天為ネット句会報2026年10月
※特選句、入選句内の順番は互選点、句稿番号の順。
また互選句は句稿番号順に並べております。
赤蜻蛉風の隙間を擦り抜けて 牧野 桂一
風に乗るの常套句ではなく、隙間を抜けるとは巧みな発見。(法弘)
赤蜻蛉は風とともに詠まれることが多いが、「風を擦り抜ける」というのは新しい発見だ。(博行)
風を擦り抜けるという、表現に惹かれました(博子)
秋彼岸空き家に風を通しけり 野口 日記
人の生活のない家は急速に廃れていく。秋のお彼岸の墓参り帰省のついでに、誰も住まなくなった生家に風を通す。(法弘)
澄江、香誉子
北を発つじゃがいも列車天高し 相沢 恵美子
北見あたりから出発するジャガイモ満載の貨車。農業大国北海道の光景。(法弘)
十勝の美味しいじゃがいもが届きます。(正規)
じゃがいも列車というのは本当にあるのでしょうか。北海道発ならあるのでしょう。なにかほんのりとした気持ちになります。(光男)
良くできたじゃがいもを満載して北海道から全国に出荷する「じゃがいも列車」。天高しがいいですね。(哲雄)
尚
日時計のチェロの形や賢治の忌 荒木 那智子
宮沢賢治の忌日は9月21日。チェロの形の日時計が賢治ゆかりの岩手大学農学部のポランの広場に設置されている。(法弘)
上五中七がシュール、日差しの関係でのパレイドリアか。日時計花壇に今も賢治のたましいが宿っているようだ。秀平
志昴女
見得を切る目のきよろきよろと里神楽 斎川 玲奈
この晴れ姿を見てほしい人が客席にいるはずなのだが、どこだろうかと探している図かな。(法弘)
素人ぽさが良いですね (幸子)
舞殿に楽屋一畳小鳥来る 芥 ゆかり
舞殿の狭い楽屋から外をのぞくと、小さな渡り鳥がもうやってきている。(法弘)
春野
穴惑ひ遺跡はピラネージめきて 内村 恭子
ピラネージの『ローマの景観』は本物のローマよりもローマっぽい。(法弘)
ピラネージめく遺跡とは石の牢獄のイメージだろうか。蛇の彷徨う穴惑ひという季語がとても上手いと思った。(ゆかり)
複雑なピラネージのローマ景観エッチング 蛇ばかりか人も眩惑されそうです(久丹子)
太刀魚のバケツに丸く大洗 髙橋 紀美子
茨城県大洗漁港は太刀魚釣りのメッカ。真っすぐの太刀魚がバケツに丸まっているという写生にちょっぴり滑稽味。(法弘)
バケツに入れられ、売られる「太刀魚」、哀愁のある句。(孝雄)
白山の地酒二十種秋澄めリ 須田 真弓
霊峰白山の水で醸したお酒が旨くないわけがない。お猪口一杯ずつでも20種類も飲めば、かなり酔っぱらうだろう。(法弘)
「の」のところ「に」のほうが好きです。立哉
読み取れぬ文字で埋まる碑草紅葉 児島 春野
碑を建てた当初の熱い思いは、時とともに薄れ、文字もかすれていく。(法弘)
志昴女
熱砂より吹き来る風や葡萄干す 中川 雅司
中央アジアのどこかの町。何千年も前からの人の営みが今も繰り返されている。(法弘)
尚
秋空へ放るカラーガードの旗 土屋 香誉子
警察のイベントには付き物のカラーガード隊。旗を振る婦警が美しく逞しい。(法弘)
行き交へる無言のスマホ秋冷ゆる 岡部 博行
デルボーの視線の交わらない景を今日風にするとこのようになるでしょうか 気持ちの冷えもつのります(久丹子)
青猫、香誉子
秋のこゑ打ち止め寺の納杖 合田 憲史
札打ちを終えたシンとした空気が感じられます(美穂)
夏江、那智子
すすき穂の天をくすぐり雲散らせ 熊谷 幸子
天をくすぐりの表現の面白い。(芳彦)
藤の実の椅子に届かぬ妬心かな 石川 順一
カップルのベンチには藤の実では届かないが投げてみる、いじらしくユーモラス。ふみ
