンプ場での夕げ時に近くの雑木林から、、、雰囲気がありますね。郁文

純夫、三枝子、紀美子

十団子に十の願ひや地蔵盆                  染葉 三枝子

伊葉、道代

スマホ閉づ少年の眼夏の果                  石川 由紀子

解放された夏も終わりスマホとともに暮らす少年の決意のようなものを感じます(律子)

自販機のごとんとひとつ夏終る                中村 光男

「自販機」の孤独さと「ごとんと」「一つ」「夏終わる」 秋です。美惠

なにげない日常に感じる季節の終わり 敏晴 夏の終焉は多分こんな音がするのでしょう。郁文

史子、真弓

水平線見えぬ瀬戸内蟬時雨                  上脇 立哉

伊葉

ひと雨を幕間にして赤蜻蛉                  山本 純夫

景が綺麗ですね  (幸子)

夕立の後何処にいたのか赤とんぼの集団が舞います。美惠

雨が上がって赤蜻蛉が飛び交う空が浮かびます(美穂)

赤蜻蛉の大舞台ですね(早・恵美子)

「赤蜻蛉」を引き合いに出して晩夏から初秋への移ろい。「幕間」が言い得ています (憲史)

匠子、寿恵

手から手へ木の実や愛を渡すごと               熊谷 佳久子

愛というと句が甘くなり易いが、木の実がそれをしっかりと受け止めて、実感のある言葉になった。(桂一)

生命の再生を抱く木の実。小さくかわいらしい。「愛を渡すごと」の表現がすばらしい。(ユリ子)

はま子

以上

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