ひと匙の粥の温もり秋灯 鳩 泰一
病気からの回復期か。粥の優しい口当たりと秋灯の柔らかな光とが重なり、秋灯という季語の新局面が開かれる。(博行)
粥のぬくもりが秋灯と寒露に定まり良い句となっている 余慶
お粥の美味しい季節になりました。 (幸子)
澄江
絶滅も進化の一部後の月 福田 誠治
勢津子
自分史に取り掛かる日や鰯雲 鳩 泰一
史子、内・恭子
古戦場不意に毬栗落つる音 榑林 匠子
寂寂とした古戦場 逝きし戦士たちを想っているときに毬栗が落ちてきて、ガサッとという音は戦士が倒れこんできたのではないかと飛び上がります。(美惠)
蛇穴に入るや眼下に東大寺 今井 温子
蛇が冬眠の位置についた。そこからの景の広がりや東大寺の着地が読んでいて落ち着く。(ゆかり)
蛇穴に入るの当為性が若草山から眺望の東大寺さんを詠み情念が湧いてくる句 余慶
「眼下に東大寺」でスケールの大きい奈良ではの句に詠まれています。(相・恵美子)
生あるを恥ぢてはならぬ敗戦忌 宮川 陽子
由紀子
飴玉を噛み砕きたる残暑かな 木村 史子
暑さを吹っ切るように思わず口の中の飴玉を噛んだ。「噛み砕きたる」がいいですね。(哲雄)
鬼灯を持ちて童女に戻る母 森野 美穂
戦前に小学生位の女の子でいらしたのでしょうか、表情もかわいいお母さまを思います。(春野)
すっきりと表現。絵のような俳句。(ユリ子)
日記
長き夜の揺らぐ一灯ワヤン・クリッ 小栗 百り子
流れるような上五、中七に続き、ワヤン・クリッと言い切った後の余韻が印象的です。(三・恭子)
雅司
つづれさせ分厚く残る介護の記 石川 由紀子
こほろぎに長い間ご苦労さんといたわられている様子が伝わりました。(佳久子)
秋の夜、分厚くなった介護の記録を紐解いている。もう亡くなられた方なのでしょうか。しみじみとしか雰囲気が伝わってくる。つづれさせという季語の斡旋がいい。(光男)
永い闘病生活の介添えお疲れさまでした。(美惠)
「分厚く残る」に介護期間の長さ、大変さが凝縮されている。(哲雄)
こおろぎのしみじみとした音色と長かった介護の日々 その日々を綴ったノート 季語のかかりが効いています(久丹子)
介護日誌は 思いやりと優しさの記、,お幸せな方ですね 。 (温子)
尚、立哉、三枝子、 順一
手放せり紫苑の花咲く妣の家 染葉 三枝子
実家仕舞いでしょうか?実家の庭に咲く野の花を思い出します(智子)
純夫、道代
柿右衛門余白の色も素秋かな 小高 久丹子
柿右衛門の美しい世界を見事、一句にされました。はま子
華やかな柿右衛門の「余白の色」にフォーカスした所が良いですね。季語もぴったりです。(三・恭子)
季語と中七の響きあいに詩心を感じます。 (温子)
季語の斡旋が上手です(早・恵美子)
朋子、楓、寿恵
この町で私も育ち青蜜柑 永井 玲子
瀬戸内の島を思い出します。誠治
離れてみて故郷の山々を思い出します。”青蜜柑”が効いています(智子)
天の川渡る朝鮮通信使 佐藤 博子
朝鮮から日本へ派遣された使節団、江戸時代は良かったですね!(博美)
真夜中の海上は星空が映り、まるで銀河系の中に浮かんでいるように思われる。美しい朝鮮通信使の何艘もの船。浪漫のある句。はま子
九紋
打ち寄する波の音色も涼新た 嶋田 夏江
夏の海とは違う初秋の海の波音。その微妙な変化に秋の訪れを感じ取る感性が素晴らしい。(博行)
秋彼岸漱石居跡守る猫 岡田 寿恵
漱石の「吾輩は猫である」ですね!(博美)
夏江、道代
曼珠沙華中途半端のなかりけり 小栗 百り子
勢津子
錦絵の鯰の舟や雁渡し 佐藤 律子
由紀子、博嗣
伝言板残す駅には虫時雨 郁文
スマホの普及で使われなくなった伝言板。この駅を管理する人に何か拘りあって残しているのか、大事に守られている(智子)
順一
猪撃ちは三代目なりまだ撃たず 明隅 礼子
下五の「まだ撃たず」がいいですね。(光男)
「まだ撃たず」が良かったです。秀平
三代目へ 撃たないに越したことは有りません(玲子)
三枝子、純夫、匠子
穴惑ひ夕べの勤め始まりぬ 合田 憲史
なんともやるせない気持ちに共感します。誠治
朋子
夕焼を曳きつつ舟の戻りかな 熊谷 幸子
戻ってくる舟が曵いてきたように見える夕焼け、さぞかし美しかったことでしょう(律子)
”曳きつつ”で景が大きく夕焼色が鮮明に映ります(憲史)
日記、那智子
息潜め何ぞ企むいぼむしり 冨士原 博美
鎌を閉じじっと見つめる蟷螂にはまさにそんな感じがします。(肇)
地平線現れ出たる月赤し 青猫
大陸ならではの景見事です (幸子)
地平線に上る赤い月、「なかにしれい」の自伝の満州を連想します。(博子)
奥伊賀の強き粘りの蜘蛛の糸 九紋
忍者がひょいと出てきそうで面白いです(玲子)
立哉、秀平、青猫、真弓、手鞠
霧深し昼を灯して宇治十帖 森山 ユリ子
霧の深まりに白日の霧中に灯る宇治十帖ゆかりの地の世界に寂静の境地を感じさせる佳い句 余慶
楓
新蕎麦や星を薬味に飛騨境 早川 恵美子
蕎麦の星を薬味にの表現に飛騨境と修めたところ素晴らしい。(芳彦)
星を薬味の新蕎麦!敏晴
”星を薬味に”で、蕎麦の美味しい山深い飛騨を想像させます(憲史)
楓
遊覧船のバック着岸天高し 須田 真弓
船が後ろ向きで迫って来るようなバック着岸に季語が効いています。(相・恵美子)
柿吊す納屋の軒下猫と婆 合田 智子
お婆さんと猫とが安らぐ軒下の「吊し柿」、心が和らぐ句。(孝雄)
この景の中に私も入っていきたいです。(肇)
被爆マリアの目のがらんどう鳥帰る 斎川 玲奈
長崎の浦上天主堂。私もその前に立って、長い間動けなかったことを思い出しました。(佳久子)
九紋、真弓
代替はりして棚経の声高し 土屋 香誉子
若いお坊さんに代替わりして一番に感じることかもしれません。澄んだ空気の中より高く聴こえます(律子)
和尚様も世代交代、お経の声が朗々と若々しく。ふみ
耳慣れた節回しでなく今年は読経の声が高い。菩提寺も檀家も代替わりしていく。(ゆかり)
史子、志昴女、匠子
奥出雲に火を噴くたたら二日月 冨士原 博美
百り子
焼き柿の胸の落ち着き八十路なり 齋藤 みつ子
焼き柿という食べ方を始めて知りました。敏晴
博嗣
秋霖の止みて秩父につなぎの龍 三浦 恭子
雨を司る龍、秋霖と響き合います(美穂)
手鞠
紅葉界隈いまの言葉で言ふならば 内村 恭子
紅葉を楽しむ人であったり場所であったり。いまを上手く俳句に取り込んだ面白さがあります(律子)
曼珠沙華夜を真つ赤に風運ぶ 牧野 桂一
曼殊沙華の赤く群れ咲く景。「夜」でさらに浮き立つ。(ユリ子)
稲刈の後からつづく鷺の列 嶋田 夏江
一幅の絵のよう。ダイサギであれば、しばし見惚れます。(博子)
内・恭子
神輿渡御賽銭箱も連れてゆく 芥 ゆかり
な~るほど!知らなかったです(早・恵美子)
賽銭箱も連れて行く と言ったところにユーモアあり 真弓
純夫、匠子、内・恭子
無花果の乾きて甘しイズミール 中川 雅司
青猫
蒙古馬駆ける草原天高し 鈴木 楓
済州島の牧場でしょうか。行った事があるので景が思い出されました。ふみ
雄大な風景が目に浮かびます(夏江)
那智子、陽子、澄江
一遍の鶉ころもや律の風 西脇 はま子
上人が信州佐久で、踊り念仏を始められた景が見えました。(正規)
九紋、博嗣、由紀子
大内宿啜る新蕎麦葱の箸 合田 智子
私も大内宿で新蕎麦を。立派な葱の箸がついて、葱では食べづらかったことを思いだして。(佳久子)
秋彼岸母を慕ひて父しのぶ 山根 真五
「慕ひて」と「しのぶ」の修辞の深さ。(孝雄)
道代、勢津子
いとど跳ぶ休み休みの通り土間 阿部 朋子
雅司
若き日の夫の黒帯秋気澄む 熊谷 佳久子
秋気澄むの季語を持ってこられてますます清々しいです(玲子)
若き日の黒帯の凛々しいご主人さまの姿。柔道でしょうか空手でしょうか。澄んだ秋空のような回想。はま子
日記
木の間縫ふ階に団栗古書祭り 町田 博嗣
寿恵
待つ宵のけぶり吐きたる登り窯 日根 美惠
登り窯を一緒に焼かせてもらった懐かしい思い出です。(博美)
見得を切る役者のまなこ秋の空 齋藤 みつ子
見得を切って見上げた役者の眼に秋空の爽やかさともの寂しさの両方が映っているように感じます。(相・恵美子)
胡弓の音響く路地奥風の盆 鈴木 楓
9月になると、飛騨を仰いで、町あげて、夜をつないで、胡弓のはやしに合わせ、踊り歌い、豊作を祈る。(茂喜)
陽子
夕影や妻と一献新走 垣内 孝雄
三枝子
ひと雨の幕間ぱあつと赤蜻蛉 山本 純夫
雨上がり雲間から湧きだした光と赤蜻蛉。表現が面白いです。(百り子)
秋立つや「古寺巡礼」を旅かばん 長岡 ふみ
古寺巡礼のガイドブックに爽やかな足取りを感じました。 (温子)
被写体は陽を振り払ふ尾花かな 中川 手鞠
カメラを覗かれ、「はっ」とした瞬間。(正規)
中七が良いです。(肇)
「陽を振り払ふ」の表現、好きです。(ユリ子)
闇の色沈め無月の盃を干す 岡部 博行
闇の色沈め無月の盃を干すと粋であります。(芳彦)
寿恵、手鞠
AIに倫理観とや小鳥来る 金山 哲雄
AIの暴走を引き留める議論が盛んに行われています。核戦力の拡散防止の運用以上に、ロジックの学習制御は困難を極めるでしょうねぇ。誠治
楡高く秋の夕霧荘を閉づ 森山 ユリ子
百り子
古書店の棚のサフラン旧市街 中島 敏晴
古い本の中、息づくサフランが見えるようです(美穂)
陽子
こぼれ萩駒下駄に受け大伽藍 早川 恵美子
史子
月今宵ひさしく母の団子なし 山根 真五
いつまでも、何か大切なものが足りないという思い。敏晴
鬢付けの匂ひの街や秋夕焼 中村 光男
相撲取りの多い両国でしょうか、それとも舞妓芸妓の多い京都の色町???(春野)
舞妓さんの姿が目に浮かびます(早・恵美子)
雅司、香誉子
屋久杉の梢越しなる月見かな 中村 光男
朋子
いくたびか振りかへる癖盆の月 木村 史子
お盆の夜空に昇るひときわ明るく丸い月 何度も見上げてしまいます。逝ってしまった母の癖は別れはいつも振り返り振り返り(美惠)
密やかな流転願望銀河濃し 井上 澄江
胸の中の願望から銀河へと大きな広がり。「星は何でも知っている」(三・恭子)
まざまざとその生き様を葛の花 明隅 礼子
順一
露しとどハンドルネームは祖母の名に 岡﨑 志昴女
露にびっしょり濡れた庭を見る。去年のこの日は祖母と世間話に明け暮れた。いまネットの名は祖母の名を使う。(茂喜)
秋天や赴くところ富士は晴れ 鹿志村 余慶
秋の陽を浴び毎年通うところ、青空に浮き出る我が国の遺産、富士の山。家族をつなぐ大きな力。(茂喜)
”富士山”と表現していないところで、日本各地にある所謂”〇〇富士”を想像しました。季節の良いこの時季に”〇〇富士”巡りをされているのか(憲史)
以上
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